笊ヶ岳・ランカン尾根

  • 期間 2018-12-30~2019-01-01
  • メンバー L小林英(25期)、金澤、田中(35期)
  • 記録 田中、小林英

好天に恵まれたことに加え、ラッセル前提だった雪量も2300m付近までほぼゼロ、それ以降も深くて膝程度で、快適な山行だった。雪の少なさは痛し痒しであるが。
ランカン尾根はp1828.4までの急登、大ギャップ、最後の鞍部を越えてから小笊への急登という三段構成だった。笊ヶ岳は360度パノラマで北岳から光岳まで南アルプスのすべての峰々を一望。布引山から見た初日の出と富士山の並びは縁起が良かったが、その後の猛烈な下りで心と膝が折れた。広河原について力を抜いたが、実はその先が今回の核心なのだった。

■12/29(土)
JR身延駅から早川町営バスに乗車、大島バス停で乗合タクシー(要予約)に接続し、部活帰りの女子高生と雨畑までの山間の道を行く。バスは運賃600円+手荷物料金200円、タクシーは200円と安い。今日の宿、ヴィラ雨畑は山と湖の間の隙間に建てられた元小中学校で、体育館に名残が感じられる他は建て替えられて宿泊施設になっている。カウンターにはここが登場するコミック『ゆるキャン△』が置かれていた。1泊2食付で7500円、夕食のメインデッシュは竹輪と牛蒡の鍋でとてもヘルシーだった。別棟の温泉は風情のある構えだ。

■12/30(日)晴れ
ランカン尾根へのアプローチは、戸屋地区から長い林道をなぞって大金山付近から取り付くのと、老平地区の硯の里キャンプ場から西北西~北向きの尾根を経由する2ルートが選べる。前者は緩やかに高度を稼げる反面林道歩きが長い。我々は急登の後者を選択した。
弁当にしてもらったヴィラの朝食を食べ、6時過ぎに出立。1時間弱で人気(ひとけ)のないキャンプ場に到着し、装備を整える。空身で取付き場所を探索、遊具の奥に杣道を発見し、7:10に620m地点から登り始め。気温-3℃、雪は全くないものの急傾斜で、積もった落葉に足を取られて非常に登りづらい。
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広葉樹林帯を落葉を踏みながら900mジャンクションまで登り、広い尾根の針葉樹林帯手前で休憩。静けさの中にキツツキの音、サルの声を聞く。ここから進路は北に向いていく。植林帯に入ると多数の杉が切ったままに放置され、ひどく歩きにくい。ネットで読んだ記録に「モチベーションが下がるエリア」と解説されていた通りだ。木々を跨ぎ、くぐりながら登っていくと傾斜は緩むが、次はお馴染みシャクナゲの藪漕ぎ帯になった。藪を突破し、1125地点で休憩。
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登山の目印の少ないルートで、1220mで初めて赤テープを見る。戸屋地区からのルートとの合流を示すものだろう。ここまでは伐採された杉に薄いながらも藪が被ってルートが見えにくかったが、スッキリと落葉した樹林となって歩きやすくなる。赤テープが増えたのは、ランカン尾根は戸屋地区側から登るのがメインということか。
1300m付近で恩賜林の火災注意の看板を見るとふたたび100mほど急登。大金山への尾根が合流する1400m付近で西に変針し、切れた尾根をトラバースするようにあるかないかの微かな踏み跡を行く。先ほどのエリアは伐採放置された木々が鬱陶しかったが今度は自然な倒木が道を遮る。12:30にp1828.4に到着。ネットの記録通り、三角点標石の傍らに「静大WV」の看板が横たわっていた。
この前後は緩やかな傾斜で、p1948の手前には泊まって焚火した跡もあった。事前調査でルート中最大の核心部と考えた大ギャップはp1828.4とp1948の間のはずだが、鞍部を越えてもそれらしいところはなかった。もしかして気づかぬうちに迂回ルートを取ったのか・・・と安心しかけたのも束の間、p1948を前にしてそれは唐突に現れた。足元から急斜面で落ちるギャップを隔てて岩壁が立ち上がっている。ギャップの最低部までクライムダウンし、倒木をくぐって岩壁の基部に至る。雪が着いていればこの時点でロープを出しているところだ。基部から観察すると、岩の左側面のバンドを辿ってから折り返して木を掴めば上に抜けられそうだが、冬装備の重荷に振られれば転落しかねない。バンドを慎重に上がってみると、向きを変える箇所でホールドに乏しく足を置く場所が決まらない。ここは空中に伸びている木の幹を踏んで乗り切るきわどいクライミングで、どうやら岩の上に出られた。p1948で一息入れる。
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次の小ピークに登る1950m付近でようやく谷間の日陰に雪を認めるが、尾根上で白いのはせいぜいが溶け残った霜程度。この登りもまた急で、雪山装備を担いで登るのは一体何の修行か・・・ 小ピークで再度休憩し、ようやく本日の幕営予定地p2125に到着したのは15時過ぎだった。さすがにこの高度になると、日陰の地面に薄く取り残されたような雪が見られた。テントを張った近くの窪地から枯葉だらけの雪を集める。いったん凍っているため意外と多くの水を作れて助かった。
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ここをベースに笊ヶ岳ピストンの計画だったが、全体に急登の上に大ギャップを通過してきた往路を戻るのは避け、笊ヶ岳から布引山経由で老平に戻る縦走への変更を決定(もともとエスケープルートとして計画していた)。ただ、この時点では老平から布引山への登りの方が一層の急登であることには気づいていない。

