槍ヶ岳・北鎌尾根

槍ヶ岳北鎌尾根、無名山塾に入った理由の一つ。
北鎌といえば、「孤高の人」加藤文太郎や「友を捨てるにしのびず」と書き残した松濤明。今回は無雪期ですが心情は一緒です。
計画では9/18下山予定でしたが、コンディションがよく、一日早く下山できました。

【結論】(無雪期北鎌踏破に必要なもの、北鎌コルまでを前鎌と称す)
1.体力
沢登り、高巻き、急登、ルートファインドのための偵察、クライミング、水場がない等々、てんこ盛りなので。
2.ルートファインディング
前鎌は踏み跡が薄いし、あっても間違っている。ルートをミスるとグレードが上がる。
3.グッズ
・沢靴:水俣川を15回以上渡渉するので。
・チェーンスパイク:前鎌には悪い草付きが多い。
・バイル:同上。我々は軽量化のため、ミゾーハンマーを代用した。
4.幸運
・水俣川の水量が股下くらいまでであったこと。躊躇なく渡渉できて時短になった。
・曇り気味であったこと。我々は各自に水5Lで何とか足りた。これがピーカンだったらやばかった。
・パートナーが強力であったこと。体力的に超人で、さらに精神的に仏のように安定していたので。

【詳細】
1.水俣川から千天出合
沢の地形に沿って、渡渉しまくる。15回渡渉した。軽量化のため、自分は沢足袋(後で履き替え)、駿谷さんはラバーソールの沢靴で最後まで通した。
今回、水量が基本的にひざ下、深いところで股下だったのは幸運だった。最初のつり橋も使わないで川の中を歩いて行った。
水俣川遡行無造作に水流の中を遡行できるので時短になった。有名な古いFIXが張ってあるへつりも使わなかったし、難しいところはなかった。2年前はここで敗退していたのに。
有名なへつり

2.千天出合からP2
出合はゴルジュなので高巻いた。ピンクテープが要所にあり、わかりやすい。しかし、高巻き自体は悪く、滑りやすい草付きのトラバースが多く、気が抜けない。
ゴルジュの高巻き3回高巻いてP2取付きに出られる。取付きにはケルンとつり橋の残骸の錆びたワイヤーがあり、すぐ同定できる。計画ではここでテント泊だが、水俣川の遡行が順調で時刻も13時だったため、P2まで進むことにした。
P2取付き自分は沢靴をアプローチシューズに替えて、チェーンスパイクをつけた。
P2取付きから尾根方向に踏み跡がついている。尾根ではさらに明瞭な踏み跡。ただし、倒木で遮られて迂回する箇所が多かった。高度を上げると踏み跡は徐々に
傾斜を増し、木の根にぶら下がりながらよじ登っていく。ここは水平距離700mで垂直距離500m、平均斜度35度強の急登だ。
P2急登P2の肩に2テンがギリギリ張れる個所を発見した。しかし、木の根が邪魔だ。地形図ではP2ピークが横長で広そうなので偵察を試みた。P3とのコルまで偵察したが藪が深く断念。P2の肩まで戻り、幕営した。食事はお湯をかけて食べられるものとし、駿谷さんは尾西のごはんに親子丼の素、田中はスープ春雨。駿谷さんから春雨にカロリーがないことをさんざん揶揄(からか)われた。食事後、駿谷さんは5秒で寝ていた。素晴らしい才能。
P2テン場

3.P2から北鎌コル
夜間は雨模様だったので藪は濡れている。上下レインウェアでスタートした。P2とP3のコルは藪漕ぎで進む。そのうち、P2と同様の急登になり、木登りが始まる。
P3藪漕ぎ樹林帯を抜けるとP3到着。
P3ピークP3からはザレた岩場の上り下りが続き、なんとブルーベリーの群生の中を抜ける。
P4急登水節約とビタミン補給のため、ブルーベリーをむさぼり、かつ、ビニール袋に収穫した。
P3ブルーベリーその後、収穫を続けてビタミンも心も豊かになり、P4到着。
P4ピークP5はP4から体感100m(実際50m)下って登り返したところにハイマツがのった岩峰がそびえる。直前に下降路があるので、また50mくらい下降し登り返すとP5とP6のコルに詰めあげられる。ここが悪い草付きでチェーンスパイクとバイルが大活躍する。ネットでは「微かな草をつかんで滑り落ちないように慎重に登る」とあるが、装備を固めれば、ガシガシ進める。ゼイゼイとなったことは否めない。
P5P6コルへの悪い登りコルからP6への登りは悪いガレ場で、さらに千上沢側に切れ落ちている。コルに古いハーケンが上下に2枚打ってあるのでビレイポイントに使用。途中の儚い立木で確保してピッチを切り、2ピッチでP6に突き上げた。
P6への登りP6から尾根を伝って下降したり巻き込んだり弱点をたどったりしていくと、あっさりと広めのテント場に出た。慰霊碑もあった。P6とP7のコルと考えて先を急ぐと地図と地形が合わなくなり、GPSで確認したところ、先程のP6とP7のコルと思ったところが「北鎌コル」であり、P7だと思っていた目の前の岩峰がP8であることが分かった。P7は知らずに通過していた。ちなみに北鎌コルのすぐ上のバンドには紙が散乱していて見苦しかった。紙は持ち帰ろう。
北鎌コル

4.北鎌コルからP10
P8までは250mの急登。1か所フィックスロープがある。
P8手前FIXルートは明瞭なので体力勝負だ。我々は勢いあまってP8を通過し、気が付いたらP9(天狗の踊り場)だった。
P9天狗の踊り場P9はピークに4テンを2張り、下部に1張りできるところが目印。目の前に独標(P10)がそびえる。
P10独標今日の目標はP9であったが、まだ午前中なので先に進む。基本は尾根通しであるが、乗り越えられないときは右(千丈沢)左(天丈沢)どちらにも踏み跡がついている。右巻きが多いと聞くが両方偵察してルートを選んでいく。P10へはフィックスロープが張ってある悪いへつりを2回右に巻いて20mくらいのⅡ級の岩場を越えるとルートが見えてきて、P10の肩に詰めあげられる。
P10手前のへつり

5.P10から北鎌平
P10からは岩尾根、やせ尾根のトレースだ。今日は槍の穂はガスの中だが、北鎌平はよく見える。今日のゴールだ。
P10から岩尾根この辺から高山症状か喉が渇くし、腹が鳴ってしょうがない。スープ春雨のカロリーではパフォーマンスが維持できないのか。
P13までは明確なピークナンバーはわからなかった。コルにどのルートから下るか、ピークへどのルートから登るか。登ったり下ったりしているとP13についた。
時刻は14時、少しまったり休んでよもやま話に興じた。2テンなら張れるスペースがあり、ここで宿泊しようか悩んだ。電波が入ったのでYahoo!天気で雨雲レーダーを確認すると「16時から雨」との予報。でも、何故かノリノリになっていて北鎌平まで進むことにした。後で後悔した。
P14へP14までは岩尾根通しでルートが明白だが、P15がそびえていて行く手を阻んだ。「巻いてしまえ」とのご神託でP15はすべて千丈沢側を巻き巻きした。踏み跡は遠目には「絶対無理。千丈沢に滑落する!」という感じであったが、近づくと意外にしっかりしていて問題なかった。長かったが。踏み跡を延々たどって踏み跡が尽きるところから上昇した。岩雪崩が起きそうなガレ場を避けてハイマツや岩のリッジ沿いに100m上昇して北鎌平に詰めあげて力尽きた。
北鎌平へ速攻でテントを張り、飛び込んだところで雨が降ってきた。ギリギリセーフ。
駿谷さんは尾西のごはん、自分はスープ春雨を食して睡眠した。

