北アルプス・横尾尾根

横尾尾根は横尾山荘付近から南岳に向けてせりあがり、穂高岳と常念岳の中間に位置する長大な尾根だ。その稜線上、森林限界を超えたP4(2,323m)からは左に奥穂高岳、北穂高岳、右に常念岳、蝶ヶ岳が眺望できる。そこにはこの尾根縦走の思いもかけない素晴らしさがあった。天候に恵まれた一方、下山時に雪の状態が悪くて行程が遅れて予定外の一泊となったが、それもまた最良の選択を引き当てた。

■5/1 雨
毎日アルプス号で上高地まで行く。夜行バスでも3列シートだったので快適だった。

■5/2 晴れ
5時過ぎに上高地に到着。天候は晴れで風強し。6時出発。横尾山荘までは長い林道歩きだ。同じところばかりに力がかかるので足の裏が痛くなる。いつもの山際の道は落石が多いので川沿いに新しい道ができている。8時半に横尾山荘に到着。GW前半の天候が思わしくなかったからか人出が多い。小休止して9時過ぎに横尾大橋を渡り、涸沢への山道に入った。
涸沢方向へ1,750m付近北側の3ガリーを探しながら登る。1時間半後の11時に3ガリー取付きを発見したが、その前の1,727mピーク以降尾根に乗れそうな場所は多々あった。今の時期はやぶ漕ぎになりそうだが積雪期はここから取り付くのだろう。
01-3ガリー(5月2日朝)
  3ガリー
3ガリーは急登で今回の全体を通して体力的時間的な核心だった。雪は安定していて登りやすかった。1,900m付近でガリーはP3を挟んで二又に分かれており、左はデブリや落石が多く危険だったので右を選択。さらなる急登に目がくらむ。2,000m付近でハングしたクラックを越えるためにロープを出した。2,100m付近では水流で雪が薄くなり始め、さらに前方の大岩をまくために右方向に転じて、やぶを漕いで尾根に出ようとした。大岩のちょうど右端に出たがもろい岩質で登れそうになく、懸垂1ピッチで戻った。やぶ漕ぎにあれだけ苦労したのに25mしか登っていなかったのか! 結局、対岸までフィックスロープを張ってトラバースした。大岩を左から巻いて気の遠くなるような急登のすえ、痩せ尾根でテン場を探し、16:20に落ち着いた。

■5/3 晴れ
2:30起床、4:30出発。食事、排便、テント撤収、パッキングを短時間に進めるのも技術だ。昨日は10時間行動だったが今日はそれ以上にハードになりそう。P4の急登と横尾の歯が核心だ。P3からP4は樹林の痩せ尾根通しに行く。コルに出るとガリーからの踏みあとがあった。3ガリーを左に詰めるとこちらに出るので、雪の状態が良ければこれが正解。
いよいよ、P4の急登。木の根を手掛かりにほとんど垂直に思える壁をよじ登って行く。朝早いので雪が締まっているのでピッケルが良く利く。森林限界上の稜線に出るとP5、P6までの緩やかな雪稜が迎えてくれる。P6からは横尾の歯と呼ばれる岩場になる。
02-P6からP7へ横尾の歯(5月3日昼)
  P6からP7へ横尾の歯

1P Ⅲ 30m ランナー4つ
ほぼトラバースでバランシー。詰めのところで岩の間を通る箇所が手がなく悪かった。終了点は木を使ったが良く見るとハーケンもあった。

2P Ⅲ- 15m ランナー3つ
岩を一登りしてピークでピッチを切った。Ⅱ級かもしれない。

3P Ⅲ- 30m ランナー5つ
ピークから4mくらい下ってから登り返す。登りは雪がついていたのでピッケル、アイゼンを利かせて快適に。最後にバランシーなトラバースがあり、終了。

横尾の歯はクライミング経験者には問題ないし、怖さもなかった。全体的にはスリップしたら停められそうにないナイフリッジや雪稜の下降の方がよほど怖かった。横尾の歯からP7までは緩やかな雪稜。テン場を探して槍ヶ岳正面の最適地を発見した。
03-P7の幕営地(5月3日夕)