■12/31(月)晴れ
テントをたたんで6:30に出発。気温-10℃。
p2125から尾根はほぼ真西に向かって小笊から笊ヶ岳へと突き上げていく。まずはスタート直後50mの急降下からの急上昇。降下するところで地面が凍っていたため初めてアイゼンを着け、シャクナゲ混じりの低木の藪をかき分けルートを探して下降していく。この鞍部前後は地形図上で崖マークで、最低部からは右にルートをとり、キレットをトラバースぎみに上昇する。人が通れるくらい広くなったところで尾根に上がり、見晴らしがよくなる。p2261を踏んで鞍部に下りると、あとは小笊までひたすら登りだ。
ここからの登りには岩場も出てくる。雪は薄くまだらに着いている程度で立ち木も掴めるので技術的な困難はないが、なにしろ荷が重いので息が切れる。
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この登りにかかるところで、獣の影を見た。一瞬だったので判然としないが、黒く小型でずんぐりした印象。フレッシュではないが熊らしい糞や足跡、樹幹に刻まれた爪痕なども見かけたので、冬眠していない若熊がいるのかもしれない。あるいはカモシカだったか。
2300m付近から足元が一様に雪で覆われるようになり、黙々と高度を上げるのに従って次第に深くなる。正面に迫る小笊はまさに立ちはだかるかの如し。
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トレース皆無の雪に足跡を付け、やせ尾根を通過して小笊への登りにかかる。これまでで一番と思える急登の後、小笊(2620m)登頂。場所によって膝まで潜る程度のラッセルとなった。笊ヶ岳は目前だが、写真を撮り景色を眺め、しばし休憩。
雪から顔を出したハイマツを踏んで、小笊の頂から50m下降。意外と細い尾根で、アイゼンを引っ掛けたりすれば転落もありうる。トレースが付いていたのは最近笊ヶ岳から往復したものらしい。鞍部から60m上昇して、12:40 笊ヶ岳(2629.4)に登頂。昭文社地図に展望マークの付いている通りの絶景ポイントだった。北の顕著な三角は北岳、そこから間ノ岳、農鳥と続き、広い山容は塩見岳だろうか。荒川、赤石と展開し、聖は東尾根が目立つ。茶臼から奥の方に光岳まで、南アルプスオールスターが一望できる。小笊の向こうには富士山。時間に余裕があればここにテントを張りたいくらいだ。
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後ろ髪を引かれつつも山頂を後にし、再び樹林帯に入る。15時までに幕営地を決める予定で歩き、結果的に14時過ぎに布引山までのちょうど中間地点、2500m付近に適地を見出した。ここには雪もたっぷりある。夕食は年越し蕎麦、ラジオで紅白を少し聴いて就寝。

