奥秩父・白泰山~南天山

  • 期間 2018-10-06~2018-10-08
  • メンバー L小林英(25期)、田中(35期)
  • 記録 小林、田中

南アルプス深南部を予定していたが、9/30に上陸した台風24号の爪痕で林道が通行止めとなり、登山口までの深夜バスが出発前日にキャンセルに。続けて発生した台風25号を勘案し、影響の少ない奥秩父に転進した。十文字峠道を分け入り、十文字峠から三国峠を越えて滝谷山まで北上、そこから東進して南天山までのルート。結果、台風の影響は少なかったし、藪あり、岩ありで楽しいルートであった。中津川バス停から西武秩父駅に行き、温泉に浸かってご機嫌で帰路に就いた。奥秩父最高です。

■10/6(土) 曇り、樹林帯は蒸し暑い、稜線は風強し
埼玉県は東西に長い。埼玉と長野の県境を歩む旅のため、鉄道終点の三峰口駅からバスで川又まで40分、埼玉県最西端まで来た。
川又バス停にはきれいなトイレがあり、水も取れる。我々の他に下車した3名は沢ルートで柳避難小屋を目指すとのこと。我々は十文字峠道と呼ばれる尾根ルートを利用する。
十文字峠道は武州栃本関所から国境稜線を越えて信州梓山に至る。武州側は奥秩父最奥部の長大な尾根を辿る難路。古くから開かれた道で、往時は三峯参詣や善光寺詣に利用され、幕末には5基(うち4基が武州側)の里程観音が建てられた。

川又から栃本に向かう車道を20分ほど歩き、「右ハ信州道 左ハ川又ヲ経て甲○(判読不能だが甲府であろう)」とある道標から峠道へ上がるショートカットに入る(地図ではこの入口がよく判らず何度が行き来した)。峠道が林道を離れる箇所には先ほどのものと同時期の道標が倒れている。大正11年に大滝村青年団が勅諭下賜四十年紀念(年数からすると「勅諭」は明治15年の軍人勅諭)として建てたものだ。山道を10分ほど登ると両面神社に出た。三峯神社の姉妹宮だそうで狛犬はオオカミである。古来、山道の入口には山仕事や峠越えの安全を祈願する神社が置かれたといい、この道の歴史を感じる。神社から少し上がると東屋があり、そこからトラバース道が続いて林道に絡むと白泰山線登山道入口。広々しており10台程度の駐車が可能である。バス停から登山口まで2時間近くかかり結構長い。
峠道はほとんど南面のトラバース道で靴の片側が減りそうなくらいに長かった。炭焼き跡など見ながら緩やかに高度を上げ、登山道入口から1時間で一里観音。その後、12名の団体がコンビニ弁当を使っているところに出会った。高校生の集団に先生2名のように見えたがなんと東大生。ここは東大の演習林なのだった。
白泰山山頂分岐にはザックがひとつデポしてあった。我々も標高差100m登って山頂(1794.1m)へ。登りながら踏み跡が薄いと思ったら、分岐に戻る際にロストして少々時間を喰った。しっかりした道が別にあったのかもしれないが踏み跡が錯綜して分かりづらい。
1_一里観音     一里観音              白泰山山頂分岐

一里観音から2時間強かかって15時に二里観音&白泰山避難小屋。ここの「のぞき岩」は高度感がある。
3_のぞき岩のぞき岩

道なりに歩くと岩ドヤは南面を、赤沢山は北面を巻いた。赤沢山の西側に「鍾乳洞入口」の指導標があり、確かに足元には白い石灰岩が転がっているが、周囲を見渡しても洞窟は見当たらない。既に16時半、計画では十文字峠まで進む予定だったが、今夜は四里観音避難小屋に泊ることとする。三里観音を経て四里観音の小屋へ入ったのは18:40。白泰山分岐にザックを置いていた男性が先に入っていた。
小屋前に「水場2分」の札が出ているが、行ってみると沢への斜面が荒れておりかなり危ない。慎重に下りてみるが滴る程度の流れで、暗い中をその先の本流までは行けなかった。滴りを少し汲んで戻り、今夜の食事は手持ちの水で賄うことにする。尾西のご飯、ハンバーグ、卵焼き、わかめスープの食事をとり焼酎とウィスキーで疲れを癒した。