■5/4 晴れ
本日も2:30起床、4:30出発。雪稜をP8へ。雪が締まっていてアイゼンが良く利き歩きやすいが、その分スリップしたら停められないので命懸けだ。P7からP8の間が一番怖かった。
04-P7からP8への怖い雪稜(5月4日朝)
  P7からP8
P8を越え、切り立った雪面をよじ登って天狗のコルに出た。あと200m登れば南岳の肩に出る。最後の力を振り絞って高度を上げる。好天の下、気持ち良く稜線に出られた。
天狗のコルからの観察では緩やかに見えた大喰岳までのルートだが、稜線に立ってみると100m程度の起伏がありそうだ。南岳の肩に出るまでに力を使ってしまったので渋々スタートする。するとバチが当たったのか、いきなり梯子の下降が出てきた。自分はこのコースを数回歩いているがこんなところに梯子があったかしら。しかも梯子に至る前に短いが急な下りがあり、スリップすると遥か槍沢まで翔べそうな気がしたので、早々にバックステップに切り替えた。梯子は二つあって思い出したくない思いをした。
05-南岳から大喰岳へ
  怖い梯子/南岳の肩
大喰岳にはバックカントリースキーの3人パーティーがいた。無線機やピッケルなど山やさんとほぼ同じ装備だし、話を聞いていると訓練も積んでいるようだ。我々は少しでも早く帰京できそうな飛騨沢から下降することにした。上高地は18時にゲートが閉まってしまうからだ。しかし、槍平小屋までは順調だったものの、それ以降白出沢まではデブリが多く、ひとりずつ抜けたり待機したりで時間がかかり、新穂高温泉到着は19:30となった。
結局、新穂高温泉からのバス、さらに松本からのあずさがなくなり、紆余曲折の末に新島々のゲストハウス「しましま」に宿泊して、祝杯を挙げた。

<行程>
5/2 上高地6:00~横尾8:30-9:00~3ガリー10:30-11:00~P3(C1)16:20
5/3 C1 4:30~P4 8:30~P5 11:00~P6 12:30~P7(C2)15:30
5/4 C2 4:30~P8 5:30~天狗のコル6:00-6:30~南岳の肩9:20~大喰岳11:00~新穂高温泉19:30

仙ノ倉山北尾根

3/2~3に仙ノ倉山北尾根に挑戦したが、強風のためシッケイノ頭手前で撤退した。
今回も天気予報が悪く危ぶまれたが、結果は大正解。初日の時間を長く取れるよう土樽で車中泊して早朝から行動したことと天気が崩れなかったことが勝因となり、初日に仙ノ倉山頂まで到達し、リベンジマッチを制した。

■4/5(金) 雨
金曜日の喧騒から抜け出し、自宅へ急ぐ。これから東松山経由で土樽まで。関越道で群馬に入ると雨が降り始めた。せめて国境の長いトンネルを抜けると雪であって欲しいと願うが、新潟も雨だった。なるようになれと、コンビニで今晩の寝酒や行動食を買い、土樽駅に1時頃到着。酒やビールはチョイスにこだわらずに買い込んだが、保岡さんのサバみそ缶詰が加わって美味しくいただき、就寝した。

■4/6(土) 晴れなれど風強し
5時に起床、朝食を摂り駅でトイレを済ませてから毛渡橋に車を進めた。前回はここから雪の回廊を歩いてJR上越線、関越高速道を潜ったが、今回は除雪されている。除雪の先端まで車で入ってみたがスペースがないので、平標方面への分岐まで戻って駐車。前回に比べると、ここでも時間短縮できた。
6時50分アプローチ開始。取付きまでつらい平面の道を行く。雪が腐っていて、凍っている箇所があるかと思うと、足首まで、さらに太ももまで潜る踏み抜きがランダムに発生し、脚の筋肉と精神にダメージを与える。8時30分に群大仙ノ倉山荘に到着。IMG_4052

前回は小屋場ノ頭まで最短距離で直登したが、今回は北尾根の稜線の末端からアプローチすることにした。小休止して山荘前の橋を渡っていると、イタチのような小動物が向こう岸を走っていった。オコジョかもしれない。
橋を渡ってバッキガ平を林道(雪の下に道があるように思えた)沿いに左に回り込む。スキー跡につられて少々回り込み過ぎたが、北尾根の末端から稜線に取り付き、木々の根元の赤ペンキでルートに乗ったことを確認する。
間もなく、土樽駅でビバークしていた4人パーティと合流し、共同ラッセルを組んだ。相手のパーティは装備がバラバラでワカン装備が4名中2名、他2名はツボ足だ。男女2名ずつなのだが男性1名(ワカン)のみが強く、一人でラッセルしていた。結局その強い男性と我々3名に単独でカメラを提げた年配男性を加えた5名で交代しながら小屋場ノ頭までラッセルした。IMG_4054

我々は小屋場ノ頭を越えた平坦地で一本取ってアイゼンに履き替え。その間に4人パーティと単独男性が先に出た。
この先はナイフリッジとシッケイノ頭までの急登で、体力的には厳しいが変化に富んで楽しめる箇所だ。ナイフリッジは、前回は雪面が弱かったので稜線にピッケルを刺しキックステップで横歩きして突破したが、今回は先行が稜線にトレースを付けた部分と崩壊して雪面を避けてキックステップ&トラバースする部分とがあった。ナイフリッジ後の急登は頭を空にして黙々と歩を進める。IMG_4059aIMG_4061a

