北岳バットレス第4尾根

  • 期間 2010-09-20~2010-09-22
  • メンバー 木村広、二見
  • 記録 木村広

(1日目)
 9:30甲府駅改札集合、10:00発のバスで広河原へ。広河原に到着し、北岳を仰ぎ見る。個人的な予測では、日本北部に停滞前線がある影響で、北岳は雲の中であると予想していたが、山頂付近ははっきりと目視できた。この天候が、明日も続いてくれれば良いなと思う。
 12:25広河原出発。15:00白根御池小屋着。北岳山頂は雲の中に隠れてしまっていた。すぐに夕食を取って就寝。
02 白根御池小屋
(2日目)  1:30起床。上空はガスに覆われていて、時折小雨が降る。これでは、岩は濡れている可能性があると心配する。天候の様子を見ていたため、3:00出発予定のところを3:30出発となる。ガスと暗闇のため、c沢出合を少し通り越してしまうが、c沢の僅かな流水の音を確認し、5:00バットレス沢を確認。夜が明けて、ガスが上空へと移動して、辺りを目視できる状態になってから、尾根を登る。草が濡れているため、レインウェアのパンツを履く。 04 バットレス沢出合
(バットレス沢出合) 05 bガリー大滝クラック取付点
(bガリー大滝クラック取付点)  6:00bガリー大滝取付着。先月あったスノーブリッジはなくなっている。 06 bガリー大滝1ピッチ目
クライミングシューズ以外の登攀具を身に付け、クラックのルートの1ピッチ目を二見さんリードで登る。短いピッチで、ほぼ直線のラインだ。2ピッチ目を木村リードで登る。残置支点はほとんど無いが、途中、左にルートを取ると残置支点がいくつか現れる。岩は濡れている部分があり、草付き部分はびっしょり濡れていて、登山靴もアプローチの過程で濡れていたので、登るのは難しい。終了点は緩傾斜帯となっていて、ハーケンが多数打ち込んである。 08 踏み後 (bガリー大滝終了点から)
 ロープをザックにしまって、明瞭な踏み跡を辿る。途中、踏み跡は右へ分岐するが、松の幹が踏み台になっているルートへ直進する。ネットの情報によれば、どちらにルートをとってもcガリーに辿り着くとのこと。ここは松の幹の強度を確かめてから直進するか、安全を期するなら、右にルートを取ったほうが良いかもしれない。さらに踏み跡を進むと、cガリー左岸に着く。 09 cガリー右岸 上赤矢印
cガリーを少し遡行すると、右岸に赤い上矢印が現れる。ネットの情報では、ここを左にトラバースしていくと、ルンゼに行き着き、ロープなしで第4尾根取付まで行けるとあったので、そのルートを探す。見つからないため、さらに少しcガリーを遡行して、右岸に赤い文字らしきものを見つける。ここから左にある踏み跡を進むのが、一般的なルートとなるのであろう。 11 踏み跡先の赤4の字
踏み跡を進むと、赤く4と書いてある岩壁に導かれる。この先の岩を登ることになるのだが、その岩は、右壁との間にクラックがあるスラブで、起点右壁にセルフビレイ用の支点があり、上部には潅木がある。この潅木をビレイポイントにできるかもしれない。このスラブには苔がついていて、ホールドには傾斜があり、ルート上に残置支点は無く、びっしょりと濡れているため、容易に滑落しそうに見える。これは登りたくないと思ったので、再度、先ほどのロープ無しで行けるルートを探しに行く。ここで、時間を大幅に浪費する。結局、二見さんがこのスラブを登るとの不屈の意思を表示したため、二見さんリードで登る。クライミングシューズを履き、右クラックにカムを3つセットし、さらに岩壁中央部にハーケン1本を打ち込んで突破。ここを抜けるとさらに明瞭な踏み跡が続き、第4尾根取り付き点に導かれる。  10:00第4尾根登攀開始。開始時間が遅くなったことが心配になる。第4尾根のリード担当は以下の通り。 1、3、5、6´ピッチ:木村 2、4、6、7ピッチ:二見 ※上記の記号「´」はダッシュ。便宜上6´ピッチと呼ぶこととする。 12 1ピッチ目
13 1ピッチ目
1ピッチ目 クラックを登り、フェースを進む。相変わらず、草付きは濡れている。 2ピッチ目 フェースを直上し、壁右側を進む。 3ピッチ目 クラックを登り、第1コルへ。このコルは、コルと言うよりは、むしろテラス言ったほうが分かり易いと思える。凹んでいるようには見えない。 4ピッチ目 尾根の右側を進み、垂壁のある第2コルへ。このピッチはとても短い。 5ピッチ目 トポではここの垂壁が核心部とされている。その垂壁を登り、露出感のあるリッジ上を進み、マッチ箱のコルへ。 リッジの頂点と、その手前に、懸垂下降の支点が計2箇所ある。1本のロープはザックに入れて、手前の支点を使用して約10m懸垂下降。降りた場所から少し登ったところにある1本のリングボルトと、右クラックにセットしたカムで確保点を構築する。 6ピッチ目 クラックを進み、左フェースを登り、最後に短いクラックを登る。 トポでは、このピッチと次に記述する6´ピッチ目を合わせて1ピッチ50mとしているが、念のため、30mでピッチを切った。 14 枯れ木テラスから