■1/1(火)晴れ
4時起床予定が何故か誰もアラームに気づかず20分寝坊し、6:30に出発。気温-13℃。できることなら布引山頂で日の出をと急いだが、樹林越しの初日の出となった。そこからもう少し登った山頂手前の2570m地点で眺望が開け、富士山と並ぶ朝日を拝むことができた。
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布引山(2584.1)山頂は南北に長く、もう少し歩いて山頂標に到着。南アに共通の立派な木柱には2583.7mとある。
山頂からわずかに進んで青薙山へのルートを分けるとガレの縁に始まって尾根伝いの急降下となる。ここ2~3日よりも古そうな足跡が途切れ途切れに残っていた。一気に高度を下げ、p2021(桧横手山)手前の鞍部でアイゼンを外した。その先も延々と続く急降下は、一般登山道だけに迷うことはないものの相当に厳しい。ましてやここを登るのは日本アルプス三大急登などよりキツイだろう。山の神を過ぎ広河原を目前にしてつづら折れの登山道が崩落している箇所があり、ロープを出してゴボウで下りた。広河原には12時過ぎ。布引山頂から1500mの下降である。
登山道は広河原で沢を横切るが、水量が多くテープの付いた箇所は靴を濡らさずには渡れない。少し下流で石伝いに行ける箇所を見つけて道に戻る。そこからは沢沿いに、場所によっては下の廊下のように切り立ったトラバース道が続く。全ルートを通して、実はここが核心だった。岩壁から滴る水が凍って多数の氷柱が頭上に下がり、しかも岩壁に日があたってその氷柱がキラキラと光りながら道に降り積もる様子が見える。景色としては美しいが大きな氷柱の直撃を受けたらどうなることか。それが一箇所ではなく、岩壁沿いの狭い凍った道の下は崖、足を滑らせたらリカバリの手段がない一歩を先頭で踏み出すのは、アイゼンを着け直しても非常に怖かった。その他、トラバース道が急峻な沢を横断している箇所に架かった橋の多くが落石で破壊されている。代替のハシゴが設置してあればましで、それ以外は橋の片側の枠を伝ったり、橋の下のザレた斜面を慎重に通過したり。高巻き用に橋の上の岩斜面に固定ロープを張った箇所もあったが、ロープが古くてささくれている上に岩も脆く、ホールドを探ったらかなり大きな塊が落ちた。這う這うの態とはこのことで、吊橋(これは一人ずつ普通に通行できた)を渡って廃屋を通過し、林道に出たときは本当に安堵した。
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老平まで戻ってみると、ルート入口に「落石・橋倒壊のため通行禁止」と出ている。夏の登山シーズンまでには修理するらしい。集落は静かなお正月を迎えていた。我々もヴィラ雨畑で入浴して生き返った。

<行程>
12/30 ヴィラ雨畑6:10~硯の里キャンプ場6:50-7:10~1220m(戸屋地区からのルートと合流)9:50~p1828.4 12:30~大ギャップ13:25-13:50~p2125(泊)15:10
12/31 p2125 6:00~p2261 8:10~小笊11:50-12:05~笊ヶ岳12:40-13:05~2500m(泊)14:10
1/1 2500m6:30~布引山7:50-8:00~p2021(桧横手山)9:50~広河原12:10-12:30~林道終点14:10~ヴィラ雨畑15:00

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