大峰山脈・大峯奥駈道

  • 期間 2022-05-16~2022-05-20
  • メンバー L田中(35期)、小林英(25期)
  • 記録 小林英

奈良の吉野山熊野三山熊野本宮大社熊野速玉大社熊野那智大社)とを結ぶ大峯奥駈道は、8世紀初めに役行者(えんのぎょうじゃ)が開いたとされる修験の道。その大半は標高千数百メートル級の山々を踏破する起伏に富んだ尾根道で、靡(なびき)と呼ばれる行場は熊野から吉野まで七十五を数える。登山道としてはほぼ全てが一般道(昭文社の山と高原地図・大峰山脈2022年版(以下、昭文社地図と表記)の実線ルート)で技術的な困難は少ないが、一度に歩き通すには時間と体力とを要する。
その道を熊野本宮大社まで下記の4泊5日で踏破する計画を立てた(カッコ内は昭文社地図のコースタイム)。
1日目:吉野駅~二蔵宿小屋(5:35)
2日目:二蔵宿小屋~弥山小屋(14:25)
3日目:弥山小屋~行仙宿山小屋(15:40)
4日目:行仙宿山小屋~七越峰(ビバーク)(14:35)
5日目:七越峰~熊野本宮(1:00)
装備は軽量化とコロナ対策を考え、個人ツェルト、食事はすべて各自、登攀具はスリング長短各1とカラビナ3枚のみとした。計画書に定めは無いが二人ともダブルストックを使用。
結果として距離100km超、累積標高(登り)10000m超を5日間で歩き切ったが、宿泊場所の調整が必要となった。
大峯奥駈道_map大峯奥駈道_graph

■5/16(月) 曇り
昼過ぎ、田中と、吉野に前泊していた小林とが金峯山寺で合流して山行スタート。金峯山寺銅鳥居(かねのとりい)には「発心門」の額が掲げられている。
金峯山寺
車道を一部ショートカットして歩き、吉野水分(みくまり)神社に参拝。さらに車道を進んで「修行門」を潜ると金峯神社で、傍らには義経の隠れ塔がある。神社からの石畳を石の大きな道標に従って山道に入ると愛染の宿の平地。ここから先、最近行われたトレランレース「Kobo Trail 弘法大師の道」(https://kobodaishinomichi.jp/kobotrail/)のコース指示をしばしば見掛けた。旧女人結界の碑を過ぎ、青根ヶ峰(858.1m)、四寸岩山(昭文社地図では「よんすんいわやま」、『日本山名総覧』では「しすんいわやま」。1235.9m)と進む。
その先、昭文社地図の「足摺茶屋跡」には足摺宿の小屋が建っている。行場だが祭壇前の土間に数人は泊まれそうだ。
足摺宿
林道を横切る箇所に「九十丁」(愛染の宿から山上ヶ岳までが二百丁)の石標があり、間もなく百丁の二蔵宿(にぞうのしゅく)小屋に到着。7~8人のガイド山行グループの他に単独男性もおり、小屋内を少し詰めて我々二人分のスペースを作ってもらった。水場は小屋から10分ほどトラバースした先にある。まだ日があり暖かいので屋外のベンチで食事。ガイドグループには女性客もおり、この先の女人結界では男女別に行動するらしい。
二蔵宿小屋