前回テントを張った1530m小ピークを過ぎたあたりで単独男性が引き返し、4人パーティも幕営準備に入った。我々はこの好天の間に最低限シッケイノ頭まで、あわよくばその先のピークまで進みたい。
前回到達点の1627mを過ぎ、シッケイノ頭への斜面までは左に落ちないよう樹木沿いに進む。キックステップの急登が一段落していよいよシッケイノ頭へ出る斜面を登ろうとした時、「ドン!」という音。斜面に亀裂が走ったらしいが、広い雪面を観察しても判らない。不気味なので、樹木が上まで疎(まば)らに続く右手のラインをスピードアップして登ることにした。ここもキックステップや樹木を掴んでの登りがあるかと思うと、雪に隠れた亀裂を踏み抜いて足がぶらぶらするような空洞に嵌まり込んだりする。仲間に引き上げてもらい、恐る恐る進むとシッケイノ頭の突端に出た。この先は広々としてわずかに高くなった箇所がシッケイノ頭だろう。計画ではここで幕営だが、まだ14時を過ぎたところであり、また明日は天候が下り坂の予報なので、行けるところまで行くこととした。
シッケイノ頭から見て、右から上がってきた尾根から繋がる形で美しいピラミッド型のピークがある。すわ!仙ノ倉山かと期待するが、地形図よりも近い印象の上に標高差300mには足りないように見える。IMG_4068

尾根に上がる部分は表面がクラストしており踏むと割れるが、雪が薄く潜り込むほどのことはない。尾根に上がって見上げるピークは下から見たよりも傾斜が急で、風で雪が飛ばされて半分氷化した斜面を逆ハの字とキックステップでよろよろと登る。両足の太ももが悲鳴を上げ、もう限界だと思っても、止まってしまう訳にはいかない。自分はこういう時は歩数を数えて気を紛らわせる。次のピークまで200歩くらいか、また、先を行く仲間たちに置いてけぼりを食わないように頑張ることも支えになる。滑落しないようにピッケルで確保することだけに集中して気が付けば、山頂に続く平坦部の先端に立っていた。シッケイノ頭から見えたのはここだった。あとわずか、あの高まりが山頂だ。「仙ノ倉山頂 2026.3m」の山頂標を前に自然と握手が出る。風が強く、目出帽の口の部分が凍ってしまう。IMG_4077a

早々に山頂を辞して2021m手前の鞍部に下り、稜線に遮られて多少風が弱まる風下(南)側にスコップでL字を切ってテント場とした。テント前は緩やかとはいえ凍った雪の斜面なので、手ぶらで、特にテントシューズで歩くのは危ない。テント入口からトイレまで短い道を掘って安全を確保する。20190406_y17

テントに入ると風の音は激しいがお茶とおちゃけでいつもながらの天国となった。何を飲んでも食べても美味しい無敵状態になり、4時起き6時出発と決めて就寝した。

■4/7(日) 晴れときどき曇り
4時起床。まだ風が強い中、テント撤収にはF1ピットクルー並みの滑らかなチームワークで熟練の技を発揮した。
5時50分出発。-4℃、雲は多いが切れ目から太陽が覗く。昨日、4名パーティの前に出てからは仙ノ倉山頂まで踏み跡がなかったが、山頂からこちらには平標方面からの往復らしいトレースが付いている。今日は平標山まで緩い上下降があるものの、その後は下り一方だ。すでに里心がついており、昨日行程を稼いだ分早く下りて10時20分のバスに乗りたい。
稜線上の道は日当たりが良いためか木道や笹が露出している箇所が多い。ところどころで「東芝ランプ」の赤い道標が谷川岳肩ノ小屋までの距離を示しているのは、かつて小屋で同社製品を使っていたのだろうか。しかし、仙ノ倉と平標の中間地点で「10500m」の表示は、見るとメゲてしまいそうな数字だ。平標の登り口に祀られていた「大山祇(オオヤマツミ)」の石碑に今後も変わらぬ無事を祈って平標山頂を通過。山頂標と並んで三角点標石も出ていた。松手山へのルートに入り、1677m地点を過ぎると風も止んだので、ヤッケを脱ぐ。
松手山から踏み跡を辿ると1411mから尾根を外して東へと下り、別荘地の間の舗装路に出た。10時にバス停に到着し、越後湯沢駅へ。さらにバスで土樽へ。ところがバス終点の「土樽」は「土樽駅」ではなく集落開発センター前だったので、毛渡橋までの1kmほどを歩いて車を回収した。