6.北鎌平から槍の穂
もう後200mくらいでおしまいと思うと嬉しい。
槍の穂へ槍の穂へは巨岩帯をすり抜けていってチムニーからアプローチした。
チムニー下のチムニーから3ピッチで槍の穂についた。
槍の穂ガイドさんが「北鎌尾根から来た」と皆さんに説明してくれている。もっと詳しく説明してもらいたい。せっかくなので写真撮影の列に並んだ。
やったね槍の穂は満員で肩の小屋まで行列が続いていた。

7.帰り道
横尾でジュース、徳澤でソフトクリームを食べたことしか覚えていない。

<所感>
○駿谷
北鎌尾根は体力さえあれば大丈夫、といった類の情報がネット上では散見されるが、これはミスリードする表現だと思う。
落ちたら一巻の終わりとしか思えないリッジ上で、脆い岩場と悪いザレ/ガレが連続しており、これらに対して或る程度の耐性がないと普通に泣きだすレベル。気力体力がともに充実していなければけっして来てはいけない場所だと感じた。
実際に我々の登攀中に一人、下山したころに一人が同ルートで滑落していたようだ。もしかすると2021年のこのエリアの地震の影響がまだ残っているのだろうか。
とにかく無事に帰ってこれてよかった。
なお、朝は300kcal程度のどん兵衛、夜は0kcalの春雨で2日半をしのいだ田中さん、下山後は体重が4kg減っていたらしく、この脂肪燃焼力にはたまげました(私は1kg減)。

<データ>

■9/14(木)

信濃大町 18:00
竹のや旅館 18:10 4,800円(素泊まり)
焼鳥とりしん 18:30 焼き鳥が最高

■9/15(金)

信濃大町駅バス 5:15 1,500円、2023年8月から七倉山荘までアルピコバスが開通【祝】
七倉山荘タクシー 6:00 2,400円(4名乗り合わせで600円/人)
高瀬ダム 6:30 なんと高瀬ダムまで2,100円! いままでは信濃大町からタクシーで16,000円かかったのに!
出発 6:45
湯俣山荘 9:00 湯俣山荘は建設中だった。伊藤新道に行く人たちが10名くらい準備していた(人気)。我々は水俣川を渡渉して青嵐荘で情報収集。
出発 9:45
千天出合 11:50
P2取付き 13:00 4テン2張り規模のスペースあり
P2 15:00

■9/16(土)

GPSの高度 地図上の高度
P2 4:50 2,123m 2,150m 我々はP2の肩でテン泊、2テン規模のスペースしかない。
P3 6:00 2,310m 2,337m ルート上に2テン1張り。ピークはルートから離れていた。
P4 6:40 2,480m 4テン2張り、2テン1張りのスペースあり
P5 7:50 2,468m 巻いた
P6 8:50 2,529m 2,540m
P7 9:15 2,516m
北鎌コル 9:27 2,477m 4テン1張りくらい
P8 10:50 2,724m 途中に2テン1張り
P9 11:20 2,744m 2,749m ピークに4テン2張り、下部に4テン1張り
P10(独標) 12:57 2,894m 2,899m 手前に4テン1張りスペースが3か所
P11 13:16 2,887m
P12 13:43 2,873m 2,880m
P13 14:24 2,870m 2,873m 2テン1張り、以降ところどころに2テンスペースあり
P14 15:20 2,881m
P15 2,980m 巻いた
北鎌平 16:17 2,960m 4テン4張りくらい行けるのではないだろうか

■9/17(日)

北鎌平 5:20 2,960m
槍ヶ岳 6:30 3,180m
槍ヶ岳山荘 7:40
出発 8:00
小梨平 14:30 日帰り入浴(14:00-16:00、800円)を目指してひた走った。

 

 

笛吹川水系・ナメラ沢

「残暑避け まだまだ続くよ ナメラ沢」

雁坂トンネル料金所横の駐車場に9:00集合。宇井さんが久しぶりの参加ということで、本科生の我々は自己紹介をした。9:15出発、沓切橋までは車道歩き。「雁坂峠」の歴史を感じる看板。秩父往還と呼ばれるこの道は日本最古の峠道として、江戸時代から大正まで秩父王滝村の繭を塩山の繭取引所まで運ぶ交易の道として使われてきたきたそうだ(下山時に通過した雁坂峠の看板より)。

今回のナメラ沢は笛吹川水系。甲武信ヶ岳の東に位置する破風山(はふさん 2,318m)へと突き上げる沢だ。一般的には前夜泊の日帰りとする場合が多く、また「天国のナメ、地獄の詰め」と紹介する本もあるようだ。今回は敢えて沢泊とし、ツェルトなどを活用した不整地でのビバーク訓練も兼ねている。さて、登山道に入ってから少し尾根を越えると、明瞭な「ナメラ沢」の看板。沢沿いに下りていき、装備を整える。

10:35入渓。陽射しもあるし、明るいナメの様子に心が躍る。

程なくして、今回の遡行で唯一の滝らしい滝、2段5m滝。水流も多く、右側から高巻いた。

その後は幅広い一枚岩の緩やかなナメが続く。この場面は40mナメだろうか。それぞれ水流沿いだったり草付沿いだったりを登っていく。多少の傾斜があっても、小さなくぼみにしっかり重心を乗せればフリクションが効くのはおもしろい。

13時過ぎ、1,680mの二俣を通過。左俣に進んで程なく、これは「10mボコボコ滝」だろうか。階段状になっており、難なく通過。2日目も含めて一度もロープを出すことはなかった。

少しルンゼ状になってきた。水流も少ない。そろそろ今晩の寝床を探そうかということで周囲を見渡しながら進行。地形図を見ると、1,800m手前の右手(左岸)の尾根が少しなだらかになっている。脚力のある男性陣3名、八重樫さん・中村さん・青栁さんが偵察に行ってくれて、トランシーバで状況共有。広くて良さそうだということで、14時前に沢から離れて尾根に上がった。

それぞれ平らなところを見つけ、ツェルトやタープの設営。笹が多く、思ったよりもフカフカな寝床をつくることができた。15時前、山塾テント村が完成。

青栁さんのタープの周りに集まり、石を組んで焚き火をすることができた。日が暮れるまで時間が長く、やかんを紐と木の枝でつるすなど、あれこれ工夫して楽しむことができた。一昨日がスーパームーンだったので、日が暮れても空は明るい。消灯したのち、21時過ぎから少し雨が降った。

翌朝は5:30集合。急斜面を下りて再び入渓。遡行図通り、1.900m付近から涸れ沢になってきた。左(右岸)の尾根に乗ることも考えられたが、藪が濃い可能性もあり、そのまま沢沿いを詰めていく。次第に傾斜が強く岩が大きくなり、よじ登っていくが結構ガレている。涸れた小滝を高巻きする際などに二度ほど大きめの落石もあり、フォールラインに入らないようお互い気をつけて進行した。途中大きく開けたのち、再び谷幅が狭くなる。最後は分厚い苔に包まれた岩と木の根の間を縫うようにしてよじ登っていく。かなりの急登だ。2,300m付近の稜線まで一直線に詰める。

もう少し、あと一踏ん張り、と声を掛け合いながら、段々と空が見えてくる。ついに、別の登山者の姿が見えた!やっと稜線に出た!嬉しくてたまらない。その登山者は甲武信から来たようが、藪の中から次々と人が出てくるのを見てたまげたようだ。

稜線を少し左(西)に進むと、南側に景色が開けた。ガスがサーッと晴れて、一時だけ富士山まで望むことができた!

