マルチピッチ入門/日和田の岩場

  • 期間 2022-11-13
  • メンバー L木村広(27期)、BU安永(26期)、平(40期)、高橋(41期)、齋藤(41期)、秋永(42期)、鹿内(42期)、八重樫(42期)、中村(42期)
  • 記録 秋永

基本ステップ「マルチピッチ入門」を日和田の岩場にて実施した。
本日の舞台は女岩。下記【1~5】を実践を交えながら学んだ。
日和田・女岩
これまで学んできたロープワークを基礎に、それらを組み合わせて一つひとつの手順の意味を充分に理解することができた。女岩の高度は15m程度で互いに姿も見え声が聞こえるが、本番のルートでは風等の音で遮られることを考えると、ペア間のコミュニケーションが本当に重要だと感じた。復習を重ねていきたい。

~・~・~・~・以下、講習の詳細・~・~・~・~

【1.ビレイステーション】
ビレイアンカーとも言う。
岩場の取付き、もしくは中間地点のテラスにて、2箇所の支点にカラビナをかけ、スリングで流動分散支点を作る。アメリカンデストライアングルに注意。120cmスリングの方が望ましく、マスターポイントの角度が60度以内になるようにする。
支点にはHMSカラビナをかけ、メインロープをクローブヒッチでかけてセルフビレイをとる。
ビレイステーション

【2.リードクライミング】
◆ランニングビレイとアルパインクイックドロー
リードのクライマーが登攀中に適宜作る中間支点のことをランニングビレイという。基本的にはスリングとカラビナ2枚で長さを自由に調整できるアルパインクイックドローを用いる(既成のクイックドローはほとんど使用しない)。そのため個人用に最低限、60cmスリング1組、120cmスリング2組、合計3組を準備しておく。ルートの長さにより必要な分を見積もってペアでギアを共有する。
カラビナとスリング

◆クリップ
(1)フィンガーグリップ:カラビナのゲートが親指側にある場合。親指と人差し指でロープをつまみ、中指でカラビナのブロードエンドを押さえ、クリップする方法。
(2)バックハンドクリップ:カラビナのゲートが小指側にある場合。中指と人差し指を伸ばしてロープに沿わすように持ち、親指でカラビナのスパイン側を押さえ、クリップする方法。
(3)逆クリップ:ロープがカラビナに対して下から上に通らずに上から下に通ってしまい、ロープを引き上げた時にカラビナに巻き付いた状態になること。摩擦が発生しロープを引き上げにくくなるので注意。
逆クリップ

左側が逆クリップ

◆カラビナの設置方法
ゲートが岩側に当たらないようにする。支点の下に岩角などがある場合、カラビナを直接かけるとテコの原理で支点が抜けるリスクが高まるので注意。その場合は支点に通したスリングにカラビナをかける。古いハーケンなどで支点の穴が潰れていてカラビナを直接かけられない場合も同様。小さな穴を通すために、スリングに予め結束バンドを付けておくと良い。
◆手繰り落ち
支点にかける時にロープを手で引き上げるが、その手繰った分だけ落下した際の距離が長くなることに注意。
◆落下率
落下率=H/L
 H=クライマーが落下した距離
 L=ビレイヤーからクライマーまでのロープの長さ
◆ロープドラッグとムーブ
ロープは、基本的に下から上まで真っ直ぐになるよう、ジグザグにならないように中間支点にかけていく。屈曲するほど各支点での摩擦が大きくなり、ロープアップに苦労する。また、水平面だけでなく、岩壁に対して垂直方向の屈曲にも注意する。例えば、テラスなどで岩壁の斜度が変わる箇所も、アルパインクイックドローの長さ調整等により屈曲を避ける。
屈曲したロープ

極端に屈曲したロープ(黄色ハイライト)

【3.ビレイテクニック】
◆ロープの繰り出しと引き戻し
ビレイヤーは、最初の数メートル(グラウンドフォールのリスクがあるうち)は慎重にロープの繰り出しと引き戻しを行う。具体的には、登る動きに合わせてロープを繰り出し、中間支点をかける際に引き戻してテンションを張り、再び登る際に繰り出していく。
◆ビレイヤーの体勢と制動確保
ビレイヤーは常にリードクライマーの動きを注視する。万が一フォールした際に自分が引き上げられる可能性があり、顔面から岩場にぶつかることのないよう注意する。

【4.マルチピッチクライミング】
  ※トップロープのアシストが付いた状態で実施
◆ロープの確認
まずロープをさばき、傷みなど不具合がないか確認する。リードとビレイヤーはハーネスのタイインポイントにエイトノットフォロースルーを結び、互いにアンザイレンする。ビレイヤーは支点にメインロープでセルフをとった後、リードに近い所からロープを取りビレイデバイスにセットする。リードが岩側を向いて立った状態で左右のロープにねじれがないように注意する。入念にパートナーチェックを行う。
◆ゼロピン
最初の支点までの距離が長い場合、グラウンドフォールを防ぐため、リードはビレイステーションにクイックドローなどで最初の支点をかけてから登攀を開始する。
◆登攀手順とコール
(1)支点を構築したら、リードが登攀開始。
(2)登攀中、リードは「張って!」「緩めて!」、ビレイヤーは「ゆっくり!」「ちょっと待って!」など、互いに明確に指示を出す(要求を伝える)。
(3)リードは最初のピッチを登りきったら、まずセルフビレイ。余裕がない場合はランヤードで”とりあえずセルフ”でも良い。支点を構築し、メインロープでセルフビレイをとる(ランヤードではなく最初からメインロープでとれた方が手順は少ない)。セルフがとれたら、フォロワー(セカンドクライマー)に対して「ビレイ解除!」。
(4)フォロワーはビレイデバイスからメインロープを抜き、「解除しました!」。
(5)リードは「ロープアップ」、セルフビレイのロープに振り分けながら引き上げられると良い。フォロワーは下でロープをさばきロープアップを助ける。ロープの残り長さを適宜伝える(残り10メートル、5メートル等)。最後に「ロープいっぱいです」。
(6)リードはマスターポイントに環付カラビナをかけ、そこにビレイデバイスを通してガイドモードでメインロープをセットする。フォロワーをビレイする準備ができたら「登ってください」。フォロワーはセルフビレイを外して支点を回収し、「登ります」で登攀開始。
(7)フォロワーのビレイ中、引き続きロープを振り分けながら引き上げる。
(8)フォロワーが登りきったら、メインロープでセルフビレイをとる。
(9)ギアの受け渡し。落下防止のため、手渡しではなく、支点のスリングに掛けて受け渡すかたちが良い。
(10)つるべ方式で登る場合、ここまでリードを務めた者が次のフォロワーになる。ビレイデバイスをマスターポイントから外し、ボディビレイでセットする。
・・・繰り返し。
フォロワーが登りきった状態

フォロワーが登りきった状態

◆トラバース
トラバースの際、リードはフォロワーのことを考えて屈曲点で中間支点をとるようにする。ダブルロープならば2本それぞれを支点をかける。その際にねじれに注意。

【5.懸垂下降】
◆末端
ラッペルポイント側の上端は、ダブルオーバーハンドベントで結ぶ。
下降点側に落とす下端は、スリーフォールデッドオーバーハンドノットで結ぶ。
◆ロープの投下と繰り出し
様々な方法がある。例えば、コイル巻きでまとめ、2回に分けて支点側から投げる方法。
樹木などに引っかかる恐れのある場合は、肩がけ、スリングにかける、ザック内にしまう等々、状況に応じた様々な方法を採用し、繰り出しながら下降する。
懸垂下降時のロープの扱い

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