■5/17(火) 曇り一時雨
周囲が寝ている中で静かに食事し、4時に出発。曇り。
昭文社地図には二蔵宿小屋から大天井ヶ岳(おおてんじょうがたけ)を巻いて五番関に至る破線ルートが記されているが、昨日通過した金峯神社に「水場を通過する横駈の道(新道)は、大きく崩落して通行できません」と注意喚起があった。我々はもともと大天井ヶ岳を越えていく計画で、行動用に十分な水を持った。
大天井ヶ岳山頂への急登にはトラロープが付いているが掴むほどのことはない。大天井ヶ岳(1439.0m)から下って行くと五番関(1211m)で、到着時に山伏の白装束姿を見掛けた。ここが現在の女人結界で、大峰山寺による女人禁制の看板が出ている。五番関
トラバース気味に登って行くと、傍らに鉄鍋の掛けられた鍋冠(なべかつぎ)行者堂。堂の中には役行者が修行中に降ってきた火の雨を鍋を被って防いだ像が祀られているそうだ。尾根に上がって今宿跡(1448m)を通過、クサリ付きの岩場を過ぎて緩やかになった道を行くと洞辻(どろつじ)茶屋。茶屋とは言うが小堂や不動明王像などが建つ行場だ。続いて陀羅尼助(だらにすけ)茶屋もある。休日には売店が営業するらしいが、今はどちらも無人。洞辻茶屋
その先で鐘掛岩をショートカットする平成新道(案内板に曰く、階段多し足にくる)が分岐するが、我々は「古来よりの行者道」(案内板)へ。傍らに「大峯修行○○度供養塔」(三十三度など)が多く建つ階段を上がり、岩場をクサリでよじ登ると鐘掛岩を見上げる。さらに階段を登れば眺望の良い岩の上に出られる。鐘掛岩
また階段道を行くと、石柵の中に黒い岩が背を出しているような御亀石。役行者の母が女人禁制の故に亀となったとも、これが亀の頭で尾は熊野本宮大斎原(おおゆのはら)の対岸となる備崎(そなえざき)であるともいう。
等覚(とうがく)門を潜ると間もなく、修験者が岩壁に身を乗り出す修行を行う西の覗岩(のぞきいわ)。高度感が凄い。雨がパラついてきた。西の覗岩
妙覚(みょうがく)門を潜って大峰山寺に参詣。発心・修行・等覚、そして深遠な悟りを意味する妙覚門まで四門を潜ってきても悟りに程遠い我々ではある。無人の境内で休憩中に山頂方向から来たトレイルランナーは土井陵氏で、次のレースに向けて装備の試用とのことだった。山上ヶ岳(1719.4m)山頂には役行者が蔵王権現を現出せしめた湧出岩がある。山上ヶ岳
大峰山寺を後にすると雨は止んだ。緩やかな下り基調で進むと小篠ノ宿(おざさのしゅく)。赤く塗られた行者堂と避難小屋があるが、小屋は戸がなくなりベニヤ板が立てかけてある。沢が流れており、テント泊すると気持ちが良さそうだ。小篠宿
阿弥陀ヶ森分岐で女人結界門を出る。「森」が付くのは樹木がこんもりと茂って神霊が寄りつく山とのことで修験の地に相応しいが、同様の山名は四国に多く文化圏の共通も感じられる。
1550mまで下って登りに転じ、シャクナゲの花に慰められつつ大普賢岳(1780.1m)へ。
弥勒岳を通過し、国見岳は山頂(1655m)を割愛。国見岳から下りる箇所(地形図で岩崖マーク)でクサリやハシゴが連続する。特に難しくはないがストックが邪魔になった。昭文社地図では弥勒岳と国見岳の間に「(クサリ場)薩摩転げ」とあるが、こちらの誤りと思われる。薩摩転げ
鞍部の稚児泊、七つ池で一息つくが、またハシゴ、クサリのキツい登り。七曜岳(昭文社地図では「しちようだけ」、山頂標には「Hichiyodake」とルビ。1584m)は狭い岩の山頂で、折しも日が射して展望が得られた。七曜岳よりの展望
      (左手前:行者還岳、左奥:弥山、右のギザギザ:バリゴヤノ頭)
七曜岳からハシゴで岩場を下り、アップダウンして行くと行者還岳(ぎょうじゃがえりだけ)山頂への分岐。道標に「山頂 0.1km」とあるが実際には300m近く先だった。山頂から分岐に戻って下りていく階段付きの急坂は、熊野から来た役行者が絶壁を前にして引き返したという。その下で水音がしておそらく小屋へ水を引いているパイプが走っているが、「行者雫水」は確認できなかった。行者還避難小屋は快適そうだが「渇水期には滴下するわずかな水しか得られません その水をタンクに貯留して利用しています」と掲示され、水事情は厳しそうだ。また、「行者還トンネル西口登山口付近は工事に伴い通行止め」の注意看板があった。行者還避難小屋
小笹のほぼ平坦な道に一息つき、行者還トンネル東口からの道が合流する一ノ垰(たわ)へ。指導標に「仏教ヶ岳 2時間45分」とあるのは八経ヶ岳のことだ。
進行方向が西に変わり、弁天の森(1600.5m)に上がる。いったん下って聖宝ノ宿(しょうぼうのしゅく)跡から本日最後の登り。ジグザクの山道、階段での弥山小屋(https://www.vill.tenkawa.nara.jp/tourism/spot/5189/)まで標高差約300mがたいへん辛い。
18時半、小屋に到着。素泊り(6000円)の受付をし、水(100円/1L)と缶ビール(500円)を買って、宿泊客の食事の終わった食堂で食事。寝場所は他の客と同じ部屋で、布団も暖かく快適。館内にアンテナがあるのか、消灯時間までスマホが通じた。今日はちょうどコースタイムの14.5時間行動だったが体力・時間的に限界近いので、明日の行程を短縮して持経ノ宿までとする。