時間は8時手前。装備を解除し大休止。

下山は雁坂峠の方向へ。まずは東破風山(2,260m)。その後2,289mの雁坂嶺。道標が二つあって何でだろうと思ったら、片方は埼玉県でもう一方は山梨県だった。そうか、県境だ!

低い笹の稜線歩きが心地よい。ところで、ここらの木が皆枯れているのは何故だろう。風が強いのだろうか。10時過ぎに雁坂峠を通過し、沢筋をめがけて下山開始。

落ち葉が多い。綺麗に姿を隠したカエルを発見。
少し傾斜のある細い沢筋を渡るところが二箇所ほどあり。一箇所は怪しいトラロープがかかっていて、その後大きな木の根を掴んでよじ登った。

11:50に沓切橋を通過。そこからはまた車道歩きだ。空はまだまだ真夏。陽射しがジリジリと暑い。
12:20、駐車場に帰着して終了。詰めはハードだったが、尾根に逃げることなくナメラ沢を遡行しきったのは達成感が大きい。
下山後は近隣のはやぶさ温泉にて汗を流した。

<行程>
9/2 雁坂トンネル料金所駐車場9:15~沓切沢橋9:55~入渓10:35~二俣(1,680m)13:10~幕営地(尾根上1,790m)13:50
9/3 再入渓5:40~稜線7:45~東破風山8:30~雁坂嶺9:30~雁坂峠10:10~沓切沢橋11:50~雁坂トンネル料金所駐車場12:20

<所感>
○田中
今回は不整地でのビバークがテーマの沢山行でした。各自ツエルトやタープでテーマ通りのビバークが出来たと思います。自分はなかなか快適で爆睡しました。懐かしの宇井さんと久しぶりに山行出来たのが嬉しかったです。
○宇井
転勤、介護、出産を経て山塾へ戻ってきました。沢登りは9年ぶりでしょうか。感慨深いです。初めて沢で泊まりましたが、シュラフカバーだけでは明け方に足先が寒くなりあまり眠れませんでした。これも経験ですね。全体的に優しいナメ滝で癒されました。不安定な岩だらけの詰めが一番面白かったです。
○秋永
ナメに対してフェルトソールが吸い付くような感覚があると、フリクションが効くようだ。ツェルトは、木の根や枝にスリングやガイラインを活用して綺麗に張れて満足。朝方は冷え込み、レインウェア上下とペラペラのライトダウンを着込むのみで我慢していたら変な夢を見てしまった。来年は釜ノ沢などに挑戦したい。
○鹿内
終わってみれば水が涸れてから詰め上がるまでがやや登攀要素があり楽しかった。やはり自分は岩登りが好きなようだ。ナメ滝は綺麗だった。
○八重樫
ナメラ沢は登攀要素もほぼなく、綺麗で開けているナメが続いて、癒される沢でした。詰めは大変でしたが…。また、初めてのツェルト泊で良い経験ができました。
○中村
きれいなナメ滝が多く、良渓であった。上流では倒木や堆積物も多く、沢の斜面に足を踏み入れたところ、足元に堆積した砂と岩が崩れて落石を惹き起こしてしまった。人が踏み入れていない箇所を遡行する場合、落石の危険も考慮した上で注意すべきであることを実感した。
○青栁
その名にもあるように、いくつものナメ滝を登る楽しい山行でした。ただ尾根に出る最上部は大きな岩も浮いていて気を抜けない難しさもありました。夜の焚き火とタープ泊は大変楽しかったですね。

奥穂高岳~岳沢縦走(夏山合宿グループB)

5月の机上講習から企画を進めてきた夏合宿。山域、ルート、メンバリングなど本当に色々と検討を重ね、最終的に我々グループBは、上高地から涸沢・奥穂高・岳沢への縦走を完遂した。
青栁さんは何度も行ったことがある一方で、私は初めての穂高連峰だ。さらに久しぶりの3日間の山行で、直前には滑落遭難のニュースも多く目に入ってきていたため、正直なところ緊張度は高かった。しかし二人でよく話し合い、天候にも恵まれ、達成感のある合宿となった。

■8/11(金・祝)
山梨県の青栁別邸に前泊。そこから上高地までは車で2時間程で、都内を早朝に出発するより楽であった。コロナ後の揺り戻しか、5:40の時点で沢渡駐車場に満車のマーク、バス待ちの長蛇の列も見える。我々は第4駐車場にぎりぎり停めることができた。バス停に並んでいるうち、幸いにも空っぽのバスが来て乗車でき、ほぼ予定通りに上高地BTに到着できた。
装備を整え、6:50出発。今回は縦走なので、二人とも極力の軽量化に努めている。水は1人あたり1.5L程度。私のザックは12kg弱、青栁さんにはテント装備をお願いし15kg程度だっただろうか。梓川沿いに、行き先の山々を眺めながら進んだ。
明神五峰から主峰(中央右の小さめのピーク)まで徳澤園までの途中に明神岳の五峰から本峰までを全て見渡せる箇所がある。実は今回の合宿企画では、山域を絞り込んだのちに明神岳というプランも考えた。結果、研究生以上の参加が見込めず見送りになったのだが。梓川からしっかりと見上げて、いつか行こうと二人で士気を高めることができたのは良かったと思う。
横尾までの道のりは一部工事中で、梓川を反対側に渡って迂回せねばならないので注意。先程まで観光客ばかりだったのが、突如我々だけになり気が引き締まる。パノラマコースの入口には、「屏風のコルを経由して涸沢へ至るパノラマコースは残雪のため通行できません」との札が。はて・・・少し立ち止まったが、雪の少ない今年にさすがに残雪は無いだろうと、進むことにした。

屏風のコルへの登りは、上高地からの標高差にして900mほど。塔ノ岳(ボッカ訓練)に比べれば大丈夫!と何度も言い聞かせるが、雲ひとつ無い晴天、南向きの斜面、無風で暑い。そして、人がほとんど入らないからか、アザミが人の背近くまで伸びて非常に歩きづらかった。手袋やアームカバーをし、ストックでかき分けながら進む。

辛い登りでも、ふと顔を上げるとたくさんのお花たちが。トリカブト、アキノキリンソウ、そしてウドの仲間だろうか。

ようやく屏風のコルに到達。初日の登りが終わって達成感! 青栁さんからオススメの展望ポイントを教えてもらい、少しだけ屏風の頭のほうに登っていく。初めて涸沢カールを見て、その雄大さに、じわ~っと感動が込み上げてきた。本当はもう少し登ると大岩がありもっと展望が良いらしいが、今回は時間の関係で先を急ぐことにした。この時点で既に14:30。

細尾根楽しい細尾根を進む。一部色づき始めたナナカマドも見られた。紅葉の季節にはさぞかし鮮やかになるだろう。ようやく風が通るようになって、楽しい尾根歩き。

ガレトラバース・・・と思ったのもつかの間で、トラバース区間に入ると、右側が切れ落ちたザレ場に出くわした。青栁さんによると、ここにはロープが整備されていたそうだ。そうか、「残雪」は無いけれど未整備ということか・・・ ちょっと足を乗せただけでパラパラッと石が落ちていくザレ場、大きい石がゴトッと動いてずれるガレ場。斜面のほうもどこを掴んだら良いのか分からない。私はこういう道に経験が無くて、相当ビビりながら進行。一つ越えてまた一つ・・・ 軽く6箇所くらいはあったと思う。

