剱岳・源次郎尾根

  • 期間 2011-08-12~2011-08-14
  • メンバー L小林英(25期)、SL成瀬(27期)、鈴木広(28期)、佐藤千(29期)
  • 記録 小林(英)

剱沢集中山行のひとつ。小林は剱岳は4度目だが源次郎尾根は未経験、他3人は剱自体が初めて。そんなメンバで岩のひとつひとつに時間がかかり、あるいはルートファインディングに迷って、本番日は何と16時間行動。草臥(くたび)れたが面白い山行だった。
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■8/12(金)
鈴木の運転で明け方に扇沢の無料駐車場に入った。上天気の室堂に上がると大勢の観光客で賑わっている。
身支度して9:30に歩き始め、12:50に剱沢。今回の集中企画中、キャンプ場入りは自分たちがいちばん早い。
14:00 源次郎尾根取付きの偵察に出発。キャンプ場管理棟のホワイトボードを見ると、この1週間ほど連日のように死者が出ている。
小屋前から下りて行き、剱沢雪渓に入るところでアイゼン装着。30分足らず下った平蔵谷との合流地点、取付きの目印になる三角の岩はすぐそこにあった。キャンプ場から約1時間と見極めて偵察完了。

キャンプ場に戻ると既に夕方。食事をしながら、明日の持ち物を指示する。II峰からの懸垂下降用に50mロープ2本、飲料水は大目に、万一のビバーク用にツェルト2張り、ガスとガスヘッドなど。ピッケルはエスケープして雪渓を下る公算が高い場合のみ持つこととする。

■8/13(土)
4:30出発。曇り。すぐに降りそうなら全員ピッケルを持つつもりだったが、この天候なら雪渓下りのエスケープはないと判断。しかし、万一に備えて小林が1本だけ持つことにした。
5:20、源次郎尾根取付き(標高2090m)。登り口には先行が5人ほどいて、そこから上がって樹林に入る手前にも数人の行列が見えている。すぐには動きそうにないので、手前の平坦部でハーネス装着。しかし、雪渓に下りる時にアイゼンとハーネスを同時に着けた方が段取りがよかった。

取付きが空いたので登り始める(5:40)が、すぐに最初の関門でつかえる。胸より高い岩に残置スリングがあるが、そこを上がるのが難しいようだ。3、4パーティが溜まっており、ロープを出す隊もあってなかなか進まない。雪渓を眺めていてもこちらに上がってくるものはなく、自分たちが今日の殿(しんがり)らしい。
ようやく自分たちの番になって岩に向かう。残置スリングを掴み3~4回トライして小林が棚に上がった。あとの3人は小林のお助け紐を利用。ここを突破し、少し上がって踏み跡が平らになった箇所で休憩するまで(6:40)に30分以上を要した。この辺で源次郎尾根の左支稜に乗った感じ。ルートとしてはこの支稜とルンゼとがあるのだが、自分たちはこのまま支稜ルートを行く。

木のトンネルのような急登をよじ登っていくと標高2250m付近の岩場でまた渋滞(7:05)、一段下で待機。見下ろすと、高度は上がっているが雪渓から全然離れていない。上が空いたのでノーロープでトライしたが難しく、結局ロープを使う。中間の二人はプルージックで上がったが少し難しかったようで、ここを抜けるのに1時間以上を要した(8:20)。ロープ使用をもっと素早く判断すべきだった点を反省。先行パーティはもう見えない。
次の岩場は難しくはないのだが、空中に身を晒すので万一踏み外したらそのまま谷に転がり落ちそう。自分が上がったところで木の根からスリングを下ろし、後続はそれをハーネスに連結して上がってきた(8:50)。
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次の少し大きな岩の斜面も怖がりさえしなければ難しくない。途中にハーケンがひとつ、岩の上にも残置スリングがあったので、ロープを出して確保する場合もあるのだろう。雨で岩が濡れている場合などはそうした方がよさそうだ(9:15)。
高度を上げて行き、振り返ると剱沢のキャンプ場が見える。
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一見怖そうだが実際はたいしたことのない短い岩面トラバースの後、草の急斜面を這い上がった標高2550m付近、岩壁の下に出たところでルートに迷う(10:25)。岩にはホールド、スタンスがあって登れるが明瞭な踏み跡はない。岩をトラバースした先の草の斜面が踏まれているように見えたが行ってみると水流の跡。戻って真っ直ぐに岩を上がると、水流の跡に踏み跡が重なっていた。これで30分近くのロス。先行パーティが見えていれば全然問題ないところだが、ルートファインディングもバリエーションルートの楽しみと思うことにする。

11:40ようやくI峰(2709m)に到着、地形図で2700mの等高線が閉じている手前側の端で休憩。岩の上に赤錆びた昔のカラビナが置いてあった。長次郎谷を登下降する人が見え、熊ノ岩にはテント村ができている。

I峰から下り、II峰にかかる。岩とハイマツの間のずいぶんな急傾斜に見えるが、取り付いてみるとそれほどのこともなく頂上部の平らな岩の上に出られた(12:50)。小休止していると無線コールあり、飯干が剱沢に入ったとのこと。
30m懸垂下降の支点はその先にあった。見下ろすと結構高いが、支点はしっかりしていてまず間違いはない。50mロープ2本を連結して下降(13:40)。事前に聞いた話ではこの懸垂下降がハイライトのようだったが、ここに来るまでの方がよほど大変だった。
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あとは歩くだけかと思うとまた岩場。上部は浮石が多く、注意を要する。
いい加減草臥れてガレ場を登っていくと足元に古い空き缶が落ちており、目を上げるとお社の屋根が見えた。剱岳初体験の3人を先に立て、15:40に登頂。この時間ではガスが湧いて周囲は見えず、人もいない。休憩するうち雨模様になってきた。
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普段なら渋滞するカニのヨコバイも独り占め。雨は一瞬だけで岩が濡れるほどのことはなく助かった。平蔵のコルで早月尾根隊と交信。もう17時過ぎで、あちらはかなり出来上がっている。
前剱の手前でガスの切れ間から源次郎のI峰、II峰が覗く。前剱を越え、一服剱の下りでヘッデン点灯、剣山荘の明かりを目指して進む。剣山荘で最後の休憩を取り、剱沢小屋に19:50。受付は暗くなっていたが、奥に声を掛けて缶ビールを出してもらった。
小屋からの坂を上りきってキャンプ場に着いたのは20:20。16時間行動となったが、皆よく頑張った。

■8/14(日)
すっきりと晴れ、朝日で陰影をつけた剱岳が美しい。
鈴木、佐藤は今日から別計画で行動(今日は奥大日岳ピストン)。2名となった源次郎隊は別山から雄山縦走の計画だったが、昨日でお腹一杯なので立山はキャンセル、直接室堂に向かうことにした。
のんびりと7:50に出発し、みくりが池温泉で入浴、食事。室堂山荘を回ってターミナルに12:30。観光客と一緒に扇沢に下った。

<行程>
8/13 室堂ターミナル9:30~別山乗越12:00~剱沢12:50-14:00~源次郎尾根取付き15:40~剱沢17:20
8/14 剱沢4:30~源次郎尾根取付き5:20~I峰11:40~II峰12:50~剣岳15:40~前剱17:50~剣山荘19:20~剱沢20:20
8/15 剱沢7:50~別山乗越8:30~みくりが池温泉10:30-12:00~室堂ターミナル12:30

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