■5/18(水) 曇りのち晴れ
弥山(1895m)山頂に上がった後、4時半に小屋を出発。雲はあるが空は明るい。夜が明けてみると下界は雲海に覆われている。
緩やかなアップダウンで近畿地方の最高峰・八経ヶ岳(1915.2m)を踏み、明星ヶ岳(みょうじょうがたけ、1894m)は道なりに山頂を巻く。菊ノ窟遥拝所は気付かずに通過したが、菊ノ窟は場所がはっきりしない、近寄っても探してもいけない魔所だという。禅師ノ森(ぜんのもり)を過ぎて昭文社地図に「崩壊」とある箇所にはクサリが付いていたが、特に問題無く通過した(『熊野、修験の道を往く』に記された重傷滑落事故の現場はここではないかと思う)。
下って行った先の舟ノ垰(地形図1594m付近、昭文社地図では「舟ノ峠」)は、二重山稜ふうに左右が高まった地形を舟に見立てたのだろう。この辺は踏み跡が薄く、ルートを少し探した。ただし、舟ノ垰の石碑・指導標は1594からもう一つ小ピークを越した所にあった。
楊枝ノ森(1693m)を巻き、楊枝ヶ宿小屋で小休止。水場は確認しなかった。仏生ヶ岳の登りにかかって熊剥ぎのある樹を見、山頂(1805.2m)には寄らずに通過。「鳥の水」はちょろちょろと水が落ちていた。鐺(こじり)返しにザックを置いて孔雀岳(1779m)を往復。いつしかすっかり晴れた。道に戻って少し進んだ孔雀ノ覗に立つと、また重畳たる山々。眼下に林立する奇岩群は五百羅漢に見立てられている。孔雀ノ覗
広々とした尾根を進むと一転して出会う岩の裂け目が両部(両峰)分け(昭文社地図では両部分け螺(かい)摺り)。修験道では大峰山系全体を曼陀羅になぞらえ、吉野からここまでを金剛界、ここから熊野までを胎蔵界の曼陀羅に当てはめている。両部分け
岩の下に金剛蔵王権現の祀られた椽(てん)の鼻を過ぎた小ピーク・空鉢岳(くうはちだけ)から眺める釈迦ヶ岳(1799.9m)が大きい。クサリを伝って登るとブロンズ製のお釈迦様が迎えてくれる。釈迦ヶ岳
急傾斜を下りて行き、左手の大岩壁に穴が開いているのが都津門(とつもん)。かつてはこの穴を潜り絶壁を周る「胎内潜り」の修行が行われたが、岩が死んで危険となったため昭和35年(1960)以降中止されているとのこと。都津門
その先の鞍部が深仙ノ宿(じんぜんのしゅく)で、三井寺灌頂堂(かんじょうどう)と小さな避難小屋がある。香精水(こうしょうすい)は岩峰の根元から滴り落ちていた。深仙ノ宿香精水
大日岳の行場は割愛して太古ノ辻(たいこのつじ)へ向かう。明瞭な道なのだが、踏み跡に惑わされて一瞬ルートを外した。
前鬼(ぜんき)への道が分岐する太古ノ辻には、奥駈葉衣会の名で「これより大峯南奥駈道」と記した大きな道標が立っている。大峯奥駈道の南半はかつて荒廃していたが明治期にいったん再興、その後また閉ざされた道を奥駈葉衣会を結成した前田勇一という人物が甦らせた。現在はその志を継ぐ新宮山彦ぐるーぷが小屋を建設・維持したり刈り払いを行うなどして修行者を助けている。信仰を持たない我々がこの道を歩けるのもそういった人たちの活動に負うところ大だ。なにはともあれ、ここまで来ると足元の笹が小さくなり、山容も穏やかになったように感じる。太古ノ辻
次の小ピーク(1521m)が蘇莫岳(そばくさだけorそばくしゃだけ)。大日岳で唱えているのか、お経が聞こえてきた。
低い笹や草の道で天狗山(1537.2m)、奥守岳(1480m)を越えると嫁越峠。地蔵岳(子守岳、1464m)から涅槃岳(1376.2m)へと進む傍らに時折咲いている赤いツツジが美しい。証誠無漏岳(しょうじょうむろだけ、1301m)、阿須迦利岳(あすかりだけ、1251m)のアップダウンにはクサリ場の下りもある。
17時半、持経ノ宿に到着。水場は林道を400m・5~6分行ったところで、沢水をホースで流し台に導いており、水量豊富。この先は水が乏しいのでここで補給せよ、と小屋に掲示があった。本日は泊まり合わせる人もなく無人だったが、行者のサポートに小屋番が入ることもあるらしく居心地が良い。「素泊り一人2000円以上」とある志納箱に喜んで納金させてもらった。持経ノ宿
明日はコースタイム12時間で玉置山(たまきさん)の手前まで進出してビバーク地点を見つけることにする。今日で3日目ともなるとズボンや靴下がペタペタとしてきて、身体を洗いたい、着替えたい。

