大雪山~トムラウシ山

  • 期間 2022-07-27~2022-07-29
  • メンバー L小林英(25期)、田中(35期)
  • 記録 小林英

層雲峡から入って大雪山の主峰・旭岳を踏み、トムラウシ山まで南下した。前半はガスで眺望を得られなかったが、後半は雄大な眺めを堪能できた。

■7/27(水)
前泊した旭川から鉄道とバスを使って層雲峡に10:20到着。日は出ているものの、層雲峡・黒岳ロープウェイの先の稜線には雲が掛かっている。ロープウェイで黒岳五合目まで上がると案の定降り出したため雨具を着けてペアリフトに乗り継ぐが、七合目で雨は止んだ。
登山口の七合目ロッジに掲示されたヒグマ情報によると、黒岳石室の先の雲ノ平近辺に出没し、また高根ヶ原から分岐する三笠新道は当分通行止めとのこと。登山道は石段に始まり角材の階段などもある急登で、風も通らず日が射してくるとたいへん暑い。岩の転がる黒岳の広い頂(1984m)から望む大雪山の山並みには雲がまつわりついている。傍らの小さな祠には熊野修験の碑伝(ひで)が収められており、5月に歩いた大峯奥駈道(http://www.sanjc-gijutsu.com/site/log/大峰山脈/大峯奥駈道/)を思い出した。
黒岳山頂
黒岳から下ると売店もある黒岳石室。チングルマなどのお花畑を見ながら雲ノ平の道を行くと、微かに硫黄の匂いがしてきて御鉢平展望台に上がる。御鉢の縁を周るように進むと急斜面の雪渓に突き当たった。踏み跡がある程度のステップになっているが、先の様子は判らないのでチェーンスパイクを装着。
雪渓
雪渓から礫の道に戻ると北鎮岳肩の分岐で、ここにザックを置いて北鎮岳(2244m)に登頂。山頂には二つに割れた石製の方位盤があるが、ガスでほとんど視界無し。それでも一瞬晴れそうになった時に御鉢の向こうの山を垣間見られた。
分岐に戻り、再び御鉢を周る。中岳(2113m)では少しガスが晴れ、御鉢の底や向こう側の山が見えた。足元にはコマクサが咲いている(コマクサは今回、礫地はもちろん土に変わってからさえ登山道上に見かけた)。また視界のなくなった間宮岳は2185mの山頂標が草混じりの真っ平な岩原にポツンと建っている。
昭文社の山と高原地図『大雪山(2022年版)』(以下、昭文社地図と表記)のコースタイムは間宮岳分岐から旭岳山頂まで1時間40分なので、本日の泊地・裏旭キャンプ指定地まで40~50分とみたが、下りていくと案外早くテント場が見えて30分足らずで到着。賑やかな(だが礼儀正しい)若者は旭川北高校の山岳部で、顧問教師2名に生徒21名。それ以外のテントも1張あった。我々は他のテントと水流を挟んだ地点に各自のテント、シェルターを設営。
雪渓下の流れから水を汲んで食事し、就寝。夜明け前に寒くなって防寒着を追加した。

