上越国境縦走  みつまたスキー場~苗場山~白砂山~稲包山~四万温泉

  • 期間 2011-4-29~2011-05-02
  • メンバー L松本善(17期)、鈴木百(25期)
  • 記録 松本(善)

■04/29(金)(曇りのち小雪)
朝発の新幹線で越後湯沢まで。バスに乗り換え三俣下車。みつまたステーションからロープウェイ、リフトと乗り継ぐつもりだったが、スキー板を所持していないとリフトを利用できないことがリフト券売場にて判明。しかたなく、ロープウェイ降車後、徒歩にてみつまたスキー場をひと山越える。
1.かぐらスキー場(ゲレンデ脇をひたすら登る) かぐらスキー場 - ゲレンデ脇をひたすら登る

次のかぐらゴンドラリフト乗場では現金を直接支払って何とか乗車させてもらった。和田小屋より再びゲレンデの横を縫って登る。傾斜が緩むと更に最上部のリフトが遠くに望まれ、なかなかスキー場独特の喧噪を振り切れない。最上部のリフト終点で登山届を出し、ようやくバックカントリーの世界へ。
神楽ヶ峰稜線よりガスが立ち込め視界不良となり、下降でルートを外していることに気付く(この読図ミスには相当落ち込んだ)。
2.神楽ヶ峰山頂(視界不良で進行方向確認中) 神楽ヶ峰山頂 - 視界不良で進行方向確認中

下り過ぎた地点より方向修正し、後から近づいてくる単独行の方に腕を振って正規ルートを指示する。その方は白砂山まで我々と同ルートということであった。苗場山の登りでは、視界の悪さとブッシュの急斜面にロープを出す場面もあり、無理に進まず手前の安定した箇所まで戻ってその日の行動を打ち切ることにした。

■04/30(土)(曇り時々晴れ、のち雨)
昨日の遅れを取り戻すため早めの出発を心がけた。視界は良好。
3.早朝の苗場山手前のテン場より 早朝の苗場山手前のテン場より

昨日の急斜面は下部を少し右にトラバースし、ブッシュの少ない直線的なラインを選んで登り上部の肩に達した。最後の雪面を登りきると、広大な頂上雪原へと抜けた。
4.苗場山頂 苗場山頂

苗場山頂に寄った後、赤倉山へ繋がる尾根に入るため、コンパスの指す方向へと真っ直ぐに進む。無雪期には池塘が点在するため木道に沿って歩かなければならないが、雪原となっている今は気の赴くまま歩けるので快適そのものだ。ただ視界が悪い場合はルートファインディングに難儀することだろう。
本日は佐武流山(2191.5m/本山行中の最高峰)を越えておきたいが、まだ遠目に見えるそれはなかなか近づかない。時折晴れ間が覗く中、赤倉山への尾根筋は読図も面白く(単独の方には申し訳ないが、先にトレースを付けられると読図の面白みが減るので、追いつかれないよう休憩時間を短縮するなどした)、途中、熊と思しき特大サイズの足跡があったりとスリリングだ。
5.佐武流山手前 佐武流山手前

たまに日が射す天気ではあったが、次第に雲が厚くなり、ナラズ山を越えるあたりからポツリポツリと雨が降り始めた。晴れていれば暑く、雨だと冷水の雨粒で、もはや撥水効果のない雨具では雪よりもタチが悪い。寒暖の差が激しいこの時期ならではだ。更に佐武流山に達する前には本降りとなり風も強くなってきた。身体は冷え暖を取りたくなった。ほぼ南北に長い佐武流山の山頂部を越えた先の鞍部にて幕営決定。

■05/01(日)(曇り、風強し)
予定よりわずかに遅れ気味のため、早朝5時出発厳守とした。雨は止んでいたが少々風が強い。事前のリサーチでは本日の行程に1ヶ所痩せた稜線の通過があるらしいが、どうやら赤土居山を越えたあたりがその箇所のようだった。
6.赤土居山付近の痩せ尾根 赤土居山付近の痩せ尾根

ところどころに氷と岩、そして雪稜とのミックスで気は抜けない。ただ微妙ではあるがアイゼンがほしい程ではなかった。パーティー構成によっては装着を指示すべき所だ。沖ノ西沢ノ頭を過ぎ、白砂山が眼前に迫ってくる。稜線がクランク状にくねるあたりでは風が特に強くなり、身体が持ってゆかれそうだ。この辺りから上越国境稜線となるので風の通り道なのだろう。その中、二人組の女性パーティーとすれ違った。彼女らは三国峠から入り、本日が三日目だそうだ。つまりは行程が我々のほぼ逆コースらしいので、おそらく山の嗜好が似ているのだろうと考えてみたりする。
白砂山をピストンし、進路を上越国境の核心部へと取る。
7.白砂山付近(苗場山方面を振り返る) 白砂山付近 - 苗場山方面を振り返る

