八ヶ岳・阿弥陀岳中央稜

  • 期間 2023-01-21
  • メンバー L松本(17期)、安永(26期)、秋永(42期)
  • 記録 秋永

初めて八ヶ岳を見たときのことを鮮明に覚えている。入会以前の個人山行で、金峰山から瑞牆山への縦走だった。蒼い空のなか、雲海に浮かんだ峰々が朝日にほんのり照らされていた。近くて遠い存在に見えた。山塾に入り講師や先輩たちにお気に入りの山を聞くと、八ヶ岳という回答が多い。季節を問わず数えきれないほど沢山行ったのも八ヶ岳だという話を聞く。

さて今回の山行は、秋の岩トレ(つづら岩)の続編のチャレンジということで企画し、私にとっては厳冬期のバリエーションルートのデビュー戦となった。基本ステップのアイスクライミング講習の前日にしたので、美濃戸口からアプローチできる範囲内でルートを選択。阿弥陀岳中央陵は南陵からの下山に使われるという記録が多いが、登りに使った例はあまり見かけない。猛ラッセルによる時間切れや引き返しも覚悟で、準備を進めた。

ゲストハウス「浮木」
出発は前日の夕方。安永さんカーで毎度おなじみのビートルズを聴きながら茅野に向かう。宿は、古民家をリノベしたゲストハウス「浮木(ふもく)」を予約した。”飲んで泊まれる古民家”という謳い文句・・・3人部屋が一室12,000円とリーズナブル。大部屋があったりプロジェクタも使用できたりと、勉強会兼ねての前泊も良いかもしれない。山ヤにとって魅力たっぷりで、ほろ酔いの松本さんは明日もこのまま居続けたいと言うほど居心地が良かったが・・・気持ちを切り替えて就寝した。

舟山十字路
翌朝、車で舟山十字路へ。東の空が少し明るくなってきたのかぼんやりと八ヶ岳の黒いシルエットが浮かんできた。麓にいるのに、登るという実感が湧かない。舟山十字路駐車場にて装備を整えているうちに空は白んできた。路面は凍結している。さぁ、出発。

阿弥陀岳登攀準備
沢沿いを進むと阿弥陀岳の山頂が顔を出した。樹林帯の先にごつごつとした岩稜帯が見える。今日あそこに登って行くことがまだまだ信じ難い。ほどなくして二俣(1,894m)に到着。アイスクライマー達だろうか、テントが二張りほど。ここで一本とり、アイゼンを装着した。

樹林帯の登り
樹林帯のなかを登る。ここだけはトレースが無かった。右から巻いて登る人が多いようだが、地形図を見たところでは、まっすぐ東に向かって尾根を目指した方が傾斜がキツすぎず、順当だろう。

朝日が差す
尾根筋に登る頃、朝日が差し込んできた。樹々が金色に輝いて美しい。サングラスをかけた。時折後ろを振り返ると、先々週の冬合宿で訪れた入笠山、南アルプスが眼下に。

第一岩峰
第一岩峰に到着。事前勉強のとおり右側をトラバース。本来は岩壁に沿ったルートのようだが、はっきりとしたトレースが一段下についており、不安な局面は無く通過した。ここまでも、このあとも、数日前と思われる先行者のトレースがあった。直近の積雪が無いため、幸いにも足元は安定している。日当たりの良いところは雪が薄く草が露出するほどだ。

第二岩峰
第二岩峰手前で左側にトラバース。そこからが今回で一番集中した登りとなった。ピッケルの扱いをダガーポジションに切り替える。雪が薄く、凍った北側斜面の急登に、しっかりとアイゼンの前爪を刺して登る。

振り返り見る景色
尾根に上がってからは、御小屋尾根の合流地点までたびたび後方の景色を振り返りながら進行した。雪が少なく木々が露出しているからか、それとも残雪期の合宿(特に杓子尾根)を経て肝が据わったのか、周囲の斜面にそれほど怯むことはなかった。

山頂にて
山頂に到着し握手を交わす。見事な快晴で、南北中央アルプス、富士山、360度の景色を望めた。

赤岳
赤岳方面や南陵を観察。手袋を外して写真撮影ができるほど、風も強くない。お二人曰く、「そよ風」「八ヶ岳でこんな天気はあり得ない」とのことだ。今回もお天気の神様に恵まれたことに感謝し、下山路へ。

御小屋尾根の下降御小屋尾根の下降
御小屋尾根では改めて、アイゼンの引っ掛けによる転倒に厳重注意と念を押される。新しめのフィックスロープがあったので、迷わず手を添えながら下降していった。ほどなくして樹林帯に入る。

中央稜を振り返る
たびたび中央稜を振り返ると、二つの岩峰がはっきり見えた。特に第二岩峰の直登部分はそれなりの角度がある。通過したときはたぶん無我夢中だった。

天候も良く別の登山者も居ないことから、2,300m付近で斜度が緩んだころ、歩行練習を兼ねて早めにアイゼンを外した。以降、南面の陽当たりの良い道が凍結しており、転ばないように下るのがなかなか難しい。積雪だからすぐにアイゼン装着というのは間違っているよ、アイゼンが一番効くのは氷に対してだ、という話をようやく理解した。2,000m以下は雪の全くない範囲も増えてきたものの、土壌中に氷が隠れている箇所もあり必要以上に恐れて歩行が遅くなってしまったが、下山は下山で良い修行になった。

下山の道
ほぼ計画通りの10時間行動で、舟山十字路に帰着。八ヶ岳らしからぬお天気に恵まれた部分は大きいが、それでも厳冬期バリエーションルートを無事に歩き通すことができ、達成感が込み上げてきた。これからも、色々なルートに挑戦し八ヶ岳の様々な表情を見てみたい。

<行程>
舟山十字路6:45 ~二俣08:15~第一岩峰基部10:40~第二岩峰基部11:40~阿弥陀岳山頂13:20~御小屋尾根13:50~御小屋山15:30~舟山十字路16:50

<所感>
◯松本
何度足を運んだかわからない八ヶ岳ですが、色々な意味で大好きな山であり大嫌いな山でもあります。今回、北八ヶ岳も含めおよそ5年ぶりで、最後に登ったルートも同じく中央稜でした。前回より雪は少なく天候は穏やか。あまりにも好条件だったため後がこわいです。
◯安永
バリエーションルートとは言え、テープやマーキングが多く、迷う要素は少ないか。積雪量にもよるとは思う。ダガーポジションで登るところあり。
◯秋永
アイゼン・ピッケルでの登下降の基本を確かめることができた。ザック重量は13kgにまとめ、歩荷のおかげか重さを全く感じない範囲。ウールの手袋で四つん這いになったら雪がついて濡れたり、目をこすったらコンタクトレンズがずれたりと、行動にもたついたところがある。今回はほぼ無風快晴だったので問題なかったが、厳冬期の寒さや風雪に耐えられるように、一つ一つの行動を素早く正確にしていきたい。

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