■7/28(木)
起床時もテント場はガスに包まれていたが、おかげで少し離れれば携帯トイレを落ち着いて使える。4時半、荷物をテントに残し、最低限の装備で旭岳山頂へと向かった。
一足先に山頂往復してきた単独男性とすれ違い、傾斜が増して現れた雪渓をチェーンアイゼンで通過して、旭岳(2290.9m)に登頂。ガスで全く眺望無し。間宮岳分岐から通しての所要時間は1時間弱で、昭文社地図のコースタイムより随分短い。
旭岳山頂
キャンプ地に戻ると先ほどの単独男性以外は撤収済みだった。高校生たちは今日は白雲岳を往復して黒岳泊と聞いている。
間宮岳分岐を過ぎた辺りでガスが切れ御鉢の中が見えたが、北海岳(2149m)はまたガスの中。北海岳分岐を南東へ折れると少しガスが晴れて、行く手に白雲岳、その右(西)に後旭岳も見えてきた。チングルマを始めとするお花畑が美しい。
白雲岳を大きく左(東)に回り込むように進み、一登りすると白雲岳分岐。先にすれ違った登山者から白雲岳キャンプ指定地にヒグマ出没と聞いており、白雲岳をピストンする間荷物をデポするのはまずいかと思っていたが、旭川北高の大きなザックがいくつも置かれていたので、我々もそれに倣う。白雲岳へは花咲く草原の道を行き、最後に大岩が積み重なった急登になる。高校生たちとは岩場の途中で行きあった。 白雲岳(2230.1m)山頂に立ってもガスはなかなか周囲の稜線から離れないが、雪渓を美しく纏った山肌は拝ませてくれた。
白雲岳より
分岐に戻って南に下って行くと、丘の上の小さな家のような小屋が見えてくる。やがて水場の沢があり、その上にテントサイトと白雲岳避難小屋。小屋は2階建てで決して小さくはなかった。今の時期は管理人が入っており、スタッフからクマ情報を聞く。最近出没しているのは人間を恐れる様子のない一頭で、高根ヶ原を行き来しているが鈴を鳴らすなど注意して歩けば問題ないでしょう、と。登山道整備協力金1000円を置いて返礼品の手拭をもらった。
さらに南下すると、平坦な道の真ん中にキタキツネ。ネズミのような小動物か鳥を咥えているようだ。悠然たる足取りで道から外れ茂みに消えて行った。
キタキツネ
だんだんに雲が取れてきた中、高根ヶ原分岐を通過し、左手(東)下に沼を見る。分岐から沼に下りて行く道がクマ出没のため通行止めとなっている三笠新道だ。
三笠新道
やがて、岩礫や草原の道に笹やハイマツの被さる箇所が出てきた。強い風は吹かないのか、立ち上がっているハイマツ林もある。地形図の崖マークに沿った平坦地から緩やかに登って1833mを越えると、長大な稜線がストンと落ちる忠別岳と、その手前の忠別沼が見えた。
忠別岳
沼の畔の湿地に付いた蹄跡はエゾシカだろう。忠別岳へは沼から岩がちの道を緩やかに辿り、登り詰めた崖際に山頂標(1962m)が建っている(地形図に三角点マークは無く1963の標高表記のみ。昭文社地図には三角点1962.8とある)。
山頂から下り、進入禁止の×印ペンキが付いたボンシビナイ分岐を見送ると間もなく、眼下の雪渓横に三角屋根の忠別岳避難小屋が見える。が、実際にはなかなか遠く、山頂から到着まで1時間を要した。
2階建ての小屋で、到着時には2名分ほどの荷物があるのみだったが、最終的に1階はほぼ満杯となった。小屋の下のテントサイトには2張ほど。水は小屋前の雪渓下で汲む。同じ雪解け水でも昭文社地図に裏旭と違って「要煮沸」とあるのは、高度が下がって動物もいるためだろう。小屋にトイレがあるのは助かる(使用済みの紙は持ち帰り)。やはり昨夜の裏旭より暖かく、快適に眠れた。
忠別岳避難小屋