<行程>
4/6 平標新道分岐6:50~群大仙ノ倉山荘8:30-8:40~小屋場ノ頭10:40-11:00~シッケイノ頭14:20~仙ノ倉山16:00~2021m手前鞍部16:10
4/7 2021m手前鞍部5:50~平標山6:40-6:50~松手山8:10-平標山登山口10:00

仙ノ倉山北尾根

(この山行記録は後ほど加筆予定です)

■3/2(土)
8:40、電車で土樽駅に集合。居合わせた山スキーの方に声をかけたところ長吊尾根とのこと。仙ノ倉北尾根とは谷を挟んで向き合うルートであり、お互いの無事を祈って別れた。駅前から雪の上のショートカットで車道に下り、毛渡橋まで歩く。車道上に雪はない。好天で気温が高く、ジャケットも要らない。毛渡橋のたもとには2台が駐車していた。ここから残雪期のようなシャーベット状の雪となり、関越道と上越線をくぐって林道に入る。その先で、先週タカマタギから下山してきた林道とT字になる分岐から毛渡沢沿いに仙ノ倉山へ向かうのだが、分岐と思われる雪面でワカンを着けて歩き始めたところで、踏み跡に釣られてタカマタギに繋がる尾根の方向に進んでしまった。踏み跡が下りに転じる気配がないので間違いに気づき修正したが、前途に暗雲である。沢沿いの道に出て、うんざりするくらい長く平坦な行程の末にやっと群大仙ノ倉山荘に到着して一服。山荘前の橋を渡って北尾根の取付きとなるバッキガ平立つことができた。
ここからは概ね南方向にかすかな踏跡を参考にしながら高度を上げていく。雪質が悪くて硬いところと踏み抜いてしまうところが混在している。踏んだと思うと沈んだりして精神的に良くないし、バランスを崩し足に思わぬ力がかかる。バッキガ平から小屋場ノ頭まで約2時間、緩やかなのは最初と最後のみで、急登が続く。進むうち傾斜が増してワカンでは登れなくなり、トラバースする箇所もあった。
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小屋場ノ頭からは北尾根がシッケイノ頭の手前のピークまで見渡せる。素晴らしい景色だ。緩やかな尾根から急激に上昇した踊り場付近まで行ってテント場を探すこととした。IMG_4012p

尾根は途中200mくらいナイフリッジになっており、その前でワカンからアイゼンに履き替えた。ナイフリッジは南北に延びており、今の時間は東側がしまっていて西側は雪崩の危険性が高い。東側をトラバースした。IMG_4028

ナイフリッジを抜けると急登があり、小ピークを削ってテント場が出来たのが17:00くらいであった。IMG_40351552549812617a1552549783049

■3/3(日)
4時起、6時出発。夜半からの強風でテントのポールが曲がった。明けても風は収まらない。シッケイノ頭の手前まで行ったが体を持っていかれるほどの強風ため、撤退することにした。1552549787454

7時にはテント場まで戻って9時には群大ヒュッテ、10:30には毛渡橋。逃げ足は速かった。タクシー3,400円で越後湯沢まで行き、駅構内のお蕎麦やさんで反省会をした。

八ヶ岳・石尊稜

■2/2(土) 快晴
朝一で都内を出発し、八ヶ岳山荘の駐車場に車を停めた。アイゼンを着けて北沢経由で赤岳鉱泉に到着。今日明日はアイスキャンディフェスティバルが開催されており、人出が多い。テント場を確保、設営してからプロトレックブースにいた牛山さんに挨拶にいった。花谷さんもいた。
挨拶の後、明日のために石尊稜までのルートを偵察に行った。赤岳鉱泉から中山尾根方面に10分くらいで橋に出て、橋を渡ったところからロープをくぐって踏跡をたどった。小同心沢、三叉峰沢のふたつの二俣を右に向かい、石尊稜下部岩壁が見えるところまで踏跡があった。
ここから新雪になり、偵察していた先行パーティーは上部も雪が深そうなので明日は諦めるとのこと。石尊稜3年越しの我がチームはそこからラッセルで下部岩壁のアプローチまで明日のために道を付けた。軽く偵察してテントで宴会の予定だったが、テント帰還が17:30くらいになり、その後のスケジュールを押していった。
酒、鍋、酒、鍋、酒、酒とお湯割り、熱燗で就寝は21:00。
01テントで宴会2
  フェスティバル / テント宴会

