北アルプス・黒部川赤木沢

  • 期間 2022-08-06~2022-08-08
  • メンバー L高橋(41期)、平(40期)
  • 記録 高橋

■8/6(土)
前日の夜行バスで新宿から折立へ。バスには飲み物と耳栓、アイマスク、枕(テント用)を持参。2時間毎にサービスエリアでトイレ休憩。雨の影響が気になる。時間が経過するにつれて周辺アメダスの24時間降水量は減少を続けており、雨が上がって暫く時間が経過していることが判る。渓相から判断するに岩盤が主なので雨が降ってもすぐに沢に排出されると想定しており、水量は多いものの予定通り遡行できるだろうと思っていた。

朝7時前に折立に到着。駐車場は満車であった。バス停付近と折立ヒュッテ脇にそれぞれ水洗の公衆トイレがある。ヒュッテ(営業していなかった)の水道は開放されているが、飲用ではないようだ。自宅で水を汲んでおいて正解だった。行程は太郎平小屋を経由し薬師沢小屋まで。太郎平小屋への登りは五光岩ベンチまで結構な急登で日差しと気温も重なり、疲れた。太郎平小屋で大休止、薬師沢小屋へ。稼いだ高度をぐんぐんと下げて沢筋を目指す。薬師沢中俣に出てからは沢と並走しながら進み、左俣出合を通過してしばらく歩くと薬師沢小屋にようやく到着。小屋番さんに水量を伺うと平常とのこと。テラスでビールを飲みながら黒部川本流の美しさに感動。宿泊客の大半は赤木沢遡行、残りは雲の平方面への縦走のようだ。余談であるが小屋食のお米はとても美味しかった。

■8/7(日)
4:30起床、自炊室で朝食を済ませ、6:40に遡行開始、黒部川本流を遡る。水流も大きいがゴーロも大きい。
地形図ではあまり支沢がないと理解していたが、実際は多数の支沢が流れこんでいる(至近の雨の影響かもしれない)。暫くはゴーロ歩きが続いたが、いよいよへつる時がきた。水深は腰まで。盛夏だというのに、なんと水の冷たいことか! 暫くすると先行のベテラン2人組が徒渉している。先行者をあてにせず、自分の目でへつることができないのか確認。ホールドが乏しい岩、身長を越えるような水深。確かに無理だ。徒渉ルートを平さんと相談。「ひざ下や太もも程度の深さで緩やかな流れ」的なベストルートはない。腰までの深さで流れが極力緩やかなルートを探す。底に大きな岩があれば水深を浅くできる。しかし、途中でランヤードに240cmスリングを接続しフォローしながら徒渉、沢の流れに力強さを感じる。今振り返ると徒渉前にスリングをセットすべきだった。赤木沢出合に近づくにつれて本流の沢幅が狭くなり激流になっていく。ゴウゴウと流れる横をへつるのは少し怖かった。
激流
先行者がスラブのへつりにとても苦労しており不安になる。残置のお助けひもがあるが短い。何とかそれを掴んでスラブを越えていく。体が安定したところでお助けに240cmスリングをかけて平さんに渡してそこを越えた。対岸(左岸)には残置スリングがあったが、そこをへつるのはかなり厳しそう。右岸をルート選択してよかった。少し歩くとついに赤木沢出合直前の魚止めの滝が現れた。先行者は泳いで赤木沢方面に向かっている。僕らは魚止めの滝の落ち口のフリクションを確認、落ち口の上をスタスタ歩いて左岸に向かい、赤木沢に入った。薬師沢小屋から赤木沢出合まではコースタイム1時間とあるが実際は1時間半程度を要した。また、徒渉や腰までのへつりで結構体力を消耗した。高巻きは2箇所。赤木沢に入るといきなり沢底が赤い美しいナメが続き、その先に3段20m滝が姿を見せている。
 赤木沢出合付近
登攀するとナメ滝が先に待っている。草付きも高山植物が咲いており美しい。
ナメ滝
3段25m滝は1段目を登り2段目は左岸の草付きを高巻いた。エメラルドグリーンの淵が美しい。
3段25m滝
次々と美しい景観が惜しげもなく現れて本当に感動。
2段15m滝
だいぶ疲れてきたなと思っていると巨大な滝が現れる、35m大滝だ。左岸の涸れたルンゼを高巻くようだが、取り付き付近はガレガレで落石必須と判断。先頭の高橋はルンゼ脇の踏み跡を辿る。少し登ればガレは落ち着くのでそのままルンゼを直登すれば良かったが、踏み跡にこだわって登った結果、上部で草付きを少しトラバースする羽目に。沢靴が滑るので気持ちのいいものではなかった。次に笹藪へルートをとるが、入口が2箇所ある。ふたりで相談して上方の入口から入ったが直ぐに踏み跡を見失い、猛烈な藪漕ぎとなった。暫く頑張ったが、ルンゼまで戻ることにした。戻っていると以前に追い抜いたベテラン組のひとりが我々のルートを辿っており、藪の中で再会。するともう一人が「おーい、こっちだよ!」とどこからか声が。ルンゼに戻り下方の入口を辿ると何の苦労もなく大滝の落ち口に出た。ベテラン組に感謝。そもそも人気の沢で踏み跡が薄いはずがない。踏み跡を見失った際に直ぐに戻るべきだったかもしれない。
大滝落ち口
大滝を越えると渓相は穏やかになっていく。
5m滝
迷わないようにコンパスを中の俣乗越に合わせて進む。二俣が何度も現れるがコンパスと自分たちの読図技術を信じて左俣か右俣か選択していく。源頭部から振り返ると山並みが雄大だ。
源頭部より薬師岳方面
ついに水は途切れて広大な草付きを進む。先には小さな雪渓が。雪渓を回避して登山道に出ると中の俣乗越の道標が脇にあった。
雪渓
そこで沢装備を解除し太郎平小屋を目指すが、疲れた私たちにはかなり長い道のりだった。途中でTJARの土井選手とすれ違う。北ノ俣岳から太郎山の間で広大なお花畑が広がっていた。
お花畑
大滝は登れないが、殆どの滝はロープを出さずに登ることができる。本流遡行と大滝の高巻きが核心かもしれない。

