北アルプス・横尾尾根

  • 期間 2019-05-02~2019-05-04
  • メンバー L鈴木百(25期)、保岡(32期)、宇田川(34期)、田中(35期)
  • 記録 田中

横尾尾根は横尾山荘付近から南岳に向けてせりあがり、穂高岳と常念岳の中間に位置する長大な尾根だ。その稜線上、森林限界を超えたP4(2,323m)からは左に奥穂高岳、北穂高岳、右に常念岳、蝶ヶ岳が眺望できる。そこにはこの尾根縦走の思いもかけない素晴らしさがあった。天候に恵まれた一方、下山時に雪の状態が悪くて行程が遅れて予定外の一泊となったが、それもまた最良の選択を引き当てた。

■5/1 雨
毎日アルプス号で上高地まで行く。夜行バスでも3列シートだったので快適だった。

■5/2 晴れ
5時過ぎに上高地に到着。天候は晴れで風強し。6時出発。横尾山荘までは長い林道歩きだ。同じところばかりに力がかかるので足の裏が痛くなる。いつもの山際の道は落石が多いので川沿いに新しい道ができている。8時半に横尾山荘に到着。GW前半の天候が思わしくなかったからか人出が多い。小休止して9時過ぎに横尾大橋を渡り、涸沢への山道に入った。
涸沢方向へ1,750m付近北側の3ガリーを探しながら登る。1時間半後の11時に3ガリー取付きを発見したが、その前の1,727mピーク以降尾根に乗れそうな場所は多々あった。今の時期はやぶ漕ぎになりそうだが積雪期はここから取り付くのだろう。
01-3ガリー(5月2日朝)
  3ガリー
3ガリーは急登で今回の全体を通して体力的時間的な核心だった。雪は安定していて登りやすかった。1,900m付近でガリーはP3を挟んで二又に分かれており、左はデブリや落石が多く危険だったので右を選択。さらなる急登に目がくらむ。2,000m付近でハングしたクラックを越えるためにロープを出した。2,100m付近では水流で雪が薄くなり始め、さらに前方の大岩をまくために右方向に転じて、やぶを漕いで尾根に出ようとした。大岩のちょうど右端に出たがもろい岩質で登れそうになく、懸垂1ピッチで戻った。やぶ漕ぎにあれだけ苦労したのに25mしか登っていなかったのか! 結局、対岸までフィックスロープを張ってトラバースした。大岩を左から巻いて気の遠くなるような急登のすえ、痩せ尾根でテン場を探し、16:20に落ち着いた。

■5/3 晴れ
2:30起床、4:30出発。食事、排便、テント撤収、パッキングを短時間に進めるのも技術だ。昨日は10時間行動だったが今日はそれ以上にハードになりそう。P4の急登と横尾の歯が核心だ。P3からP4は樹林の痩せ尾根通しに行く。コルに出るとガリーからの踏みあとがあった。3ガリーを左に詰めるとこちらに出るので、雪の状態が良ければこれが正解。
いよいよ、P4の急登。木の根を手掛かりにほとんど垂直に思える壁をよじ登って行く。朝早いので雪が締まっているのでピッケルが良く利く。森林限界上の稜線に出るとP5、P6までの緩やかな雪稜が迎えてくれる。P6からは横尾の歯と呼ばれる岩場になる。
02-P6からP7へ横尾の歯(5月3日昼)
  P6からP7へ横尾の歯

1P Ⅲ 30m ランナー4つ
ほぼトラバースでバランシー。詰めのところで岩の間を通る箇所が手がなく悪かった。終了点は木を使ったが良く見るとハーケンもあった。

2P Ⅲ- 15m ランナー3つ
岩を一登りしてピークでピッチを切った。Ⅱ級かもしれない。

3P Ⅲ- 30m ランナー5つ
ピークから4mくらい下ってから登り返す。登りは雪がついていたのでピッケル、アイゼンを利かせて快適に。最後にバランシーなトラバースがあり、終了。

横尾の歯はクライミング経験者には問題ないし、怖さもなかった。全体的にはスリップしたら停められそうにないナイフリッジや雪稜の下降の方がよほど怖かった。横尾の歯からP7までは緩やかな雪稜。テン場を探して槍ヶ岳正面の最適地を発見した。
03-P7の幕営地(5月3日夕)

■5/4 晴れ
本日も2:30起床、4:30出発。雪稜をP8へ。雪が締まっていてアイゼンが良く利き歩きやすいが、その分スリップしたら停められないので命懸けだ。P7からP8の間が一番怖かった。
04-P7からP8への怖い雪稜(5月4日朝)
  P7からP8
P8を越え、切り立った雪面をよじ登って天狗のコルに出た。あと200m登れば南岳の肩に出る。最後の力を振り絞って高度を上げる。好天の下、気持ち良く稜線に出られた。
天狗のコルからの観察では緩やかに見えた大喰岳までのルートだが、稜線に立ってみると100m程度の起伏がありそうだ。南岳の肩に出るまでに力を使ってしまったので渋々スタートする。するとバチが当たったのか、いきなり梯子の下降が出てきた。自分はこのコースを数回歩いているがこんなところに梯子があったかしら。しかも梯子に至る前に短いが急な下りがあり、スリップすると遥か槍沢まで翔べそうな気がしたので、早々にバックステップに切り替えた。梯子は二つあって思い出したくない思いをした。
05-南岳から大喰岳へ
  怖い梯子/南岳の肩
大喰岳にはバックカントリースキーの3人パーティーがいた。無線機やピッケルなど山やさんとほぼ同じ装備だし、話を聞いていると訓練も積んでいるようだ。我々は少しでも早く帰京できそうな飛騨沢から下降することにした。上高地は18時にゲートが閉まってしまうからだ。しかし、槍平小屋までは順調だったものの、それ以降白出沢まではデブリが多く、ひとりずつ抜けたり待機したりで時間がかかり、新穂高温泉到着は19:30となった。
結局、新穂高温泉からのバス、さらに松本からのあずさがなくなり、紆余曲折の末に新島々のゲストハウス「しましま」に宿泊して、祝杯を挙げた。

<行程>
5/2 上高地6:00~横尾8:30-9:00~3ガリー10:30-11:00~P3(C1)16:20
5/3 C1 4:30~P4 8:30~P5 11:00~P6 12:30~P7(C2)15:30
5/4 C2 4:30~P8 5:30~天狗のコル6:00-6:30~南岳の肩9:20~大喰岳11:00~新穂高温泉19:30

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