■2/3(日) 快晴から曇のち吹雪
3:00起き、5:00出発の予定が6時近くになり、朝から重い足を運んだ。
02とりつきまでの道
  取付きまでの道

下部岩壁取付きへのアプローチは急峻な雪面、草付き、雪稜で厳しいものだった。ルートはわかりやすいがアプローチだけでこのしんどさに暗雲が立ち込める。
04下部岩壁取付き2
  下部岩壁アプローチ / 取付き

【下部岩壁】
○1P Ⅳ 45m
先行パーティーが左ルートに取りついていたため、中央ルートのペツルボルトに支点を作った。他に3パーティーが順番待ち。みなさん、登攀用のサブザックにダブルアックスの出立(いでた)ち、縦走ザックにプローブとスコップを差し、縦走ピッケルにワカンを持った我がチームは明らかに浮いている。
スラブ壁で岩に雪はほぼない。下から見ると二つのペツルが確認できる。その上には灌木が散見されるのでアンカーは取れそうだ。終了点は三角形のピークに立木が見える。今日は天候に恵まれてルートがはっきり見えるのがラッキー。岩壁に雪がないので岩角をつかんで、また、プッシュして体を上げていく。中間部にペツルのビレイ点があり、残置スリングが掛かっていた。ここでピッチを切るのは早すぎるので撤退するときの懸垂点かもしれない。中間部からは岩の間に草付きが点在しているのでピッケルで上体を安定させ足を上げていく。ピークに乗越す最後の一歩がハイステップで力も尽きているので足が、ああ足が上がらない。目の前に抱きかかえられるほどの大岩があり、つかまりたいのだがいかにも浮いている。結局木にぶら下がってよじ登った。微妙によじ曲がった立木をビレイ点にして1ピッチ目は終了。

○2P Ⅲ 40m
急峻な雪稜で体力を削られる。ピッケルを刺しアイゼンのキックステップでふくらはぎを酷使しながら高度をあげる。立木をビレイ点にした。この辺りから後続パーティーに追い越され始める。ラッセル宜しく。

○3P Ⅲ 40m
2Pと同じパターンだが、ダブルアックスでフリーで登るパーティーがあった。我がチームは灌木でアンカーを取りながら縦走ピッケルで進む。腕がパンプしそうになったところで立木をビレイ点にした。

○4P Ⅲ 30m
よく覚えていないが2Pと同じパターンだった気がする。
雪のルンゼを右に上がったところの大木をビレイ点にした。
ここから5Pまではコンテで雪稜歩き。数回雪壁をよじ登った。体力がどんどん削られていく。
05中間の雪稜

【上部岩壁】
○5P Ⅲ 40m
階段スラブだが手掛かりが少ない。上部は雪稜で大岩を右から回り込んでビレイ。ここから強風が吹きすさぶ。

○6P Ⅲ 40m
岩のルンゼをひたすら登る。強風と疲労でゾンビのようになっている。ピナクルにロープを巻きつけてビレイ。強風で立っていられないので岩陰に座り込んだ。
ここから雪稜と草付きをコンテで50mくらいで山頂に到達。無意識に握手。
強風と氷の礫で顔面を強打されながらほうほうのていで地蔵尾根を下りた。
07ピーク2
  上部岩壁最終ピッチ / ピーク

<行程>
2/3 赤岳鉱泉(テント)5:50~橋分岐6:10~アプローチ6:58~1P7:50~2P9:10~3P9:40~4P11:00~5P12:18~6P13:10~山頂13:58~赤岳鉱泉16:10

西表島(沖縄県先島諸島八重山列島)

【計画編】
■ルート本案
↓船浦湾干潟→ヒナイサーラの滝→ヒナイ川遡行→板敷川支流下降→板敷川本流遡行→幻の湖→板敷川源流→ユツン川源流→ユツン川本流→古見岳往復→三段ユツンの滝→ユツン川下降→ユツン橋
001-西表ルート案B-1

■ルートサブ案
↓(幻の湖まで本案と同じ)→板敷川本流下降→マヤグスクの滝(懸垂)→浦内川横断登山道→大富
002-西表ルート案A-3

↓今回の計画の中で一番興味があり楽しみとしているのが、個人的にやり残している感の強い「幻の湖」から「古見岳」間を繋ぐルートだ。そこでは極力藪を避けつつ、沢の源頭付近の微妙な起伏を読みながら進む必要がある。そこで少しでも参考にと、以前NHKの番組「ブラタモリ」でも紹介された赤色立体地図を携行しようとの提案が鈴木さんよりあった。
003-赤色立体地図(書き込みあり)

