松木沢ジャンダルム

  • 期間 2025-10-18
  • メンバー L鹿内(42期)、八重樫(42期)
  • 記録 鹿内

ルート内でクラックを経験できる場所はないかなと探していたところ、『関東周辺マルチピッチルート・スーパーガイド』(白山書房)に付箋を貼っていた松木沢ジャンダルムに気づきました。
直上ルートはクラックメインですが、2ピッチ目のクラックがオフィズスなので自信がなく、中央ルンゼから入り4ピッチ目以降で直上ルートを行くことにしました。次の日は応用ステップの赤岩尾根のため、早めに終われるよう前日入りして6時スタート。

特徴的な山容

特徴的な山容


川沿いを40分ほど歩き、白い橋から対岸に渡り踏み跡を辿って少し登ると基部に着きました。
白い橋

白い橋


私たちより少し早いタイミングで別パーティーが直上ルートに取り付いています。そこから20mほど右手の岩に薄く「中央」と書かれてるのが中央ルンゼの取付きです。
中央ルンゼ取付き

中央ルンゼ取付き


○1P:20m 鹿内リード
左から右手に乗り移る箇所は緊張しましたが、フリクションが利いて安心です。しかし直上ルートを登っている先行パーティーからの落石が甚だしく、怖い! 本来は石が来る角度ではないはずですが、多分2ピッチ目のクラックを回避して中央ルンゼ側に寄ってきている感じです。当たったら流血だけでは済まないという大きさの石もヘルメットを掠めて落ちてきたので、なるべく端に寄りながら登りました。ボロボロのリングボルトがあり、ここで1P終了。
※下の写真ではボルトにスリングがひとつ付いているだけの支点に見えますが、これはバックアップで、この下に普通の支点あります。
2ピッチ目

2ピッチ目


○2P:30m 八重樫リード
濡れたルンゼの中央を登ります。とにかく滑って怖いし、スタンスが高い部分もあり緊張しました。そのうえ先行パーティーは結局中央ルンゼコースで登ってしまっており、石を落とすので危険。本来の支点より少し手前でピッチを切り、先方が離れるまで待つことにしました。一箇所手がかりがなく難しいところがありましたが、ありがたいことにお助け紐がかかっていたので躊躇なくそれを掴みました。

○3P:50m 鹿内リード
ガレ場をトラバース気味に、左上にある大バンドに向かいます。難易度は高くありませんがガレガレの上に岩が脆く、一点だけに体重をかけられません。2P目を短く切ってしまったのでロープいっぱいまで登りましたが、わずか数m先の支点に届かず、木で支点を取りました。

○4P:45m 八重樫リード
ようやく直上ルートに合流し、クラックを登ります。

直上ルート

直上ルート


慣れないため四苦八苦。最初が少し怖いですが、その後は手や足があるのでなんとかクリア。
ここで間違いが起きました。トポ上で4P目は30mですが、次の5ピッチ目が50mと記載されています。50mロープで途中足りなくなったら怖いと考えた私が「もし少し余計に登れそうだったら登っていって」と八重樫にお願いしました。5P目の最初はチムニーがありましたが、私の発言でそれを左に回避する形で少し登った木に支点をとりました。これで私たちは本来のルートの右手に行くことができなくなりました。

○5P:25m 鹿内リード → 八重樫に交代
チムニーの左手はクラックになっており一見登れそうに見えたものの、岩が脆くまた手足が遠く、トライしてみましたがかなり危険。また、もう一段上がったあたりにすこしかぶっているクラックがあり、自分には到底登れそうにありません。
諦めてリードをバトンタッチしたものの、八重樫もかなり苦戦。一段上のクラックは特に悪く、一つあったハーケンもボロボロ。カムも不安定で「落ちそうだな・・・落ちたら終わりだな・・・」と言いながら、どうにか上まで登りました。
右手にある岩にカムを複数使って支点にし、ピッチを切りました。フォローで私が登りましたが岩が脆く手足が乏しく、恐ろしく手こずりました。一段上のクラックでは、やむなくハーケンに掛けたアルヌン(アルパインヌンチャク、アルパインクイックドロー)に掴まりながらなんとかクリア。しかし登った先からはどうしてもアルヌンを回収する体勢が取れず、スリングだけ残置。残念ですが、きっとルートを間違った誰かの役に立つ事でしょう(ハーケンもルートを誤った誰かが打ったに違いない)。セルフビレイを取った時には手もパンプし、ヘトヘトの状態でした。おそらくこのピッチで1時間半くらいかかったのではないでしょうか。

○6P:3m 八重樫リード
一息ついてふと上を見ると、手足が豊富そうな岩があと3m程で切れています。その上部は青空が広がっており、左には尾根らしき草付きが見えます。もしかしてもうコブシ岩の上になるのでは・・・いやいや安心するのはまだ早い、などと言いながら八重樫がその岩を越えるとコブシ岩の頂上に着いていたのでした。コブシ岩にて

○下山
無事登れたので、あとは下山だけ。懸垂下降は怖いので歩きで下山する事にしました。まぁ歩きだし、ちゃちゃっと下って帰ろうと気楽にスタートしたら、ビックリするくらい急なガレ場が。下山道も急
時々ピンクテープを発見したので間違ってはいないと思いますが、クライムダウンする場所もあったり、ほとんど崖な場所も(一昨年の自主山行記録にあるフィックスロープは見ませんでした。無くなったのか、違った場所を下りたのか)。ここ下れるの??と20回くらい言いました。懸垂下降の為の支点があちこちにあり、本当に下山道なのか不安に陥る私。なのに八重樫はハーネスもロープもメットもザックにしまっております。足元に気をつけながら下り、手足が遠く私の身長では難しい一箇所だけ懸垂下降しました(八重樫はクライムダウン)。ギア解除しなくて良かった!懸垂下降
橋に着くまでに予想外に時間がかかってしまいました。

松木沢ジャンダルム全容

松木沢ジャンダルム全容


取付きから下山まで、とにかく緊張の連続の山行でした。あとで調べたところ、5P目はやはり正規ルートではありませんでした。同じように登っているログを発見しましたが、最悪のルートで怖いとの記載があります。
大変疲れましたが、とても良い経験になりました。クライミング力が足りないので練習しなくては。なお、翌日夜現在、手、腕、肩、腹筋、お尻、もも、もも裏、ふくらはぎ、全身筋肉痛になりつつあります。

<行程>
銅親水公園駐車場6:00~松木沢中央ルンゼ取付7:10~終了点12:30~車止めゲート14:30~駐車場15:00

<主な装備>
50mロープ×2、カム(各種サイズ)