鍬柄岳南稜~西稜

  • 期間 2023-11-25
  • メンバー L松本(17期)、SL金澤、秋永(42期)、青栁(43期)、吉岡(43期)
  • 記録 秋永

昨年のつづら岩と同様に、秋のマルチピッチ実践山行を企画。群馬県富岡市の鍬柄岳(くわがらだけ)にて南稜登攀、西稜下降を行った。私含め本科生3名は、初めてのアルパインルートだ。
鍬柄岳南稜についてはあまり記録が無いのだが、今回はこちら(⇒ ブログ|みんカラ/2019/11/7 鍬柄山 南稜から西稜下降~!(^^)! )を参考にさせていただいた。

千平駅
高崎駅より上信電鉄に乗り換え、千平(せんだいら)駅に降り立つ。風よけの壁と天井で囲まれたベンチが一つ、完全な無人駅だ。住宅街に伸びるマイナー路線は、味わい深い。
30分ほど歩いて登山口に到着。そこから標高差にして約200m、樹林帯の中を登る。汗ばんだが、稜線に乗ると冷たい風が吹き、一気に冷えた。
鍬柄岳山頂に向かう一般道(鎖場)との分岐を西側に進み、鍬柄岳南稜の基部へ。

登攀開始
あれこれ偵察をし、参考ブログと同じようなルートを探すもなかなか分かりづらい。結果、東寄りの登りやすそうなところから登攀開始。まずは松本さんがリード、続いて秋永がロープを2本引きながらセカンドで登攀。土や砂が滑るが、草を掴みながらよじ登るうちに、すぐに岩の稜線に上がった。

支点構築
岩角に120cmスリングを2本かけて支点構築し、セカンドビレイ。4人が稜線に上がった。今回はロープワークに慣れてリードの経験も積みたいので、ここから二手に分かれた。私は金澤さんとペアを組み、吉岡さん、青栁さん、松本さんのほうは3人組となった。

2P目
2P目は2mほど両側が切れたところを進み、松の木から3mほどクライムダウン。
小ギャップから
小ギャップに降り立つと、目の前にリングボルト二つ、ハーケン一つが現れた。ここで区切ったほうが良いと判断し、支点構築。吉岡さんも追いついた。風がとても強くて寒いのでフードをかぶる。

3P目は金澤さんリード。細い枝にガースヒッチか二重にスリングを巻きつけるなどして中間支点をとっていく。窪みに溜まった落ち葉や砂がいやらしい。滑るし、パラパラと砂や小石が落ちる。より一層、静かに登らねばと気を引き締める。左側の松の木のテラスで区切る。

4P目
4P目、秋永リード。参考にした過去の記録ではここから2Pだが足し合わせると40m程なので、50mロープで登り切れるかもしれない。「ハーケン発見!」とうっかりオヤジギャグを言ってしまうが、気を引き締めて登攀再開。写真の赤線のように、トラバースをして、そのあとは松の木の間を直上していった。だんだんと空がひらけてきて、もしかするとこのまま登り切れるか?とドキドキしていたら、下からも「最後まで行っておいで」と声をかけてもらい、心強い。
木々が豊富なので、60cmや120cmのスリングでこまめに中間支点をとる。救助訓練に合わせて買い足した240cmダイニーマも使いやすかった。残りのアルパインヌンチャクの数がギリギリになってきたけれど、何とかなりそうだ。
トップアウト
夢中で登っているうちに一般登山客の姿が見え、ついにトップアウトした! 辺りは紅葉の絶景で、荒船山まで見渡せる。山頂の松の木の根に支点を作り、セカンドをビレイ。ロープがドラッグし、とても重くなってしまった。

金澤・秋永組
金澤さんと組ませていただくのは、とても貴重な機会。実は机上講習のアフターで、松本さんが何気なくお声がけしてくださったのがきっかけだった。
吉岡
続いて吉岡さん(2P、4Pリード)も終了点に到達。最終ピッチは直上してきたらしい! ロープの流れは良いが、立木が無いため中間支点は岩にスリングを巻くか小枝程度だったようだ。
松本全員集合
松本さん(1P)、青栁さん(3Pリード)も到着し、全員揃った。

さて、計画では大桁山を経て下仁田に向かう(コロムビアというすき焼きの有名店に行きたい!)ことにしていたが、偵察に時間がかかり、また二手に分かれて丁寧に登ってきたこともあって予定を1時間以上過ぎてしまった。縦走は到底無理とすっぱり諦め、西稜下降の後は千平駅に戻ることとした。

西稜の懸垂下降
西稜側に15mほど歩いていくと傾斜が急になり、強固な岩に残置スリングとカラビナを発見。そこから懸垂下降を始めた。枯れ枝が多く、風になびいたロープが引っかかってしまい、それを取りながら降りていく。
西稜の懸垂下降
下から見た様子。ややトラバース気味。こういうときは完全にロープダウンせずに、自分かペアが繰り出しながら降りていくのが良いだろう。
ロープの捌き方
松の木で区切り、ロープの捌き方などを教わる。末端側はスリーフォールデッドオーバーハンドノットだ。
青栁下降
ここにも残置スリングとビナがあった。青栁さんはエイト環で下降。

南稜西側の壁
基部に戻ってから、最初に見送った南稜西側の壁を今一度見直してみる。松の木に向かってトラバースをしていくルートだが、2個ほどハーケンが見つかった。こちらも登れそうだね、しかし朝一番はやはり緊張するよね、等と皆で振り返った。
風は強かったが、雲ひとつ無い晴天に、鮮やかな紅葉。天候とメンバーに恵まれ、アルパインルートのデビュー戦として、素晴らしい一日になった。

<行程>
千平駅8:15~鍬柄岳登山口8:45~南稜基部9:20~鍬柄岳山頂12:30~(西稜下降)~南稜基部15:10~鍬柄岳登山口15:30~千平駅15:55

<所感>
○松本
関東近郊のマルチピッチクライミングの入門に適していて、かつ自分にとっても初めてのところはないかと調べていたところ、ここを見つけました。鍬柄岳の鎖場のある一般登山道は面白いよと勧められてはいましたが、クライミングルートがあることは知りませんでした。
良い意味で、脆い岩と藪、貧弱な支点、上部からの落石注意、落石を起こさない登りとロープ操作、それらを包括する意味での泥臭いクライミングの頂点に値するような本ルートは、常に注意喚起するリーダーの下、初心者にはよい経験になることでしょう。
○青栁
ルートファインディングが自由ではありますが、とても重要な要素であることを再確認出来ました。ポカポカ陽気と紅葉と・・・晴れ男晴れ女に感謝です。
○吉岡
想定より寒く、震えながら鍬柄岳に挑みました。ゲレンデとは違い、ルートの見定め、プロテクション判断などの難しさを感じながら楽しめました。学びあり紅葉もありで、とても充実した一日となりました。
○秋永
今年はスラブの広沢寺や、落石リスクの高いナメラ沢の詰めを経験してきたので、砂や落ち葉が滑るような斜面にじんわりと荷重を移してから立ち上がるという動作ができるようになった。入門編といえど、4Pのうち2Pをリードできたのがとても嬉しい。今後もニッチなルートを見つけて挑戦したい。

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