ここからは二度目のトレースとなるが、前回(2005年GW)より雪の量は多めに感じた。北に遠く佐武流山、その奥に苗場山を望み、辿ってきた道程に満足するが、まだ全行程の半分を過ぎた程度だ。野反湖方面から上がってきたパーティーの姿もあったが、こちらへ向かってくるものは見えない。本日は上ノ倉山付近まで行ければ、明日の下山も確実なものになってくるから先へと急ぐ。上ノ間山から高度を下げると幾分風も弱くなってきた。やはり稜線上部、特に白砂山付近は風の通り道のようだ。
想えば苗場山からルートを南下し続け、白砂山から東へ90度方向を変え、更に上ノ間山から北上に転じると、佐武流山や苗場山が再び近づいてくるという構造的な巡り合わせと遠近差による視覚的な変化は、何か特別な味わいがあるよう感じる。
後半戦、疲労もそこそこ溜まってきた。忠次郎山から上ノ倉山手前の肩付近に地形図と照らし合わせても良さそうなテン場が確認できたので、照準をそこに合わせて本日最後の登高。標高が上がり、風が少々強い場所だが安定地なので良しとする。

■05/02(月)(曇り時々晴れ)
朝から曇りで稜線上は風が強い。視界は良好だ。仮に視界が悪かった場合、大黒ノ頭からムジナ平への下降ラインが幅広の斜面ではルートファインディングに神経を使うことだろう(前回がそうだった)。急斜面は若干クラストしていて緊張感があり、朝スタートからアイゼンを着けようと言った鈴木さんは正解だった。ムジナ平は穏やかであるが、平坦地のため読図を要する。振り返ると上ノ倉山から上ノ間山の稜線が高く聳え、急激に高度を下げたことが窺える。セバトノ頭からは最後のエスケープルートと考えていた苗場スキー場最上部の筍山へのルートを分けるが、見た目には距離がありそうだ。ネットで見た記録に、苗場スキー場に車を置き、世界最長(2011年当時)というドラゴンドラでかぐらスキー場へ移動し、そこから神楽ヶ峰へ向かい、今回のこのルートを経由して筍山へと周回し、苗場スキー場を降るというのがあった。マイカーを利用した計画としてはなかなか面白いと思った。
さて気持ちの良い稜線をしばらく行くと、標高にして1,750mの稜線上から一気に150m程高度を落とす急な斜面が出てくる箇所がある。実はこの箇所、前回の山行でスリップし、滑落停止の動作を取った際に右肩を脱臼したという苦い経験がある場所なのだ〔この時は三坂峠から三国スキー場(現在は閉鎖)へ、この時期リスキーな沢筋を辿りエスケープした〕。この失態は雪質を甘く見ていた自分の油断にある。何時でもどこでも油断大敵だ。その後約1年に亘り岩登り・沢登りなどで亜脱臼を繰り返すようになり、最終的に手術で治すことに決めた…。当時の記憶が蘇る中、脱臼の手術に至らせたこの斜面に対しうらめしく、また懐かしくもあった。
雪稜と笹藪を交互に繰り返しながら三坂峠を過ぎた辺りから、所々登山道が姿を現す。次第に雪稜と登山道という組み合わせになり、円錐形の稲包山へと着いた。
8.稲包山(ここから縦走路を外れる) 稲包山 - ここから縦走路を外れる

彼方に白砂山や苗場山、そして平標山から東に谷川連峰も見渡せる。ここから縦走路を外れ、方向を南の上州側にとると、とたんに雪の量は少なくなり、明瞭な登山道にピッチも上がる。途中、徐々にアウターや中間着等を脱いでゆき、涼しげな恰好となるが荷はそれだけ重くなる。しばらくして稲包山登山口の車道に出た。

<行程>
04/29 みつまたスキー場8:50~和田小屋10:30~神楽ヶ峰12:40~苗場山手前直下幕営15:00
04/30 幕営地5:15~苗場山6:20~赤倉山~ナラズ山~佐武流山14:55~佐武流山を越えた鞍部にて幕営15:10
05/01 幕営地5:00~赤土居山6:40~沖ノ西沢ノ頭~白砂山10:20~上ノ間山~忠次郎山~上ノ倉山手前肩にて幕営15:00
05/02 幕営地~上ノ倉山~セバトノ頭6:30~三坂峠8:30~稲包山10:45~赤沢峠~稲包山登山口13:30~四万温泉

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>