剱岳・源次郎尾根

  • 期間 2017-08-10
  • メンバー L保岡(32期)、小林功(32期)、宇田川(34期)、田中(35期)
  • 記録 田中

昨年は雪不足で雪渓が悪くて中止した源次郎尾根に今年も挑戦した。今年は雪も多く、天候も安定していた。メンバーの力量にも一年間の積み重ねがあり、目的を果たせた。

剱沢キャンプ場から剱澤小屋の横を通り、剱沢に下降する。どこから雪渓に乗るかを探りながら夏道を行く。先行パーティが雪渓を歩いていたが雪渓が切れて水流になっている箇所にあたり、夏道に上がりアイゼンを外していた。雪渓を歩けば早いがアイゼンの着け外しはロスだし、落石などのため雪渓にはリスクがあるので、行けるところまで夏道を行くことにした。
夏道がなくなったところから雪渓に下りた。sekkei

後ろからの落石に注意しながら雪渓を下降すると昨年の偵察で見覚えのある三角岩が見えたので、雪渓を横断し取付きの踏み跡をたどった。sankakuiwafumiato

最初の岩で先行パーティがロープを出していたので待機した。最初の岩は昨日の台風の影響で水が滴っており、いやな感じであった。田中が挑戦するも手掛かりが悪く、はがされて危うく滑落するところだったのでこちらもロープを出した。宇田川さんがリードでクリアし、続く3名を確保してくれた。

源次郎尾根に取付いたわけであるがこのルートを4つに分けて説明する。

1.取付きからルンゼルート分岐
正直、木の根登り。斜度が大きい。両手を使ってよじ登る感じである。源次郎尾根を剱沢キャンプ場から遠目で見たとき、「こんな斜度のところを登れるのか?」と思った通りの厳しい斜度である。技術よりも体力勝負な区間である。kinobori

2.ルンゼルート分岐から第一峰
標高が上がり、樹木が減り、這松や藪が多くなる。右に折れるとルンゼルート。ルンゼルートは落石のリスクが高いので左の尾根ルートを選択するといきなり壁が現れた。
左端の木を頼りに3手ほどでよじ登る。続いてすぐ倍くらいの壁が出てくる。下方が切れていて、覗くと、おそらくフィックスロープだったものが落ちていた。ロープを出し、保岡さんがリードし、3名が続いた。この壁は今までネットの記録で見たことがなかった。
rope2

壁の後は痩せ尾根の登りが続く。before1

ルンゼルートとの合流地点にお花畑のテラスがあり、ザックを下ろして一本取る。goryu

ここからいやなトラバースがあり、慎重に渡ってすぐに3手ほどのフリー壁がある。水と苔でいやな感じの壁を(小林)功さんがフリーで登り、お助け5mロープをセットしてくれた。その上は20mくらいの藪のトンネルを這いつくばりながら抜けるとまた尾根の登り。延々と登ると岩峰に出た。

3.第一峰から第二峰
岩峰では皆の高度計は2650m。第一峰は2709m。まだまだと思っていたがここが第一峰だった。先行者が次の岩峰にいたので一本取った。ここでの風景が絶品。北アルプスが一望できた。また、八ツ峰、熊の岩のテン場なども見えて次のステップに思いをはせた。kitaalps

第二峰までは100mくらいの急な下降と這松につかまりながらの上昇があり、遠目には悪いように見えたが、やってみるとそれほどでもない行程だった。

4.第二峰から山頂
懸垂点で先行者を20分ほど待ち、30mロープ2本をセットした。田中、保岡、小林、宇田川の順に懸垂下降した。ロープは結束せず、2本別々にフィッシャーマンズノットにしたところ、これが良い手であることが実体験で分かった。田中が下で確保していたのだがロープが予想以上によじれくるくる回っている。下部を結束していたらキンクするくらいのよじれだ。2本別々にしていたのでそれぞれに回転しうまくほぐれていた。
下降点からは尾根が広がっていて踏み跡が多く、また、ガスっていて頂上が見えなかったのでルーファイが難しく、コンパスを使いながら進んだ。after2

痩せ尾根、つづら折り、階段状の登り、いやなトラバースなどを経て、頂上にたどり着いた。summit

<メンバー所感>
■保岡
源次郎尾根を山の関係者に聞いてみたりネットの記録を読んでみると第二峰からの『30m懸垂以外特にロープを出すような場所は無し』と言う記録を目にしますが、実際に登ってみると台風通過後ということもあって岩場が濡れ足場がぬかるみ、2グレード位上に感じました。取付きすぐの背丈より少し高い岩場も私がリードした3m位の岩場もロープを出し慎重に登りました。
記録に載っていない場所が案外難しく感じました。天候次第ではガチャ関係もしっかり持って行った方が良いと痛感いたしました。
私自身が軽い高山病にかかり頭痛と吐き気に悩まさせながらの登山でした。
山は当日の自分のコンディションや山の状況でグレードが変わってくるのだ!と痛感したこの経験を今後の山行に活かしていければと思います。
最後に両足の靴底が剥がれるアクシデントもチームの皆さんにフォローしていただき感謝いたします。

■小林
このメンバーでの山行は天気に恵まれることが多く、今回も好天。 昨年の雪不足から一年越しの源次郎からの劔登頂となった。 二峰からの懸垂下降以外でロープを出す箇所は無いと聞いていたが、取り付いてすぐと、一峰までの途中でロープを出す箇所が有り、予想外で楽しめた。
このメンバーで一年間いろいろな山行をし技術力とチーム力が向上した。今回の源次郎からの登頂はこのメンバーだからできたと思う。メンバーに心から感謝。いつか源次郎から見た八ツ峰に一緒にトライをしたい。

■宇田川
2日目の朝から高山病の気配で体調が優れず出発を遅らして頂きありがとうございます。寝ている時よりも歩き出してからの方が体調が良くなり何とか参加できて良かったです。
持っていったロープが30m×2だったこともあり、ロープを出す出さないなどの判断も柔軟に行えたように思う。
個人的には尾根に上がるまでの枝尾根部分がルートファインディングなど気を使う部分が多かったかと。
体調が悪い中合わせて頂き感謝です。

■田中
ウェットな状態、一手も間違えられないので精神的にナーバスになった。山塾の先輩方のおかげで体力や技術的には何とかなったと思う。難しい箇所を登って上から見ると巻道がみえたり、ルートファインディングがまだまだだった。
一番の核心部は「カニの横這い」だった。鎖がなかったらロープが欲しい箇所だった。
2年足らずで随分経験させてもらったことを諸先輩に感謝いたします。kani

<行程>
剱沢キャンプ場4:00~雪渓取付き5:00~源次郎尾根取付き5:20~ルンゼルート合流8:00~第一峰9:28~第二峰10:20~懸垂点10:30~山頂12:13-13:00~剣山荘15:20

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