■5/19(木) 晴れのち曇り
4時過ぎに小屋から出ると、満月を過ぎたものの未だ丸い月が見えた。
林道から山道に入ると持経千年桧不動尊。まだ暗くて千年桧には気づかず、その代り20分ほど進むとミズナラの巨木に出会った。樹林に朝日が射し込む。
平治ノ宿山小屋は小さいが居心地は良さそう。西側へ下る水場は確認しなかったが、案内板に「5分 乾期、水は涸れます」とある。平治ノ宿
転法輪岳(てんぼうりんだけ、1281.5m)、倶利伽羅岳(1252m)を越え、怒田宿(ぬたのしゅく)からジグザグに登って行仙岳(ぎょうぜんだけorぎょうせんだけ、1227.3m)。電波塔のあるおかげか電話が通じた。
下って行った笠捨越(昭文社地図の佐田辻)に建つ行仙宿山小屋も住みやすそうな雰囲気。水場は未確認だが、10分・乾期は涸れるの案内板あり。
送電線鉄塔を過ぎたところに笠捨山を巻いて葛川辻へ出る道(昭文社地図の破線ルート、旧郵便道)の分岐があるが「道荒要注意、上級者向」である。我々は笠捨山へと進み、アップダウンを拾って最後に150mの急な登り。西峰(1352.7m)には金剛童子の石柱とともに神仏習合どころかユダヤの神まで入った道祖神が祀られていて修験道の懐の深さが感じられる。山頂からの下りも急で、熊野から来るとここで「笠でも何でも捨てたくなる」とか。笠捨山
先に分岐した旧郵便道が合流し、葛川辻には「水場 10分」の札あり。ここから香精山(こうしょうやま)まで、昭文社地図の破線ルートとなる。クサリ場で一山越えると岩壁際に槍ヶ岳の石碑が立っていた。そこから息つく間もなくさらに急なクサリ場を木の根、岩角を掴んで上がると、狭い山頂の地蔵岳(1250m)。下りは垂直に近いと思える岩壁だがクサリを掴んで足場を決めれば難しくなかった。槍ヶ岳~地蔵岳の岩場の登下降が今回山行の一番の難所で、ストックはザックに収めておかないと邪魔なばかりか危険でもある。地蔵岳の登り地蔵岳
地蔵岳から下りると歩きやすい道となり、靡が立て続けに現れる。第十四靡・拝返しは熊野から吉野に向かう際に熊野を拝み返す場所で、ようやくゴールが近付いてきたと感じる。香精山(1121.9m)から下って行き進行方向が西寄りに変わる地点(1023m手前)で眼下の斜面を見やると、クマらしき黒い影が樹林に隠れるところだった。道はその斜面から逸れていくが、しばらく意識して熊鈴を鳴らす。高度を一気に下げていく途中、大岩を背にした貝吹野(昭文社地図では1023の手前だが実際は1023と塔ノ谷峠の中間)は行者が法螺貝を吹き鳴らす場所だ。植生も自然林から杉の植林へと変わっていく。
蜘蛛ノ口、稚児ノ森と過ぎると奥駆道が舗装林道と絡むようになり、17時過ぎに玉置山展望台に到着。砂利敷の広場に木造の展望台と東屋、トイレには蛇口付きの天水タンクが付属しておりビバークに好適だ。展望台から西方を望むと山の間に十津川の広い流れや集落が見える。日暮れ前に1台のクルマが風景撮影に入ってきた以外は無人で、静かな一夜を過ごせた。玉置山展望台

