八ヶ岳・阿弥陀岳南稜

  • 期間 2024-02-10~2024-02-11
  • メンバー L松本(17期)、秋永(42期)、中村(42期)、青栁(43期)
  • 記録 秋永

厳冬期バリエーションルートの経験を積むべく、今回は阿弥陀岳南稜に挑戦した。
結論、P3ルンゼで小規模ながら雪崩にあってしまった。怪我もなく無事だったのが何よりだが、かなり肝を冷やした。我々を追い抜いて行った先行者がルンゼ上部で誘発したもので、面発生、幅3~5m程度で、サイズ1(もしくは、それ未満)。ルンゼの中に1人残っていた自分が雪を被り、完全に「地形の罠」に居た。積雪期における様々なリスクを身をもって考える機会となった。
写真多めで振り返りたい。

■2/10(土)
初日は立場山までということで、都内8時集合。のはずが・・・私が思いっきり寝坊をしてしまい、大反省! 9時都内発、青栁カーにて舟山十字路に向かい、12:30に山行開始となった。


立場川を渡ったあと尾根に登るまでが急なので、最初からアイゼンを装着。ビーコンチェックをして出発した。さて、阿弥陀南稜方面の分岐に来てみると、ノントレースだ・・・。


薄い雪の乗った急斜面を登り尾根に出た。天気は良い。去年は中央稜~御小屋尾根に行っており(⇒ 2023/1/21 八ヶ岳・阿弥陀岳中央稜)、南稜はどんな顔を見せてくれるか楽しみだ。


段々と雪が深くなり膝下30cmくらいの新雪が重い。16:30にようやく立場山に到着した。もう少し先に進むか考えたが、ラッセルが膝上になりそうだったので、もう日没時刻でもあるし雪がチラついて来たのでここを幕営地とした。


新雪がサラサラなので、4人で肩を組みながら縦横に歩いて踏み固めてからテントを張る。夜はカボチャ鍋、山談義が進んだ。かろうじてau系列の電波が入ったので、SCWを確認したところ、朝方に降雪の気配。出発を少し遅らせることにした。

■2/11(日)

6:30に出発。昨日に引き続きノントレースだ。先頭を交代しながら進む。


青ナギ通過後、振り返る。甲斐駒ヶ岳なども綺麗に見えた。


段々と傾斜がきつくなり、ほとんど中村さんがラッセルをしてくれた。無名峰が近づいて来て、ふと左手を見ると、阿弥陀南稜全貌が!美しさに見とれる。


無名峰までの最後の急登。新雪なので、ラッセルの二番手も結構辛い。

無名峰から
8時過ぎにようやく無名峰に到着、晴天で、展望がひらけて感動! 大休止。


天狗尾根も格好良い。さてこのあたりから後発の登山者が追いついて来た。当日朝発の彼らは軽快な足取りでトレースを辿り、我々が前日からずっとラッセルだったことを知らなかった模様。


おそらくP1。


P2だと思う。後発のソロ登山者も写っている。


振り返ると、素晴らしい景色。こんな尾根を歩いて来たのだ。


気になっていたP3トラバースの前半は、夏道も見え、さして問題ではなかった。このあたりから後発の方が抜かして行った(以降「先行者」と表記)。


P3ルンゼ取付きの様子。そこまではやや下りのトラバースだが、ワイヤーも出ていたのでしっかり掴んで進行。ただし取付きは腰の深さくらいまで吹き溜まっていて、先行者が少し苦労している。松本さんがワイヤーを掘り出してくれ、我々はそこに一旦セルフビレイをとった。


膝上の深さだが、キックステップで登れるので、ロープを出さずに進行することとなった。ちょうど10:00。


振り返る。後ろは中村さんと青栁さん。段差が大きく、ピッケルを深く刺して、手もつかないと登れない。その後、先行者がルンゼ中盤で苦労しており、どうやらそこから先は雪が薄くなってピッケルもアイゼンもかかりづらい模様。松本さんより、後発の我々には待てとの指示。この間に後ろからさらに数名が追いついて来て、ルンゼに10人近く溜まった状態に。松本さん曰く、本来は右手の方に斜めに登っていくのでは、ということでルート修正。2人がクライムダウンして来た。ルートが分かった途端、後発の方々がどんどん抜いていく。