■7/29(金)
4:10 出発。晴れ。藪が朝露に濡れているので雨具ズボンを着用。縦走路下の斜面にエゾシカ7頭の群れを見た。
縦走路は忠別岳から五色岳を繋ぐ稜線に付いている訳だが、広々とした風景の中、平原を歩いているとしか思えない。その先に立ち上がる五色岳に向けて道は緑に埋もれていく。
五色岳へ
藪を分けて上がった五色岳(1868m)は、ハイマツに囲まれ岩の散らばる広場に「公共/図根」の標石があった。
分岐を西に向かい、背丈を超えて立ち上がったハイマツを潜り抜けると、トムラウシ山~化雲岳を見渡せる。やがて木道になり、お花畑といくつもの池。池越しのトムラウシ山が美しい。
トムラウシ山
湿原の中の分岐から登りに掛かり、大岩が特徴的な化雲岳(1954.5m)に登頂。道標によるとトムラウシ山まであと5kmある。
化雲岳
山頂から下りて先ほど分岐した道が合流する辺りは昭文社地図に「神遊びの庭」とある。化雲岳前後の湿原から眺めるトムラウシ山は確かに今回ルート中でも屈指の景観だった。ヒサゴ沼を左手に進むと、花をちりばめた緑に岩が配された「日本庭園」がまた目を楽しませてくれる。
日本庭園
しかし、天沼を過ぎて地形図1879mの横を通り抜ける箇所では、大岩の堆積の中に目印のペンキや赤テープを探すのに苦労した(ガスが出たら目印に頼るのは無理)。「ロックガーデン」は1900mからの急坂を登り切るとトムラウシの山頂部が近付いてくるが、その手前に北沼があり、沼の畔(2000m)から最後の登りになる。山頂部はうっかりすると隙間に落ち込みそうな巨岩の堆積。ここもまた目印に乏しく何処を踏むべきか迷ったり、腕力で身体を持ち上げたりと、昭文社地図の実線ルートにしては厳しい。
トムラウシ山頂直下
9時半、トムラウシ山(2141.2m)登頂。トムラウシは五色ヶ原や沼ノ原との複合火山とのことだが、ここまでの巨岩や山頂東側の溶岩に覆われた窪み(火口底)など、単体で見てもいかにも火山らしい荒々しさがある。百名山だけあって多くの登山者がいた。
トムラウシ山頂
山頂から下りる岩場では「ピチッ、ピチッ」とナキウサギの声のみが賑やか(この後、前トム平へ下りる手前で道脇の岩の上に姿を見かけた)。トムラウシ公園は草原と水と岩の庭園ふうの景観となる。が、その先の小ピークからの下りはまたもや大岩がガラガラと積み重なっており、地震でもあれば崩れそうだ。標高1600m辺りまで下りると道は樹林に絡み、残雪もある沢地形の急坂を下るとコマドリ沢分岐。
沢沿いに少し下ってから向かいの尾根へ上がる急坂が苦しいが、尾根上のダラダラした刈り払い道をカムイ天上まで日に晒されて歩くのが今回いちばん辛かったかもしれない。温泉コース分岐の後は緩々(ゆるゆる)とした下りが続き、最後に一気に高度を下げてトムラウシ温泉登山口に下山。そこに祀られた小さな祠「トムラウシ温泉神社」に無事下山の御礼をし、公衆トイレの軒下に設置された携帯トイレ回収ボックスに裏旭キャンプ指定地から持ち歩いてきたブツを投入した。
本日の宿泊地となるトムラウシ野営場に荷物を置いて、東大雪荘へ。野営場料金(250円)もここで支払い、日帰り入浴(700円)で汗を流した。

<行程>
7/27:黒岳七合目11:30~黒岳12:40-13:00~北鎮岳肩の分岐14:40~北鎮岳14:55~北鎮岳肩の分岐15:10~間宮岳分岐16:10~裏旭キャンプ指定地16:40
7/28:裏旭キャンプ指定地4:30~旭岳5:00~裏旭キャンプ指定地5:20-5:45~間宮岳分岐6:20~北海岳7:00~白雲岳分岐8:05~白雲岳8:30-8:45~白雲岳分岐9:05~白雲岳避難小屋9:35-9:50~高根ヶ原分岐10:45~忠別岳13:20-13:40~忠別岳避難小屋14:40
7/29:忠別岳避難小屋4:10~五色岳5:10~化雲岳6:20~トムラウシ山9:35~コマドリ沢分岐11:55~温泉コース分岐13:55~トムラウシ温泉15:20

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