このトラバースはいつ終わるんだ、早く抜け出したいとめげそうになった頃、再び涸沢カールが目の前に広がった。ここまで気丈な青栁さんにだいぶ助けられた。もう少しでテン場!と気合を入れ直して進み、ようやく16:40に涸沢ヒュッテに到着。約10時間行動となった。
青栁さんオススメの端のほうにテントを張り夕飯。かなりの疲労度だったが、靴紐をゆるめたり服を乾かしたりしているうちに段々と元気になった。夜は星が綺麗だった。

■8/12(土)
本日も晴天。4:30出発のはずだったが、トイレに行ったり離れたテント管理所へ札を返したりしているうちに遅くなってしまい、5:00出発。ザイテングラート(「支尾根」という意味だそうだ)の登りは700m弱。両手を使ってよじ登る動作が増えてきて、風も心地よい。足場もしっかりしており、正直この登りが一番楽しかった。

涸沢岳はスキップしようかと迷っていたが、直感で先にピークを踏んでおきたいと思い、穂高岳山荘に荷物をデポして山頂へ。ここ数ヶ月は修行要素の強い山行ばかりだったので、久しぶりにピークらしいピークを踏み、しかも3,000m級ということで喜びが込み上げてきた!

北穂高岳、キレット、槍ヶ岳、そして遠くは立山連峰にうっすら剱岳まで見通せる。絶景に感動した。

南側に奥穂高岳。そしてその奥にジャンダルム方面。グループAは無事に通過しただろうか。その後、穂高岳山荘前の蛇口で飲料水を追加。100円で500mLいただけるのはありがたい。水の量を各自1Lと決め、今回も軽量化を意識して出発だ。3箇所の垂直鉄ハシゴでのすれ違いはさすがに混雑したが、幸いにも良識的な登山者が多く、お互い声をかけあって待ち合うことができた。

奥穂高岳山頂。岳沢のほうからはガスが上がってきた。下山を急ごう。

10:50頃、吊尾根からの下山開始。紀美子平までの標高差はわずか200mなのだが、2.5時間もかかってしまった。ザレ・ガレは無いものの、斜面を左手に岩場をずっとトラバースしていき、多少の登り返しなども。最初は前穂高岳も踏むつもりでいたが、スキップすることにした。ガスってきて展望は期待できないし、重太郎新道の下りでかなりエネルギーを使いそうなので、できるだけ余力を残しておきたい。紀美子平の手前でそう決めてからは心が楽になった。

重太郎新道は、大きな一枚岩に鎖がかかったところやハシゴが多い。切れ落ちたようなところは無いので三点支持をしっかりすれば問題ないが、感覚的には6~7割クライムダウンをしている感じで、最後には「もう岩場はおなかいっぱい!」と思うほどだった。

岳沢小屋が見えてきた。グループAメンバーの大きな笑い声が聞こえる気がする。既に杯をかわして盛り上がっているのだろう・・・ 声が聞こえるのになかなか高度が下がらない。17:00すぎにようやく岳沢小屋に到着、合流した。12時間行動となった。

■8/13(日)
最終日、5:30に岳沢小屋を出発。駆け足で下りていって、風穴の前で集合写真。

明神岳の取付も確認できた。7番の看板の前で、踏み跡が意外としっかりしている。
梓川のあたりで写真撮影なども楽しむ。河童橋から後ろを振り返ると、岳沢から奥穂高岳がよく見える。あんな高いところに居たのかと夢心地。天気・仲間に恵まれ、怪我も事故もなく3日間過ごせたことに感謝し、穂高連峰に向かって一礼。7:30に上高地BTに帰着した。

<行程>
8/11 上高地6:50~徳澤園~屏風のコル~涸沢ヒュッテ16:40
8/12 涸沢ヒュッテ5:00~ザイテングラート取付~穂高岳山荘~涸沢岳~穂高岳山荘~奥穂高岳~紀美子平~岳沢小屋17:10
8/13 岳沢小屋5:30~風穴~上高地7:30

<所感>
○青栁
前穂登頂はガスの為に断念しましたが、それ以外はほぼ予定どおりの山行でした。チームで互いに助け合い、怪我することもなく楽しく岳沢テント場に辿り着く事が出来ました。パノラマルートや吊り尾根の下調べが甘かった事は反省点ですが、結果的にはナーバスになり過ぎず前向きにトライ出来たのだと思います。
○秋永
1年ぶりの3,000m級かつ縦走で、本当に登れるだろうかと不安だったが、無事に踏破できて達成感がとても大きい。青栁さんに本当に感謝! 縦走のため、軽量化やエネルギー・水分補給にもかなり気を遣った。今回スキップした前穂高岳に来る時は明神岳から縦走したい。

荒川水系浦山川・冠岩沢

SMSCAクリーン登山(登山道の清掃活動)の翌日に近郊の沢登りを計画。西武秩父駅に集合、高橋車で秩父市浦山へ。
冠岩橋に続く林道を歩くと水が流れている。昨日の夕立に起因しているのだろう。沢の水量が懸念される。
冠岩橋を渡り、鳥首峠へ向かう登山道を沢沿いに歩く。道が沢から離れるところ(廃屋がある)で沢装備に。入渓するがすぐに堰堤がふたつ現れ早速高巻く。
水量は多く、小滝の両脇からも水が落ちている。しかし、遡行に支障はなく且つ水の透明度は高く美しい。
水量多し
15m滝の登攀に向けて積極的に小滝を登る。
3m滝

3m滝

標高800m手前で15m大滝が現れる。
15m大滝で作戦会議
水線脇は岩がのっぺりしていて嫌らしい。中間の立木の直下あたりから取り付いた。途中で残置支点を探したところ、クロモリの新しいハーケンを見つけた。確認するとしっかり効いている。そこを1ピン目に。
15m滝登攀
そして立木で2ピン目。立木の根元は土の急傾斜で、アルパインヌンチャクをセットする際にバランスを崩して落ちないように注意した。立木から上がるか、トラバースして滝の落ち口まで行くか。トラバース方向をのぞいて「行ける」と確信、そのルートを進んだ。落ち口先の岩が動かないことを確認し支点を構築、インラインエイトノットで落ち口まで移動しビレイ解除をコール。大野さんはタイブロックで登攀。ラストは平さん。
15m大滝
そのすぐ先の2段の滝(5m×2)も難しかった。下段のトイ状はヌメっておりガバが遠い。落ち口に上がる際に2度ほど足を滑らせたがクリア。上段は右の岩から巻いた。
苦労した5m滝

苦労した5m滝

標高860m付近で25mスダレ状大滝。
スダレ状25m大滝
水量が多いにも関わらず、物静かに水を落としており、堂々たる風格。高巻きが非常に悪いとトポやヤマレコ等に記載があったが、少し手前から左岸の稜線に上がれば問題ない。
大滝の高巻き

大滝の高巻き

沢への復帰も懸垂するという情報があったが、急斜面をトラバース気味に下りられた。
2~3mの小滝はまだまだ続き、楽しませてくれる。
滝は続く
標高950m付近で赤滝が現れる。こちらも滝の少し手前から左岸を高巻く。
赤滝(奥)