■5/20(金) 曇りのち晴れ
4時出発。舗装路脇に「世界遺産」の石碑を見て餓(かつえ)坂で玉置山(1076.8m)へ。修行であれば宝冠ノ森へ往復するのだが、今回はパス。
階段を下りていくと苔むした岩が三つ並ぶ三石社、白石の間に黒石が覗く玉石社があり、これが玉置神社の原点とのこと。夫婦杉、神代杉など周囲の巨樹とも相まって、自然の中に神を感得する精神を垣間見る。社務所横の水場で行動用の水を補給させていただいた。玉置神社
神社を後にして道路に出ると「玉置辻(本宮辻) 林道約400m歩き奥駈道の標あり」の立札が目に入る。舗装路を行くが一向に奥駈道は現れず、昭文社地図を見直すと「未舗装の林道に入る」の注意書きがあった。玉置辻から直ぐの分岐だが、立入禁止ふうにロープが張ってあり考慮外になっていた。戻って未舗装路に入り、下側の水平の道を進むと奥駈道に下りる道標が現れた。今回山行中、ルートを探す場面が2~3度あったが、これが最大のミス。
あとは植林の道で迷うこともなく水呑金剛への分岐を見送り、大森山(1078m)に上がる。また自然林に戻り、きつい下りで第八靡・岸の宿。靡もいよいよ一桁となった(第九は立寄らなかった水呑金剛)。五大尊岳(830m)を過ぎ825mからロープの連続する急斜面を下りきると、不意に視界が開けて熊野川が程近く見えた。熊野川
松茸採取禁止の看板など人里近い雰囲気を感じながら高度を下げていくと道路に出て、その先の広場は丈の低い草地でトイレもありビバークに好適。階段を上った七越峰(ななこしみね、262m)も草地で泊まりやすそうだ。七越峰から下りて、熊野川の広い河原に半島のように突き出しているのが備崎。大峰山寺の手前にあった御亀石を亀の頭とすればここが尾。大峯奥駈など亀の甲羅を歩いた程度のこと、奢るなよと戒めるのだという。
山道の出口はコンクリート護岸の上で、トラロープの付いた階段で河原に下りられる。昭文社地図によればこの付近から対岸の大斎原に渡渉するのだが、浅い箇所が見当たらない。靴を脱いで流れに踏み込んでみると膝を越えてなお深く、その先は腰より上まで浸かりそうだ。ここ数日の天候は悪くなかったので増水していることはないと思いながらも渡渉は諦めることに。備崎橋を渡って国道を行くと頭上の電光掲示板に「ダム放流中」と流れており、この水量に合点がいった。なお、河原には径3cm程度の丸石が多かったが、そこを裸足で歩くのは非常に痛い。渡渉不能
熊野本宮大社に参拝後、本宮保険福祉総合センター内の蘇生の湯(15時開場、210円。石鹸等は備え付けも販売も無し)で五日間の汗を流して生き返った。熊野は小栗判官伝説に見るように蘇(よみがえ)りの地なのである。熊野本宮大社

<行程>
5/16:金峯山寺12:30~青根ヶ峰14:30~四寸岩山16:00~二蔵宿小屋17:00
5/17:二蔵宿小屋4:00~大天井ヶ岳5:20~洞辻茶屋7:30~山上ヶ岳9:00~大普賢岳11:20~七曜岳13:00~行者還岳14:00~一ノ垰15:50~聖宝ノ宿跡17:15~弥山小屋18:30
5/18:弥山小屋4:30~楊枝ヶ宿小屋7:50~釈迦ヶ岳10:40~太古ノ辻12:00~涅槃岳16:00~持経ノ宿小屋17:30
5/19:持経ノ宿小屋4:10~平治ノ宿5:30~行仙岳8:00~笠捨山10:30~地蔵岳11:50~香精山13:10~蜘蛛ノ口15:10~玉置山展望台17:10
5/20:玉置山展望台4:00~玉置山4:40~大森山7:40~五大尊岳9:00~大黒天神岳10:40~吹越峠12:30~備崎(河原)14:00~熊野本宮大社14:50

<参考文献>
藤田庄市『熊野、修験の道を往く 「大峯奥駆」完全踏破』 淡交社、2018(kindle版)

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