山と高原地図(昭文社)のコースタイムは栃本関所跡から四里観音避難小屋まで7時間50分。起点が異なるが我々は1時間余分に掛かっている。台風のためか根こそぎになっている倒木なども多く、ルート上にはこれが一般道?と思われるほど荒れている箇所もある。コースタイムも厳し目なので、トレースする方はスケジュールに余裕を見た方がよい。

■10/7(日) 爽快な晴れ、強風(やがて止む)
明るくなってから改めて朝食用の水汲み。昨夜より手前で道から下り、流量の多い滴り(暗い中では気づかなった)を選ぶ。ラーメンと魚肉ソーセージの朝食の後、小屋を出た。今日は長丁場、かつ、バリエーションルートにかかるので身が引き締まる。
間もなく、MTBを担いで下ってきた男性二人組に出会った。全然乗れないと言っていたが、彼らがバイクを担ぐのに使っていたベルトをアドベンチャーレースのイーストウインドに教えてあげたい。「マチマチ、担ぎ易いグッズが出てるよ!」
四里観音、栃本分岐を経て十文字峠へ。水場は小屋からカモシカ展望台の方へ下った沢で、明日までの行動と炊事分を持たなければならないので重い。
三国峠へと埼玉長野県境を辿って北上する道は十文字山(2072.1m)に上がった後、下り基調の稜線となる。台風の余波か長野側からの風が強いが、上天気なので心地よい。稜線はところどころ岩稜帯となり、立ち塞がる岩峰はまず弁慶岩、次に梓白岩が現れ、どちらも長野側を巻く。峠からここまで2時間強。地図のコースタイムは1:45で、やはり厳し目だ。シャクナゲのトンネルもあるが、さすがに一般道なので藪漕ぎにはならない。悪石の三角点(1850.0m)を通過、無線中継の巨大なアンテナ施設を横に見て三国峠にはちょうど昼に到着。オフロードバイクのライダーが一人いた。峠を挟んで長野側は里が近いのに対し埼玉側は秩父の山が深く、ここを越える林道の長野側は舗装、埼玉側はダート(砂利道)となっている。

三国峠のトイレ脇を入り、三国山(1834m)までは30分足らず。
ここからいよいよバリエーションルート。地形図を睨んで北側に伸びる尾根に少し入ると、木の幹に「←高天原 一本カラマツ→」の札が付いていた。高天原も一本カラマツも未知であるが、コンパスを合わせて「一本カラマツ」の示す北へ進む(注)。
4_三国山     三国山からの眺望         一本カラマツ分岐

赤テープは付いているが、次第にシャクナゲがうるさくなり、岩場以外は藪漕ぎとなる。シャクナゲは反発が強く体力を消耗する上に顔面をバシバシ打たれて心も折れる。Ⅱ級程度の岩場をいくつか越えて棒切ノ頭(1730m)へ。樹幹に打ち付けられた山名標を見て、それなりの距離を稼いだつもりが藪漕ぎに距離感が狂っていたことを覚り、ガックリとなる。
尾根が東に曲がっていった先の1620m地点で北に進路変更すべきところをそのまま東の尾根を下りそうになり、30分ほどもルートを探す。標石に加えて枝にテープの付いた箇所から左(北)に入るのが正解だったが、ここも藪がルートを隠していて判りにくい(だからテープを付けてある訳だが)。計画では滝谷山泊だったが既に15時、暗くなるとさらにルートロスの恐れも高まり、計画通りの前進は無理だ。行動終了目安を16時とし、この先で1500m等高線が閉じている付近にテントを張れるかと見当をつけて進む。
目標地点手前まで来ると、小ピークへの登りではなく岩壁の基部だった。15:40、これ以上進んでも適地があるか分からないので、岩の手前、やや狭いが平坦な稜線部分にテント設営。踏み跡の真上だが、この時間に通る人もいないだろう。物音に「人か?」と見ると鹿が走って行く。テントに入って落ち着き、雑炊で食事、焼酎とウイスキーで夜が更けてゆく。疲れを癒して、遅れは明日取り戻そう。