赤滝(奥)

再度沢に復帰し、標高1050m付近の右岸に大岩があるあたりで遡行を終了、左岸の急斜面をつめていく。やぶはないが一同急登にあえぐ。
大岩から詰め
そのままつめ上がると横倉山山頂でドンピシャリ。
横倉山山頂
下降ルートは冠岩沢左岸尾根を選択。地形図を見て下降点がわかりにくいだろうと推測し、登山道下の地形に留意して歩いた。そのうちに尾根のような形状の地形を確認できたあたりで下降開始、徐々に尾根が明瞭になる。途中で支尾根に引き込まれそうになるが、大野さんの助言で復帰。きのこが多い(私はタマゴダケを採って夜のつまみと味噌汁に)。
タマゴダケ
しばらく下降すると鉄塔(安曇幹線)があり、その巡視路から登山道に出てそのまま下山した。
下山
入渓したあたりで、私は湿った岩に足を滑らせ左の掌を5cm程度スッパリ切ってしまった。平さんが持参した真水で傷口を洗い、大野さんが持参した巨大絆創膏を張り応急処置、反省。

○クライミングロープ 8mm×30m 1本
○水量:多め

<行程>
浦山大日堂8:30~冠岩橋9:10~入渓点9:30~2段15m大滝10:40~25mスダレ状大滝11:40~赤滝12:15~横倉山13:20~鉄塔(安曇幹線)14:30~冠岩橋15:00~浦山大日堂15:40

<参考:気象データ(アメダス浦山)>
雨量:8/21 0mm 8/22 2.0mm 8/23 0.5mm 8/24~8/25 0mm 8/26 11.5mm 8/27 0mm

那須 井戸沢・大沢左俣

那須の大沢がイイらしいとの噂を聞き、さっそく計画した。せっかく遠出するので隣にある井戸沢とセットにして、初日は井戸沢を楽しく遡行して中ノ沢を下降、二日目は大沢左俣にチャレンジして余裕あれば井戸沢を下降、という贅沢なプランとした。

■8/5(土)
まずは大沢林道のゲートから林道歩きで約1時間。入渓地点にある堰堤は右岸に残置されたロープを使って乗り越えたが、堰堤を覆う丸太が濡れており、とても滑りやすい。堰堤手前20m地点から右岸を巻くのが安全だと思われる。
入渓地点
朝一ということもあってF2(15m)は一応ロープを出し、高橋さんがリード。大野さんが大胆にも中央突破しようと言うが、定石通りに右壁の藪を小さく巻く。藪に入ったところにある土の垂壁2mには残置スリングが2~3本ぶら下がっており、結果的にはフリーでも突破できたように思う。以降、ロープは出さなかった。
F2
次々と現れる5m~10mほどの滝を乗り越えていく。スラブ状の滝が多い。
スラブ滝
F9(15m)は、大野さんは階段状となる左側から、高橋さんはやや難しそうな右側からチャレンジする。
F9
青い空に向かってまっすぐに突きあがっていく。思わず歓声をあげる。
詰め手前
最後までスラブが続き、詰めは腰下の笹やぶとなる。
詰め/笹やぶ
稜線に出て、流石山を経由して大峠から登山道で下山を開始する。途中で峠沢、中ノ沢を渡渉するが、我々は中ノ沢から再度入渓して下降する。
中ノ沢の下降開始地点

中ノ沢の下降開始地点

ナメ床が多くて気持ち良い。
ナメ床
三斗小屋宿跡付近にある橋のあたりで脱渓。
駐車スペースのゲートから15分のところにある幸の湯温泉で汗を流した後、焚火の森キャンプ場へ。焚火を楽しみながらの話は尽きない。しこたまお酒も入り、それぞれ気を失ったように落ちていった。

■8/6(日)
大沢林道から入渓地点への林道が分岐する場所にスペースがあったので、そこに駐車する。堰堤が連続する区間は林道でショートカットし、30分ほどで入渓地点に到着する。入渓してしばらくは涸れ沢のゴーロ帯を進む。
ゴーロ帯
ゴーロ帯の丘を越えると、見事な連曝帯が現れた。
連曝帯
しばらくすると20mのスラブ滝が現れる。予習したところによると、左側のボロいルンゼを8割がたの高さまで登り、途中からルンゼを脱出して右側の滝身に近づくように遡上するはず。このルンゼの脱出から右側に乗り出すまでが今日の核心だった。残置があるという情報を得ていたがルンゼ内には見当たらず、ルンゼの奥の割れ目にカム(#2)をセットして、両手足を左右の壁に突っ張りながらルンゼを脱出した。その脱出した箇所に残置ハーケンが見えたが、手でゆすっただけで抜けてしまった。滝の落ち口を過ぎ、ロープを40mほど出したところの灌木でビレイ。
スラブ滝20m
その後も、落差はないがⅣ級の滝が続く。
緊張感は終わらない
最後の二股には涸れたスラブ滝40mがある。ここまではラバーソールのシューズにフェルトソールを装着していたが、ここでフェルトを外す。高度感はあるが、ラバーのフリクションが良く効き不安感はない。カム(#0.3、#1)を使用。
スラブ滝40m
詰めは井戸沢と同じ程度と予想していたが、笹が濃くてはるかにきつかった。
詰め/笹やぶ
この時点の疲労感から、井戸沢下降プランはあきらめていた。そして、稜線からの登山道の下りが長いことが分かっていたので、五葉の泉を過ぎたあたりにある1792mピークからバリエーションを下ってみようと踏み跡を辿ってみる。しかし、標高で100mほど下降すると藪が濃くなり、これは無理だと再び稜線まで登り返す。これで約1時間のロスとなり、余計に疲れた。
さらに、長い下りの途中で天気予報にはなかった突然の雷雨に見舞われ、登山道が沢のようになる。もし井戸沢を下降していたら危なかった。
レインウェアの中までびしょぬれになりながら19:30に駐車スペースに戻った。

緊張感も含めて最高に楽しく、かつ、要所における判断等で反省点も見つかった沢登りとなった。

<装備>
8/5 30mロープ
8/6 50mロープ、カム(#0.3~2)、ハーケン

<行程>
8/5 大沢林道ゲート7:00~三斗小屋宿跡7:50~井戸沢入渓8:10~F2 8:40~F9 9:20~稜線11:30~中ノ沢入渓13:30~脱渓15:00~大沢林道ゲート15:50
8/6 林道分岐6:30~大沢入渓7:00~20m滝8:00~40m滝10:20~稜線14:00~三斗小屋分岐18:00~三斗小屋宿跡18:50~林道分岐19:30

小草平ノ沢下降

基本ステップとして、丹沢・小草平ノ沢で沢下降を行いました。

堀山の家前
大倉バス停から堀山の家まで登山道を登り、装備を整えて下降点から沢に下ります。クライムダウンが厳しい場所はロープを出して懸垂下降。
懸垂下降
ロープをどこにセットするか考えながら作業。金澤さん、高橋さんにフォローいただきながらメンバー3人でロープのセットを交互に練習。
バックアップ
クライムダウンは足の置き方ひとつで怪我をするので慎重に。
クライムダウン
昨年の金澤さんの残置も発見。高橋さんが捨て縄で懸垂支点を作り下降しました。
勘七ノ沢との合流を過ぎ、二俣で装備を解除。