さて、草付きのトラバースになるので、ここでやはりロープを出すことになった。松本さんが先頭、私が末端を持ち、登り切った気配を感じた後にインラインエイトノットでアンザイレンした。中間を、同じく待機していた中村さんと青栁さんがアッセンダーで登っていく。

エイトノットのたるみを直して結び直し、上の写真を撮った直後のことだ。10:41雪崩発生。
先行者(トップ)の叫び声と共にゴゴゴという地鳴りを聞いて見上げた時には、既に雪の塊が降ってきていた。先ほど松本さん達が行きかけてやめたルンゼ上部からだ。
咄嗟に左に一歩だけ避けた。あまりにも一瞬で何もできない。新雪だったので、ザーーーーッと頭から被って、5秒くらいだっただろうか。

青栁さんが一所懸命「大丈夫かーーー!!」と何度も声をかけてくれた。雪に深く刺していたはずのピッケルが見当たらない。声かけに応答していくらか冷静になってみると、ピッケルはスリングとリーシュにつながったまま後ろにぶら下がっていた。ロープも結んだ直後だったので安全だったことが分かる。
ロープの末端を急いでまとめ、恐怖を抑え込んで登っていった。姿は見えないが松本さんがロープを引いてくれているので、信じるしかない。

雪崩破断面
ルンゼを登り切ったら破断面を発見した。厚さ30cm程度だろうか。数日前の降雪が西側からの風により移動したのか、だとしたらウィンドスラブ。ルンゼ上部の岩場を数メートルだけトラバースする必要があって、先行者がそこに蹴り込んだ時に誘発したようだ。

いずれにせよ皆と再会して本当に安堵した。
さて、山頂まであと少し。しばらく足の震えが止まらなかったが、気を強く持って、再出発。


P4ルンゼのトラバース。


ちょうど12:00に登頂! 無事に登り切れたことに感動し、固く握手(ハグ)。先ほど一瞬立ち込めた灰色のガスも晴れて、無風快晴の山頂となった。先月に挑戦した大同心もよく見える。

さて、下山は中央稜の予定だったが、分岐まで行ってみたらまさかのノントレースだったため、下山ラッセルで消耗することを考え、御小屋尾根より下山した。昨年に比べて雪が良くついていたので、途中でアイゼンを外して快適に足を滑らせながら降りた。

<行程>
2/10 舟山十字路12:30~立場山(C1)16:30
2/12 C1 6:30~青ナギ7:00~無名峰8:10~P3ルンゼ基部10:00~阿弥陀岳12:00~御小屋山14:20~舟山十字路15:20

<所感>
○松本
最後に登ったのが10年以上前だったか・・・ ルート上の各所の記憶、結構飛んでいました。
積雪の状態により毎回印象が異なるのがP3ルンゼ。易しくもあり、いやらしくもあります。近年大きな事故があったことから、改めて判断ミスの無いよう努めたつもりでした。ですが、結果ヒヤリハットで済んだものの、雪崩インシデントをしっかり回避出来なかったことが今回最大の反省点となりました。
それからもう一点気づいたこと。我々パーティーは習慣から縦走用アックス1本というスタイルだったのに対し、外すべての方々はアックス2本で登られていました。登攀スタイルの変遷を感じさせられた山行でした。
○中村
私にとって初めての冬期バリエーションルートということで、緊張する場面もあったが、とても充実した山行を経験できた。
阿弥陀岳南稜は冬季アルパインの入門ルートということであるが、今後他のルートにも登ることができるよう多くの知識や技術を身に着けたいと感じた。
同行していただいた皆様ありがとうございました。
○青栁
登山口までの車の乗り入れでスタックしかけたことに始まり、新雪ノートレースのラッセル、そして雪崩の直撃と、大変勉強させられた山行でした。経験値は上がりましたが、まだまだ序ノ口なのでしょう。
これからもっともっと面白くなるのだろうと期待が膨らみます。
○秋永
先月JMSCAの積雪期山岳レスキュー講習会・クラス1を受講したばかり。雪質、天候、ルート、パーティ行動やリーダーシップ、様々な視点で積雪期における多様なリスクと考え方について学んだ。頭では理解していたものの、実は雪崩を見たことがなかった。まさか、いきなり経験することになるとは・・・ 今回学んだ多くの視点を活かして引き続き雪山に向き合っていきたい。また、積雪期に初めてロープを扱ったが、素早くさばいたりまとめたり、慣れが必要だった。いずれは、阿弥陀北稜にも挑戦する。

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