■行動予定
12/31(月)羽田空港→石垣空港→石垣港→(ガスボンベ入手)→西表上原港(欠航時は大原港よりバス移動)→(上原駐在所に登山届提出)→ミトレアキャンプ場(泊)
1/1(火)キャンプ場→ヒナイ川河口→ヒナイ川遡行→分水嶺→板敷川支流(泊)
1/2(水)幕場→板敷川遡行→幻の湖→P393からユツン川支流付近(泊)
1/3(木)幕場→ユツン川本流→古見岳往復→ユツンの滝→ユツン川下降→ユツン橋→(バスにて船浦下車)→ミトレアキャンプ場(泊)
1/4(金)キャンプ場→上原港または大原港→石垣港→(市内観光)→石垣空港→羽田空港

■エスケープ・サブプラン
①同ルート下降
②板敷川下降→マヤグスクの滝(懸垂または大高巻き)→縦断登山道より大富方面
③板敷川下降→マヤグスクの滝(懸垂または大高巻き)→縦断登山道よりマリュドゥの滝桟橋方面
④古見岳→相良川下降ルート

■個人装備
軽登山靴、沢靴(他、沢装備)、ハーネス、ヘルメット、PAS、120cmアルパインクイックドロー×2、下降器、HMSカラビナ・変Dカラビナ・スリング・捨て縄等適量、雨具、防寒着(中厚)、ヘッドランプ、水2L以上、行動食4日分、ナイフ、トレペ、地形図、コンパス、寝具、コッフェル、携帯電話、予備バッテリー等

■共同装備
松本 … テント一式、銀マット、ハンマー、ハーケン×2、ライター、食料朝夕3人前
鈴木 … φ8mm×30m補助ロープ、救急キット、食料朝夕3人前、ガスヘッド、中鍋、おたま
保岡 … φ8mm×30m補助ロープ、ポイズンリムーバー、ガスヘッド、ライター、食料朝夕3人前

計画は以上の通り。ほぼ万全?の態勢で臨んだが…。

【実施編】
■2018年12月31日(雨時々曇り)
東京羽田(06:15)→石垣空港(09:40~10:00)→(シャトルバス/500円)→石垣港(10:40)→石垣市内打上げ/そば処「まーさん道」(11:00)→石垣港離島桟橋(13:00)→(安栄観光フェリー)→西表大原港(13:45)→(安栄観光バス/フェリー代と込み)→船浦十字路・民宿マリウド(15:10)⇔(上原駐在所往復)

個人的には1994年以来6回目となる西表島へ、この度会山行として無名山塾の仲間2人と共に目指すことになった。率直にうれしい。

↓10月に航空券を手配しておきながらも、準備は満足に進まず瞬く間に出発当日を迎える。予報通り石垣に着くなり天気は小雨。そして西表上原港行のフェリーも予期していた通り欠航のため、大原港行のフェリーに乗船する。島が見え始め「また来たぜ!」とばかりに心躍るが、島はどんよりとした雲に覆われモチベーションは下がる一方。
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↓西表大原港に到着。当初は船浦のミトレアキャンプ場を利用する予定だったが、雨のため同系列の民宿マリウドに急遽変更し、今後の予定について考える。
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■2019年1月1日(雨時々強し)
民宿マリウド(10:30)→船浦バス停(10:40)→(路線バス)→浦内川(11:10)→下流船着場(11:30)→(遊覧船)→軍艦岩(11:55)→マリュードの滝展望台(12:35)→カンピレーの滝折返し(13:10)→軍艦岩(14:35)→(遊覧船)→下流船着場(14:50)→(バス通り徒歩)→住吉バス停(16:04)→(路線バス)→船浦バス停(16:22)→ミトレアキャンプ場見学(16:33)→民宿マリウド(16:50)

昨日から夜通し激しい雨音が聞こえていたため、増水を危惧し、沢の分水嶺越えをメインとする縦走はサブプランに切り替えるなど、まずは一日様子を見ることにした。屋内でだらだらと過ごしてもつまらないので、思い当たる名所の中から二つ三つ候補を挙げ、日帰り可能な所までを往復しようと決める。それにしても凹む。