余談ですが鹿内は夏の暑さ対策で購入した空調服を着ていきました。ものすごく涼しく快適に堀山まで行けました。

<行程>
大倉バス停8:45~堀山の家10:50~下降点11:30~二俣15:50~大倉バス停17:20

ジャンダルム~奥穂高岳(夏山合宿グループA)

夏山合宿で天狗沢をつめて、ジャンダルムを通過し奥穂高岳まで縦走することになった。
パーティはジャンダルムを目指すのは初めてであり、私に限っては穂高も初見である。

■8/11(金・祝)
お盆休み初日とあって、新幹線は指定席号車の通路にまで立ち乗り客がいる状況。新幹線乗車中にトイレを済ますことは不可能だった。長野駅東口8時30分発のバス・さわやか信州号に乗車。沢渡駐車場満車による渋滞に巻き込まれてしまい、およそ20分遅れで上高地BTに到着。しかし、計画通り12時に登山を開始することができた。
梓川沿いを歩く/岳沢湿原
初日は岳沢小屋に幕営。テント場は満杯だったが、隙間を縫って2人用テントを2つ張ることができた。
テント場には摩訶不思議でバランシーなケルンがあった。
テント場の石
岳沢小屋テラスから

岳沢小屋テラスから

■8/12(土)
3時起床、4時20分に登攀装備で出発。
天狗沢に向かう
コブ沢を越えて天狗沢に入る手前あたりで鹿内さんが夏バテや日頃の疲労からか、早々に息を切らしてしまう。天狗沢をつめ始めてから体調不良等で引き返すにはリスクがある。
天狗沢

天狗沢

辛い決断だったが、ここでテント場に引き返してもらうことにして、残る3人で登山を継続。鹿内さんのメンバーシップに本当に感謝。
落石で悪名高い天狗沢はつめていくにつれて足元のガレが緩くなり、左岸の岩盤(スラブ)上を歩く。
天狗沢のつめ
岩盤が斜めになっているのでとても歩きにくいが、沢上はガレガレで蟻地獄のよう、とても歩けたものではなかった。
天狗のコルに到着、一息入れて登攀開始。
へつり
高度感は抜群だが、岩はフリクションも効くしホールドも多数。切れ落ちた稜線歩きが延々と続くと思っていたが、意外に広い稜線でところどころに休憩できるような場所もあった。
広がった稜線
西穂側から見るジャンダルムはずんぐりとした印象だった。
ジャンダルムへ
ついにジャンダルムに登頂!感慨深い。
ジャンダルムの頂にてジャンダルム
折角なので、懸垂支点を確認。だいぶ古い捨て縄やスリングが大きな岩にセットされておりカラビナが2個かけてあった。新しめの捨て縄は長さが不足していたようで小さな岩にかけてあった。
懸垂支点
私は捨て縄を2本持参したが、それでも支点の岩に対して短いだろう。これではリスクがあると判断、懸垂下降せずに歩いて下山。ロバの耳の前後だったと思うがクライムダウンはスタンスが見えにくく、難易度がそれなりにあった。クライミング経験者なら通過できるだろう。
ジャンダルム先の下り

ジャンダルム先の下り

ロバの耳前後の下り

ロバの耳前後の下り

最も警戒していた馬の背はホールド・スタンスがしっかりとあり、且つ登りとあってか問題なく通過することができた。
馬の背と奥穂

馬の背と奥穂

奥穂高岳で記念撮影、吊り尾根を通過し前穂高岳をピストン。
奥穂高岳前穂高岳
重太郎新道の急下降には参った。テント場に到着、岳沢小屋の生ビールに一同喉を鳴らした。

■8/13(日)
上高地BT7時50分発のバスに乗るべく、4時起床。
岳沢小屋にて
全員スムーズにテントを撤収、片付けも早かった。予定よりも若干早めにBTに到着。
河童橋
始発だからか、バスも満車ではなく、快適に新島々まで行くことができた。

今回、ジャンダルムを予定通り登れたのは、天候によるところが大きい。岩は乾いており、無風だった。今回登頂できた経験を決して過信することなく、今後の登山に役立てていきたい。

〇クライミングロープ 8mm×30m 1本(使用せず)

<行程>
8/11 上高地BT12:00~天然クーラー13:00~岳沢小屋15:40(幕営)
8/12 岳沢小屋4:20~天狗沢4:50~天狗沢のコル6:20~ジャンダルム8:10~奥穂高岳9:50~紀美子平11:20~前穂高岳12:00~紀美子平12:40~カモシカの立場14:00~岳沢小屋15:00
8/13 岳沢小屋5:30~天然クーラー6:20~上高地BT7:20

巻機山 米子沢

巻機山登山口6:00~入渓点6:10~ナメ沢分岐(40m大滝)7:00~5mミニゴルジュ8:00~大ゴルジュ入り口8:30~二俣10:30~登山道11:00~巻機山頂11:20~巻機山登山口14:15

 国道291号から林道をだいぶ分け入ったところに桜坂駐車場(第四駐車場まである)がある。広い駐車場なので安心だ。


 入渓点は第四駐車場方面から10分くらいのところにあり、「米子沢へ」との案内の看板が立っている。  高巻きは1か所だけでフリーで登れる滝が多い沢である。ロープは出さなかった。詰めも美しい草原の軽い詰めなので総じて「デート沢」と言われているのはうなづけた。ラバーの靴があっている。 特筆すべき箇所は2か所あった。 1.ナメ沢分岐の高巻き
 テープがあるのでわかりやすい。
 40m大滝を巻くのでそれなりに長い登り。巻きすぎると藪漕ぎになるので沢に近づいたところで下って、滝を上る。 2.大ゴルジュ出口
 2段8mの滝の右側を上り、ゴルジュのヘリをへつっていく。ここも高度を取りすぎると下りられなくなりそう。
 チムニー状の滝
 7mの滝は遠くから見るとやばそうだが近づくと階段に見える。
 ゴルジュの先のナメ
 振り返って展望
 続くナメ
 続くナメ  大ゴルジュを出ると長い長いナメが続き、うんざりする。だんだん源頭らしくなってきて、分岐が続くので1780mくらいで左に詰めて避難小屋に出るのが楽である。
 詰めた谷を振り返る
 もう少しで登山道  自分らは山頂直下まで詰めてしまった。ポジティブに考えれば、山頂まで近かったので山頂を踏もうという気になった。避難小屋からだったらそのまま下山していたに違いない。
 巻機山の山頂で記念撮影 【感想】 ■木村  天気が良くてたのしい沢登りとなりました。長いナメがあり登攀要素もありで最後まで飽きない面白い沢でした。  炎天下での沢登りでしたが、沢の水は冷たくてシャワークライムは心臓に応えました。夏の暑い日に行くのがお勧めです。  装備について・・・初級者がいる場合はロープを使うかと思いますが、クラックが比較的発達している滝が多いので、ピトンやチョックを持っていくと心強いと思います。
 桜坂駐車場のトイレが新しくなっていました。2019年10月に訪れたときは夜は幽霊でも出そうな雰囲気の古いトイレがありましたが、そこは今は管理棟になり、駐車場の一画にトイレが新設されていました。

熊倉沢

南秋川熊倉沢は、奥多摩の熊倉山に続く短い沢。右俣と左俣があり、さらに右俣には右沢と左沢、東俣には西沢と東沢がある。
今回、右俣右沢を遡行、浅間峠からハセツネルートを逆向きに少し進み、熊倉山手前から左俣西沢下降という欲張りプランを企画した。気温が高く風が吹かないからか、終始さまざまな虫に付き纏われ、集中するのが難しかった。最後は雷雨で土砂降りになったが、幸いにも出合近くの仕事道に出たのでそこから足早に下山しバス停へ。滝ではちっとも濡れなかったのに、全身シャワーを浴びた沢修行であった。