6´ピッチ目 右のラインはスラブ状のカンテⅤ-となっているため、易しい左ルートへトラバースしていく。枯れ木テラスでピッチを切る。 7ピッチ目 正面のバルジを登って進むと、足元に大きな溝が現れる。右に溝が狭くなっている場所があり、それを跨いで渡り、スラブを右方向に登っていく。ハイマツを支点としてセカンドをビレイする。ここでスラブを右方向に登っていくのはトポのルートとは異なり、トポでは、バルジを登ったあと、左へルートを取ることになっている。トポ通りに進めば、終了点にはしっかりとしたプロテクションが打ち込まれているのだろう。ただし、左方向がどうなっているか分からないが、右方向はとても易しいルートだった。 15 富士山 (終了点から)
(富士山) 16 鳳凰三山 (終了点から)
(鳳凰三山)  16:40終了点。ロープとカム類をザックに入れて、それ以外の登攀具は念のため装備したまま、傾斜の緩い岩場を登っていく。この岩場は、登山靴で十分対応可能だろうと思われる。岩場を越えて、明瞭な踏み跡に出たところで、ヘルメット以外の登攀具をザックに入れる。ここから急登となり、疲れが体に応える。 17 北岳山頂
18 仙丈ケ岳 (北岳山頂から)
(仙丈ケ岳)  17:15北岳山頂到着。握手した後、2人同時に三角点に触る。マッチ箱から懸垂下降を始める頃にガスが消えたため、絶景を楽しむことができた。すばらしい眺望に、登頂の感動もひとしおだった。 23 北岳山頂 記念撮影
 記念撮影をしてすぐに下山開始。草スベリルートを目指す。日が沈み、ヘッドランプを点ける。右俣方面と小太郎山方面の分岐点で、岩に赤い左右の矢印がある。これに惑わされて、左にルートを取る。登山道は広くて明瞭で、方角は白根御池小屋に向かっているため、このルートが正しいルートだと思いながら進むが、途中からハイマツ帯に覆われてしまう。踏み跡は次第になくなって、藪漕ぎの状態となったため、分岐点まで引き返す。分岐点で辺りを偵察すると、右方向に木の立派な階段が整備されている。これが正しいルートだと分かる。ここからは疲労との闘いとなる。  20:40白根御池小屋テント場到着。疲れた。二見さん即就寝。疲れた体に鞭を打って食事を取り、22:30就寝。 (3日目)  6:30起床。北岳の空は晴れ。今日登ればよかったと思ったのも束の間、瞬く間にバットレスはガスの中となる。やはり、南下してくる停滞前線が影響しているのだろうか。前線が通過するまでは好天は望めないのかもしれない。食事を取った後、広河原へ向かって8:10下山開始。9:55広河原到着。運良く乗り合いタクシーに乗ることが出来て、甲府駅までは11:10頃に到着。11:29の特急かいじに乗る。無事下山となった。 [行程] 1日目 広河原(12:25)~白根御池小屋(15:00) 2日目 白根御池小屋(3:30)~バットレス沢出合(5:00)~bガリー大滝取付(6:00)~第4尾根取付(10:00)~終了点(16:40)~北岳山頂(17:15)~白根御池小屋(20:40) 3日目 白根御池小屋(8:10)~広河原(9:55) [所感]  北岳バットレス第4尾根のアプローチから登攀までの全体を通して見た場合の核心部は、登攀の難易度では、5ピッチ目の垂壁だと思いますが、個人的には、第4尾根取付き手前のスラブにあると思いました。ガスで日の光がさえぎられた中、支点が無く、苔が付いた濡れ岩は、進む意欲を大きく削ぎました。正直もう帰りたくなりましたが、二見さんのおかげで突破することが出来ました。沢靴であれば良いのに、と思えるような岩でしたが、それを乗り越える二見さんの意思の強さと登攀技術には敬服いたします。  山頂からの下山時に、二俣方面と小太郎山方面の分岐点で道を誤ったのは痛恨のミスでした。暗闇と疲労とで判断力が低下したのかもしれません。分岐点までの登り返しは非常に疲れました。  bガリー大滝取付から山頂までは、ルートを誤ることは無かったので、その点は良かったと思います。好天に恵まれていて、ルート上の岩がすべて乾いていれば、所要時間はもっと短く出来たと思います。最後の7ピッチ目のルート取りは多少の問題はあるものの、易しいルートを選んだ点で許容範囲だと思います。

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