■10/8(月・祝) 霧、一時雨
予定より手前で水場もない場所に泊まったので、パンとコーヒーで節水朝食。
今日も長丁場なので薄暗いうちからスタートしたが、岩を巻いたところ(1500m等高線の閉じた内部)でいきなり迷い、20分ほどロス。何度もコンパスを確認した後、「こちらから来た」と思っていた方角に道を見つけた。大岩を巻いたことで方向感覚が狂ったのか。その先、1520mのやせ尾根では踏み跡を辿って行き詰まり、下に見えているルートへ懸垂下降。ガク沢ノ頭(1618.6m)で藪に隠れた三角点標石を確認する。
昨日と同じく岩とシャクナゲの藪漕ぎを繰り返し、出発から4時間、9:20に滝谷山(1659m)に到着してがっちり握手。ガスで眺望は無いが嬉しい。

しかし、下りのバリエーションルートは難しいという。実際その通りで、滝谷山から南天山まで基本的に尾根ルートの認識でいたところが大いに迷った。
まず、南東の尾根を下りたのは正しいのだが、踏み跡を辿って行き詰る。地形図から急な下りであることは分かっているが、南天山からの逆ルートを来た記録があるので、登り返せないほどの斜面であるはずはない。40分も右往左往した挙句、尾根を外すのは不可と敬遠していた右手(南)の谷状へ下りていく道を発見。それもすぐに踏み跡か水流跡か不明瞭になるのだが、コンパスを併用して何とか辿っていくと、谷状から尾根に戻り、方角も合ってきた。この辺り、滝谷山を巻いてしまう踏み跡も錯綜しているようだ。
ともかく方角は合っているので、時折見失いそうになる踏み跡を追っていく。途中、ついに降り出したので雨具を着け、樹林帯の倒木を潜りまた乗り越え、シャクナゲを突破し、ポキポキと折れる枯れ笹をかき分ける。延々とトラバースし、ようやく藪が切れて尾根に出たのは1562mピークの南だった。思ったほどには進んでいないし、またトラバースして東向きの尾根に乗らなければならない。
1562mの東からは尾根上を歩けるようになった。1538mの先、1470m辺りで北の尾根に引き込まれたのを修正。その後、東に直進してやせ尾根の先でまた行き詰る。方角は合っており下りられないこともないが、道と見えていたものが途切れて人の痕跡がない。ここもまた標石とテープのあった箇所まで戻ると、やせ尾根を避けてトラバースするルートが見つかった。
そこから俄然歩きやすくなり、立入禁止テープの張られた南天山沢コースの突端、1374mの西に出たのは13:40。テープは、南天山からこちら側への安易な立入を戒めるものだ。ここから山頂を踏んでいては中津川からの終バスに間に合わないため南天山は割愛。雨は止んだので雨具を脱ぎ、九十九折れとへつりの下降路を林道まで駆け下りる。しかしこの沢ルート、ナメや滝が美しいが足を滑らせたらそのまま滝へ落ち込みそうな箇所もあり、一般道としては危険な印象。

今回は登山道のない三国山~帳付山の前半を歩いた。次回は南天山を踏んでから後半を狙うことにしよう。

注:帰宅後に確認したところ、「高天原」は西の尾根の1978.8m三角点の山。「一本カラマツ」は1985年8月の日航機墜落事故の際、機が接触した稜線上の木のことらしい。この指導標自体が登山用ではなく、事故の関連現場への案内用の可能性もある。ただ、一本カラマツの位置は「三国山の北北西1.4km、標高1530m地点」との記載もあり、そうするとこの指導標の示す尾根(おおよそ北北東へ向かう)上とは思えず、よく判らない。いずれにせよ、事故関連と知っていたら手の一つも合わせておくのだった。

<行程>
10/6 川又バス停9:50~白泰山登山口11:50~一里観音12:50~白泰山14:20~白泰山避難小屋・二里観音15:00~三里観音16:50~四里観音避難小屋18:40
10/7 四里観音避難小屋6:40~十文字峠7:40-8:10~十文字山8:30~梓白岩10:10~三国峠12:00~三国山12:30-12:45~棒切ノ頭(1730m)14:10~大岩前(1530m)幕営地15:40
10/8 大岩前5:10~ガク沢ノ頭(1618.6m)6:40-6:55~滝谷山9:20-9:30~1532mピーク南11:10-11:20~南天山沢コース突端13:40~鎌倉橋14:40~中津川バス停15:20

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