本来この週末は、昨年からのつづら岩阿弥陀中央陵広沢寺に続いて、安永さんを交えた3人での企画であった。当初は鋸岳縦走など考えていたのだが、3泊ほど必要そう。釜の沢、万太郎谷など泊りの沢も考えたが夏合宿前には厳しいかもと、日帰りの沢で遡下降が両方練習できる熊倉沢を見つけたという経緯だ。しかし、安永さん体調不良のため、当日は2人になった。


武蔵五日市駅前に集合。この時間はバスが無いのでタクシーにて矢沢林道終点へ(約30分、6,200円)。


林道終点からほどなくして、軍刀利沢との分岐になる。右に進む。かつては車が通れたらしいが、荒廃が激しく草も伸びている。


装備を整え入渓。虫を払いながら進む。
右俣右沢を遡行に選んだ理由は、3箇所ほど練習に適した滝があるから。


1つめは18m程の陸軍滝だ。水が何段かに細かく落ちていく様子が美しい。左側を高巻きする。それなりに斜度があって結構緊張する。前回、小草平の遡行で細く枯れた根を折って肝を冷やしたことから、今回はとにかく生きた根っこ、太い樹を見つけて掴むように心がけた。また松本さんからは、高巻きは一般的に登り過ぎると落ち口を見失うので注意するようにとのこと。


2箇所目は、チャレンジしてみたかった4メートルCS滝。色々な記録を読んだが、初心者がフリーで乗っ越すのは難しそう… 結果としてビレイしてもらったが、ガイドブック通り残置ハーケンにヌンチャクをかけてA0を試してみた。細かいスタンスでのフリクションを信じないと、ロープ無しでは難しそうだ。


3箇所目、10m滝。悩むことなく松本さんにリードいただき、セカンドで登った。中間支点、ハーケン一つ。高度感はあるが足場が広く、ここはリードに挑戦できそう。次回への課題だ。


ほどなくして空が開けてきて、浅間峠に詰め上がった。風が吹いて心地よい! 秋のハセツネでまた来られますようにと心の中で祈って、沢靴のまま熊倉山方面へ歩みを進めた。松本さんはラバーシューズなので歩きやすそう。アップダウンに一喜一憂しながら40分ほどで熊倉山手前に到着した。

さて、尾根からの下降点の見極めが重要なのだが、今回、地形図を印刷し忘れてしまった。これは反省だ! 920m付近の広い谷から下降を開始した。


左俣西沢では、一箇所だけ練習を兼ねて懸垂下降した。太めの木の根に30mロープをかけ、滝の高巻きルートの方を下降。

そうこうしているうちに空が暗くなって、遠く雷の音と、ポツポツと予兆が。松本さんは朝のうちから、今日は降るよと何度も言っていた。私がなかなか下降のスピードが上がらずモタモタしているうちに、いよいよ雨が落ちてきて一気に土砂降りになった。
本当は後半の2連続の滝で懸垂下降を練習したかったが、高巻きして沢筋から離れる。そのまま仕事道に出たので、全身びしょ濡れになりながら出合まで駆け下りた。真夏で晴れるだろうと思い込んでいたが、午後の雷雨など細かくチェックしていなかったのを反省した。


入渓は予定より50分ほど遅れてしまったが、最終的に南郷バス停で着替えを済ませ、計画通り16:00発のバスに間に合い、なんとか帳尻合わせた感じである。山塾行きつけの音羽鮨で反省会をし、帰路についた。

<行程>
林道終点8:45~入渓点(沢装備準備)9:20-9:50~浅間峠12:00~熊倉山手前(920)12:40~出合15:00~南郷バス停15:35

<所感>
○松本
沢自体がコンパクトなので、下降と組み合わせる沢としては奥多摩では代表格だと思います。
ラバー底の沢靴にして2度目の遡行ですが、今のところフェルト底との差ははっきりとはわかりません。ただ、エッジには立ちやすいのかなと何となくそう感じました。
○秋永
下降は、岩・倒木・泥・落ち葉ミックスなところで足場を信じられず。もう少し慣れたらスピード上がるだろう。冬山にも通じるところがあるかもしれない。
それにしても終始虫に追われる一日は辛かった。ずーっと顔周りにハエ?ブヨ?アブ?飛び交っていて、淀んだ小滝にはヌカカがファンファン飛び交ってお祭りをしていた。右腕を5箇所刺されて痒みに耐える翌週。沢をやるからには虫にも慣れねば!

硫黄山~羅臼岳

昨夏の大雪山~トムラウシ山に引き続き、同じコンビで北海道へ。
飛行機や宿を早めに押さえた日程優先の旅だったが、山行中は晴天に当たり、一般道ながら北海道らしいワイルドさを楽しめた。

■7/19(水)
女満別空港から知床エアポートライナーでウトロへ移動し、民宿たんぽぽに投宿。
夕食まで時間があるので散策に出る。堂々たるオロンコ岩(全体写真は下山後に利用した観光船から見た姿)に登ると、看板の下にキタキツネがいた。岬の向こうに今回歩く硫黄山から羅臼岳の山並みが見えている。
オロンコ岩オロンコ岩より

■7/20(木)
予約しておいたタクシーでカムイワッカ橋先のゲートまで(7000円)。カムイワッカから硫黄山登山口までの区間は「特例使用」の申請が必要(北海道オホーツク総合振興局 網走建設管理部 ⇒ https://www.okhotsk.pref.hokkaido.lg.jp/kk/akk/shiretoko_riyou.html)で、予めメール提出してある。先に出発して行く単独男性と挨拶を交わし、我々は9時半にゲートを通過。
傍らで刈り払いしている道を6~7分進むと硫黄山登山口(標高245m)。掲示されたヒグマ目撃情報によると、この先、新噴火口までの途中で目撃されている。
ヒグマ目撃情報
登山口を入ってだんだんに高度を上げ樹林帯を抜けると、道の上に落とし物があった。時間の経ったものも新しそうなものもあり、サイズから見てやはりクマなのだろう。
糞
旧硫黄採掘地(標高500m付近)では足元に硫黄の粒が散らばっている。ハイマツや岩の道を登りながら見上げると、緑のじゅうたんの間から噴気の上がっているのが見えた。気温は25℃程度だが、ひどく暑くて汗が滴り落ちる。
硫黄山の登り
「新噴火口最上部」看板(標高750m付近)の箇所は少し開けていて西側の海を見張らせる。すぐ上に見える稜線に出れば涼しいだろうとハイマツの間に踏み込むが、トンネルのように樹木の覆い被さる道で30分も息を切らせ、ようやくハイマツの上に頭を出してもまだ樹林。この辺りは稜線まで針葉樹林なのだった。
樹林の切れ間
沢出合(地形図999地点付近、硫黄川の水線の源頭)から硫黄山頂下までは涸沢を辿る。水溜りの残る岩盤やガラガラとした岩の箇所が多い。涸れ滝の巻きが2か所あり、上の方は巻き道も細くやや危険な印象で、この後追いついた単独男性によると、例年ならロープが張ってあるとのことだった。
沢地形の登り
ある程度風が通るので樹林より楽とは言え、適宜日陰で休憩しながら上がって沢地形を出た。(下の写真は南・1枚目~南西・2枚目。山頂方向は逆光)
硫黄山頂下硫黄山頂下
砂礫の道を上がると硫黄山頂への分岐があり、知円別岳の方へ進んだ先行パーティのカウベルが聞こえた。分岐から山頂へは岩がちで傾斜が強まり、足元の岩の間にチングルマ、イワギキョウ(?)、コエゾツガザクラ(紅白?)等々、様々な花が咲いている。
硫黄山の花硫黄山の花
14時半、硫黄山(1562.3m)に登頂。行く手の山々から海まで眺め渡せた。
硫黄山より
山頂から下りて分岐を南へ。凹地を前にして、山頂と凹地の間を西へトラバースした先に標柱が立っているように見えて進路に迷うが、薄い踏み跡の続くまま凹地の方へ下り、再び登りにかかると「第一火口分岐」の標柱があった。道の上にまた何かの糞を見て行くとやがて雪渓が現れ、その際を下りる(アイゼンを使うほどの長さ・斜度はなかった)と第一火口キャンプ指定地だ。雪渓から水が流れ出し、エゾコザクラが群落を成す。ここのチングルマは花の終わったものが多い。第一火口キャンプ指定地
先行パーティはこの先のキャンプ指定地を目指したらしく、上方の稜線からカウベルの音がする。ここに泊まるのは我々のみ。テントを張り、フードロッカーの近くで水を浄化、煮沸しながら、食事にした。第一火口キャンプ指定地