↓本日の行動は、西表最長河川の浦内川から遊覧船を利用してカンピレーの滝までの往復に決定。樹林帯内にはジュラシカルとでも表現したくなるような木性シダのヒカゲヘゴが至る所で見られる。横からいかにも小型肉食恐竜ヴェロキラプトルが出てきそうな雰囲気を演出してくれる。
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   (撮影:鈴木)
↓横断登山道途中のマリュード(マリュドゥ・マリウドなど発音の仕方も様々)の滝展望台より。この展望台から対岸にある支流のギンゴガーラ川を遡行するルートがとれるらしいが、この激流を渡渉できるとは到底思えない。予測を超えた増水量に縦走案は全面的に中止だと諦めもつく。
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↓カンピレーの滝、観光折返し地点。落差のあまりない滝のため、増水していると滝の渓相を成しておらず、ただの激流。まさにお手上げ!
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↓西表内陸部の縦走は、基本沢登りと沢下りになる。なぜなら沢以外の樹林や草本帯では時折このツルアダンの密藪に捕まり、いちいち引っ掛かるザックが狂おしいほどのストレスとなるからだ。それこそ10m進むのに10分?の世界。新雪の深雪ラッセルとさして変わらない。いや、それ以上に西表では通過できない本当の藪がある。
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↓こちらは純粋なアダン? 亜種のツルアダンよりも棘が鋭い。
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■2019年1月2日(雨時々強し)
民宿マリウド(09:30)→船浦湾干潟入口(09:50)→ヒナイサーラの滝(11:15)→船浦湾干潟入口(12:25)→ミトレアキャンプ場横(12:45)→マーレー川カヌー船着場見学(13:48)→テドウ山方面登山道(途中まで往復14:05)→マーレー川カヌー船着場(14:16)→民宿マリウド(15:10)⇔(上原スーパー食材買出し)

昨夜も夜通し激しい雨音が響く。それにしてもよく降る。

↓本日は干潮時を狙って干潟からヒナイサーラの滝に行き、滝上より内陸の登山道を辿ってテドウ山登山道と合流し船浦への林道へ至る周回ルートと決める。
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↓写真中央の植物はヒルギダマシ(鈴木談)。砂地上を放射状に突き出す筍根と呼ばれる呼吸根がとても印象的。マングローブの一種だが、左右に写るヒルギ科(ヤエヤマヒルギ)とは別系統。
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   (撮影:鈴木)
↓干潟には必ずこいつら(ミナミコメツキガニ)がいる。砂地を埋め尽くすほどウジャウジャいるイメージだが、小潮だからか、悪天だからか、パラパラとしかいない。じっと観察していると何故だか愛着が湧いてくる。
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↓タコの足のようにたくさんの根を張るヤエヤマヒルギの群落。マングローブという名称は、これらヒルギ科と先ほどのヒルギダマシなどを含めた総称だ。
背景右の山肌に顕著に白く見えるのがヒナイサーラ(またはピナイサーラ)の滝。その他の白い筋は、平水時には現れない滝。
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↓マングローブ林内につけられた道を行く。初めて訪れた時と変わっていない。満潮時にはここも腰ぐらいの深さになる。
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↓マングローブ林内に生息するシレナシジミ。手のひら大。この個体は8cmほど。それでもシジミだ。左背後の三角錐の巻貝はキバウミニナ。そこら中にわんさか散らばっている。
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↓西表では有名なサキシマスオウノキ。平板状の板根が特徴。熱帯・亜熱帯地方特有の薄い表土に対し、倒れないよう支持力を得ようと進化したものらしい。
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↓干潟より道はマングローブ林~草原~樹林帯と変化し、ヒナイ川渡渉点に出る。ここを渡らないとヒナイサーラの滝へは行けない(写真は渡り終えた後)。平水時に浅いところを選べば足首程度の深さだがこの有様。流れは比較的緩やかだったので、3人肩を組んで進めばロープ無しでも行けると判断し突破。一番深いところでお腹ぐらいだった。ただ、この先マーレー川の渡渉もあるので、そこが果たして渡れるのか気になる点ではあった。
ちなみにカヌーに乗っているのは、マーレー川船着場からのツアー客の方々。
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↓(左)ヒナイサーラの滝下。まさに台風並み!瀑風と共に激しいしぶきで、これ以上は近寄れない。
その後、先ほどと同じくツアー客を連れた宿泊先の現地ガイドの方と偶然すれ違う。その際マーレー川の渡渉について尋ねたところ、増水していて微妙な感じのご様子。ここはやはり現地ガイドの見解を尊重し、往路を戻ることにする(実はメンバー保岡は、元バリバリのサーファーで海の男。泳ぎには自信があると自負しているので、渡渉時に足が付かない深さならば、泳いでロープを渡してもらえばいいやと安易に考えていた)。ただ、すでに満潮に向かって潮位は上がりつつあるので、急いで下山する必要があった。
右の写真は参考までに前回(10年前)の様子。平水時はこの程度で、滝壺ギリギリまで近づける。
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■2019年1月3日(雨時々曇り)
民宿マリウド(09:45)→船浦バス停(09:47)→(路線バス)→白浜港(10:55)→(船浮海運フェリー)→船浮港(11:00)→(船浮集落散策)→イダの浜(11:46)→船浮港(15:30)→(船浮海運フェリー)→白浜港(15:45)→(路線バス)→大原港(17:23)→民宿「島時間」(17:28)⇔居酒屋「はてるま」(19:00より予約)

