八海山

  • 期間 2013-10-13~2013-10-14
  • メンバー L松井(26期)、SL浦野(27期)、保岡(32期)、小林功(32期)、田浦(32期)
  • 記録 田浦

◆1日目(屏風道~八海山避難小屋)
1日目は、ルートについても天候についても、正午頃を境にして前半と後半とに区分できる内容であった。
前半は、曇ってはいたものの、陽光は明るく、ときおり振り返ると魚沼市街地を遠望することができた。登山道を安定したペースで歩いた。

八海山1日目-1 魚沼市遠望

正午頃、にわかにガスが漂い始めた。暫くすると雨が降ってきたため、レインウェアを着用した。ちょうどその辺りから岩稜帯となり、クサリ場やトラバースの連続であった。岩は、ホールドやスタンスが小さいものが少なくなかった。もしクサリが設置されていなかったら、ロープを出す必要があっただろう。トラバースも、足場が狭いうえに脆く、歩行には慎重を要した。屏風道は一般ルートではあるが、意外と緊張を強いられるものだった。実際、このルートでの下山は禁止されている。

八海山1日目-2 トラバース

八海山1日目-3 岩場

稜線の近くまで来たところで晴れ間がのぞき、青い空も姿を見せた。
八海山避難小屋近くの水場は、避難小屋から薬師岳までの道の途中で脇道に入り、3~5分ほど降りていったところにある。しかし脇道の入口が不明瞭であるため、一度は気が付かずに通り過ぎてしまった。また、水量が少なく、容器を満たすのに時間がかかった。

八海山1日目-4 避難小屋近くの水場

避難小屋は2階建てであり、我々は1階に陣取った。1階には他に三名のパーティが1組、単独行の方がお二人、宿をとっていた。夕食は松井さんお手製のキムチ鍋で、美味しい上に、雨の中で冷えた体がよく温まった。浦野さんと保岡さんが担いできたお酒もまわり、朗らかな食卓となった。朗らかといえば、浦野さんとは初めてご一緒したのだが、物静かで堅物ぞろいの無名山塾に、こんなに明朗な方がいたとは、驚きであった。同じ1階に泊まっていた単独行の方が、めがねをかけ、夕食にうどんを食べていたものだから、「めがねうどん」なんてあだ名を勝手につけて面白がっている。こういう他愛のない軽口をたたいて仲間の頭を空っぽにしてくれる方は、貴重な存在だ。浦野さんには是非、今後の山行に頻度高くご参加いただくよう期待したい。
夕食が終わると同時に寝床の準備をして、全員シュラフに潜ってしまった。間もなく、数人の方の鼾の合唱となった。疲れと食事とお酒のために、一気に眠りの底へ落ちたのだろう。1時間もすると鼾はおとなしくなり、朝まで穏やかな寝息が続いていた。皆さんの朝までの様子を、なぜ私が知っているかというと、私の意識は一晩中、覚醒していたからだ。寝苦しく悶々としたわけではないので、意識の半分は眠っていたのかもしれない。眠れないので、シュラフの中でヘッドランプを点けて文庫本の小説を読み始めたら、半分くらいまで進んでしまった。吉川英治の小説「宮本武蔵」の中に、武蔵は鍛錬によって、眠るべき時に即座に眠る技を体得していたと書いてあったように記憶する。どんな鍛錬なのか、知りたいものである。

◆2日目(八海山避難小屋~八ツ峰~阿寺山~ジャバミ沢)
前日とはうってかわってのピーカン。初秋の爽やかな一日であった。
避難小屋から八ツ峰に向かって歩いているつもりが、実は迂回路を歩いていることに、気が付いた。分岐を通り過ぎた記憶はなく、出発点まで戻ることも考えたが、その日の行程の長さを考慮し稜線へのルートを求めて先に進むと、摩利支岳手前の稜線に出る道があった。次の機会に、どこで誤ったのか確認したい。