■7/21(金)
5:20に出発。第一火口分岐を経て第2前衛峰手前まで登ると「羅臼岳10KM」の標柱があった(後に確認したGPSトラックデータによると、距離11.0km、沿面距離12.3km)。ハイマツの間の道から一転して礫の稜線に入ると、いかにも火口壁と感じる。進路を塞ぐ岩を崩れやすい足元を気にしながら躱(かわ)すなど、昭文社地図の実線ルートとしてはなかなかに厳しい。礫上にはコマクサが咲いていた。火口壁の道
7時、知円別岳(1544m)下で休憩。ここはスマホが通じた。
南岳方向に下るとチングルマのお花畑があったりと快適。南岳(1459m)は登山道上に特に目印無し。山頂は少し離れた高まりなのかもしれないが、そこまでハイマツの藪で道は無い模様。二ツ池からオッカバケ岳、サシルイ岳と眺められる。
南岳より
二ツ池の一つ「天の池」は干上がっていた。「地の池」は水を汲むのは容易だが、美味しくなさそう。
二ツ池
オッカバケ岳と1450mの間を通り抜け、サシルイ岳に向けて下る途中にすれ違った単独男性に聞くと、三ツ峰キャンプ指定地の水場付近でクマ1頭を見たが人間を避けて去ったとのこと。
エゾカンゾウなど咲く湿地、草原から沢状地形に入って登って行く。枯れた沢の傍らで休憩中、急に水が流れ始めた。水流はその上の雪渓から出ていたが、雪渓下で栓になっていた雪が解けたのか。その雪渓は地図に「残雪時ルート不明瞭」とある通り先行者の足跡も判然としないが、真っ直ぐに登るとほぼ末端でまた道が現れた。ここもアイゼンは使用せずに通過。
サシルイ岳(1564m)下から、後方の硫黄山、前方の羅臼岳を眺める。
後方の硫黄山、前方の羅臼岳
ハイマツの中にエゾツツジなど見ながらガレ場を下り、草地の中に水流のある三ツ峰キャンプ指定地に12時到着。登山道が広くなっている箇所もテント設営可能だが、水流を跨ぐとさらに広くて快適な場所があった。テント場下の流れに設置されたパイプから出ている水はチョロチョロ程度。水流を5分程遡ったところに雪が残っていたのでその近くで汲んだが、草のカスなどゴミが多い。いずれにせよ浄化しなければ使えないが。三ツ峰キャンプ指定地の水場
そうこうしているうちに羅臼岳から下ってきたパーティが到着し、最終的にはテント4張、7人ほどになった。皆フードロッカーに集まって食事。フードロッカーは少し高いところにあるためか、スマホが使えた。

■7/22(土)
5:20に出発。三ツ峰の二つのピークの間に上がると、羅臼岳が圧巻。1508mピークには道が付いているようだが割愛した。
羅臼岳
羅臼平にはテントが1張、出発準備中だった。
岩清水分岐から山頂まで標高差200m以上の往復なのだが、クマに持って行かれては困るので、そのままザックを担いで上がる。岩清水は分岐の少し上で、抉れた岩壁の天井からコケを伝って幾筋かが滴り落ちていた。昨晩泊まり合わせた人の話では水が出ていることの方が少ないそうだが、今は手に受けて飲める程度の量。美味しいと聞いたが地図には「要浄化」とある。岩清水
羅臼岳最上部の岩場は、難しくはないがザックの重さが堪えた。
羅臼岳上部
7時半、羅臼岳(1660.0m)に登頂。周囲360°の眺望。山頂はスマホ可。
羅臼岳登頂
暫し眺望を楽しんで下山開始。岩清水分岐から屏風岩方面に折れてお花畑分岐への急斜面に掛かったところで、下の雪渓の途中で立ち止まっていた男性が「クマがいます」。見ると、我々からは300mも離れているだろうか、草原を2~3頭が移動しており、やがて樹林に隠れた。
クマ遠望
下の男性が動き出したので、我々もアイゼン(チェーンスパイク)を着けて雪渓を下った。
屏風岩まで緑の谷間の急傾斜。屏風岩はこれもまた火山的な断崖で、溶岩あるいは火山灰の堆積なのか細かな層が重なっている。
屏風岩
地図に水マークのある泊場では沢が合流している。大きな沢は鉄錆色の赤と硫黄の白が混じって物凄い。
泊場の沢
その先で地図に「渡渉前後のコース不明部分あり」とある箇所は、対岸のペンキマーク(下の写真中央の赤矢印)が判りづらい。
渡渉前後のコース不明瞭
沢から離れて一登りするのに汗をかく。樹林のトラバースに入ってもじりじりと照り付けられて非常に暑く、消耗した。ようやく第一の壁に辿り着くと、あとは緩やかな道でいくぶん楽になった。
登山口に13時下山。ヒグマ目撃情報を記入し、知床羅臼ビジターセンター経由で羅臼温泉野営場に向かった。
野営場の午後の受付は15時からなので、まずテント設営して、道路向かいの熊の湯で汗を流す。周辺に自販機など無いので、そこから1km程歩いたホテルで缶ビールなど調達。野営場では観光客用ゴミ袋を購入することでゴミ回収ボックスを利用できる。使用済の携帯トイレは、回収ボックスのうち燃えるゴミの隅に置けとのこと。野営場の周囲には動物除けの電気柵が巡らされており、安心してテント内で乾杯した。

<行程>
7/20 硫黄山登山口9:40~沢出合12:10~硫黄山14:30~第一火口分岐15:05~第一火口キャンプ指定地15:50
7/21 第一火口キャンプ指定地5:20~第一火口分岐5:55~知円別岳下7:00~南岳8:20~オッカバケ岳下9:50~サシルイ岳下11:25~三ツ峰キャンプ指定地12:00
7/22 三ツ峰キャンプ指定地5:20~羅臼平キャンプ指定地6:20~岩清水分岐6:40~羅臼岳7:30-8:00~岩清水分岐8:30~お花畑分岐9:10~泊場10:20~第一の壁11:40~羅臼岳登山口13:00