■8/8(月)
朝食後、小屋前のベンチでモーニングコーヒーを飲むことにした。
朝の太郎平小屋から
ベンチにTJARの選手たちが休憩しており一般登山者と気軽に会話していたので、私も声をかけてみた。本科生であり参加選手でもある駿谷選手は未だ後ろか?と。するとスマホで選手の現在地を確認していた登山者から「駿谷選手は既にこちらを通過して現在、北ノ俣岳です」。え、ニアミスじゃないか!!! 思いっきりでかい声で応援しようと思ったのに(笑) 直接応援できなかった後悔の念は暫く心に残ってしまった。今日はゆっくりと折立まで下山するはずだったが、途中で平さんが超特急で下りはじめ、結果して今日もくたびれてしまった。

<行程>
8/6:折立7:40~三角点9:10~五光岩ベンチ11:00~太郎平小屋12:00-12:30~薬師沢小屋14:30
8/7:薬師沢小屋6:40~赤木沢出合8:00~中ノ俣乗越12:20~太郎平小屋16:10
8/8:太郎平小屋7:15~折立10:20

<所感>
○平
黒部川本流の徒渉が核心だった。3~4回、深さ腰くらいまで。先行者のおかげで徒渉ポイントの見当がつき、かなり助けられたと思う。赤木沢に入ってからは、水量が減り、楽しい滝登りだった。
○高橋
登山を始めた頃に知って以来、憧れていた黒部川赤木沢。遂にその夢が実現した。あまりの美しさに、反って景観等については殆ど覚えていない(泣) 本流では無駄に高巻きをせずにへつりや徒渉で対処できたのは自信と経験になった。天気といい、渓相といい、山容といい、素晴らしい山行だった。

<参考:降水量(アメダス)>
猪谷  :8/3 8.5mm  8/4 29.5mm  8/5 0mm  8/6 1.5mm
立山芦峅:8/3 2.5mm  8/4 27.0mm  8/5 0mm  8/6 22mm
※赤木沢に関しては立山芦峅より猪谷の方が参考になるかもしれない(前日に猪谷で22mmも降ると8/7の遡行は困難だったのではないか)

北アルプス・黒部川赤木沢” への2件のコメント

  1. 太郎平小屋は朝4:00頃の通過でした。北アルプスでは、立山の登りからずっと、他の選手から離れた一人旅だったので、知っている人に会いたかったです笑。でも、お二人の近くを通ることでパワーをもらったはずです。
    赤木沢、いつか行きたいです。

  2. ニアミスでホントに残念。千載一遇の機会なのに。完走された駿谷さんにただ脱帽。お疲れさまです。
    赤木沢、是非。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>