八海山2日目-1 摩利支岳

八ツ峰での岩の登攀と下降の繰り返しは、一日目と同様、クサリがあるからテンポよく進むことができるものの、油断禁物である。

八海山2日目-2 八ツ峰の岩尾根

八海山2日目-3 大日岳

五竜岳から阿寺山までは長閑な道で、緊張がほぐれた。途中、湖沼がいくつか出現する。一ノ池、神生ノ池、三ノ池、苗場の池と、「山と高原地図」には記載されているが、眼前の湖沼がどれに該当するのか、結局のところ正確には分からなかった。

八海山2日目-4 湖沼

阿寺山のピークの手前には草原が広がっている。ザックを置いて、草原の奥にある小高い丘を、藪をかき分けながら5分程登ると、ピークに到達した。ピークといっても、密生した藪の中に小さい石の標識が、忘れ去られたようにひっそりと埋もれているばかりであった。
阿寺山からジャバミ清水までは、樹林帯の中の急坂を延々と降る。前日の雨で濡れた落ち葉や粘土質の土が非常に滑りやすいため、精神的にも肉体的にも疲労を強いられた。「今日は雨でなくてよかったね」と言い交したものだ。
ジャバミ清水からは沢沿いに歩く。ガレ場を歩いたり、2メートル以上あるススキの群生地を潜り抜けたりと、変化のあるルートであった。

八海山2日目-5 ジャバミ清水

八海山2日目-6 ススキ群生地

竜神碑を過ぎると、ジャバミ沢の水流が顕著になってくる。40分程歩くと堰堤が現れた。堰堤より先のルートファインディングにかなり手間取った。「山と高原地図」によると、登山道の最後の部分は沢の左岸を走り、広堀川河原で林道に合流する。しかし左岸の斜面には踏み跡のある道を見出せなかった。崩落によって消滅したものと思われる。右岸にルートがあるかもしれないと考えて、沢を渡渉して右岸に渡ったが、見つからなかったため、堰堤の上を歩いて左岸に戻った。結局、堰堤に接続する形で左岸に造られている低い堤防の上を下流に向かって歩き、堤防が尽きた地点から少し先に、藪が茂る明るい平地が現れたので、そこに踏み込んでみた。藪をかき分けて少し進むと踏み跡が現れ、間もなく林道に出た。林道を5分程歩くと、広堀川河原に到達した。

八海山2日目-7 竜神碑

八海山2日目-8 堰堤

八海山2日目-9 平地の藪に踏み入る

八海山2日目-10 林道へ出る

◆雑感
八海山という名称は、日本酒のブランドとして最初に知ったが、霊山であることを今回の山行で実感した。「摩利支天」「天照大神」などと彫られた石柱や、神像、祠などが、ルートの各要所にひっそりと置かれていた。昔は修験者が、岩を攀じ登ったり、攀じ降りたりしたのだろうか。現在のような太いクサリが設置されていたわけではないだろうし、登山靴やゴアテックスのレインウェアなどを着用するわけにはいかない。修行とはいえ、大変なことだと思った。いや、大変だからこそ、修行になるのだ。
標高の高いところでは、木々の鮮やかな紅葉が、ガスを透かして幻想的に映った。紅葉の最盛期には一足早かったようである。

八海山2日目-11 摩利支天像

<行程>
◎1日目(10/13)
8:30 JR上越線六日町駅集合。登山口近くの「ペンションわかい」に前夜泊していた浦野さんが車で迎えてくれる。ペンションに車と不要な荷物を置き、8:50 宿のご主人の車で出発→9:10 二合目登山口を出発→10:30 四合目→11:15 五合目→12:10 レインウェアを着用→14:40 八海山避難小屋に到着。
荷物を避難小屋に置き、空身で薬師岳ピークまで歩いていった。所要時間10分程度。薬師岳から避難小屋への帰路の途中で水場に立ち寄り、水を確保した。
◎2日目(10/14)
5:30 避難小屋出発→6:00迂回路を歩いていることに気づく→6:15八ツ峰の岩尾根に出る→6:40 大日岳→7:30 入道岳→8:30 五竜岳→10:30 阿寺山ピーク→12:40 ジャバミ清水→13:40 竜神碑→14:20 堰堤→15:10 ジャバミ沢左岸から藪を抜けて林道へ出る→15:15 広堀川河原(本来の林道への出口)→山口を経て16:20「ペンションわかい」に到着。

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