夜半はまたしても雨音が断続的に聞こえていた。
日帰り案の一つに、ユツン(またはユチン)川からユツン三段の滝、出来れば古見岳往復というのがあったが、ユツン川もどうせ増水で下手をすればバス通りのユツン橋から入渓して10分もしないうちに敗退もあり得る? そして路線バスも数時間に1本なので、バス通りをトボトボと何時間も歩くはめになると考えると、もっと無難な案として船浮集落訪問が浮かび、結局それとなった。

↓写真は船浮港。ここは日本全国でも珍しい陸路の無い集落。交通手段は白浜港より船のみ。
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↓船浮集落より更に西に徒歩15分ほどのイダの浜。一年を通した生活のある人里として、ここが本当の意味での西表最奥地。
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↓そこをシュノーケリングする保岡。シュノーケルはたまたま砂浜に落ちていたものを洗って使用していた。お見事。
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↓船浮より再び白浜に渡り、路線バスにて島のバス通りのほぼ端から端まで約1時間40分かけて大原港へ戻る。今晩は宿を大原の民宿「島時間」へ移し、鈴木さんが出発前より目を付けていた人気の隠れ家的居酒屋「はてるま」にて打ち上げ。西表最後の夜をここで締める。八重山の珍味というだけでなく、必ずリピートしたいと思わせるに十分な味付けと至高のメニューであった。
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■2019年1月4日(曇り時々雨)
民宿「島時間」(9:00)→大原港バス停(9:18)→(路線バス)→日本最南のバス停「豊原」バス停(9:23)→南風見田(はえみだ)の浜(10:27)→忘勿石(12:40)→豊原バス停(13:45)→民宿「島時間」(14:20)→大原港(14:30)→(八重山観光フェリー)→石垣港離島桟橋(15:05)→石垣市内買物&打上げ/居酒屋「まだんばし家」(18:00)→(タクシー)→石垣空港(18:30~19:50/※20分遅れ)→東京羽田(22:35)

最終日、飛行機は夜の便のため、まだたっぷり時間がある。大原から散策といったら大富から仲間川の展望台か、豊原からの南風見田の浜だろうか。足は、理由があって南風見田へと向かう。

島嶼を旅するバックパッカーの間では、西表と言ったら南風見田の浜であり知らない者はいない、南風見田は殆ど合言葉である、と自分は認識している。
ここで、山ヤとしての西表の歩き方には大きく分けて二つあることを記したい。
一つは、内陸部の分水嶺越えを繰り返す、つまり沢から沢を渡り歩くもの。今回の計画がこれ。
もう一つは、特に道路の無い島の西部地区などの海岸線を辿るものである。
後者は島嶼登山特有の山行形態だろう。断崖の磯や巨岩帯、砂浜が交互に現れ、潮の干満で通過の難易度が変化するのが面白い。また、熱帯・亜熱帯では特にサンゴ礁が発達しているため、大潮の干潮時には場所により沖合数百メートルまで浅瀬若しくは完全に地盤が露出する、リーフ歩きが何とも爽快だ。

そこで、海岸線歩きの起点あるいは終点となるここ南風見田の浜で、以上を再確認しようというものだった。

↓最終日にして、初めて薄日が差す南風見田の浜。
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↓かつてリーフ歩きをした海岸線。このような奇岩は珍しくない。
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↓先を行く二人と、イリオモテヤマネコらしき足跡。この辺りに民家はないので、家猫とも考えづらい。割とあちこちで見られる。
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↓つぶらな目が愛くるしい。調べたら「ミナミスナガニ」だそう。昼は黒っぽく、夜は白く透けた色になるとのこと。ちなみにここまで成長していない小さな個体(白く半透明)は、あまりのすばしっこさに視界の隅を塵や枯草の塊が風に吹かれて過ぎたかのように映るが、視線で追うとこのカニと判る。
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↓南風見田の浜全景。
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↓豊原から南風見田キャンプ場間は、サトウキビ畑やこのような風景が広がる。
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↓豊原バス停。日本最南端のバス停、との表示に、そーだったのかぁと少し感動。
その後、我々は最後の晩餐を石垣島にて行い、次回への志を確認しつつこの八重山を後にした。
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【メンバー所感】
■松本
連日のスコールによる増水を危惧し、大幅な予定変更を余儀なくさせられた今回の西表山行。内陸部の沢の遡下降をメインとした縦走を一切中止し、民宿を拠点に様々な入山地点付近を往復するというだけのもの。観光・偵察、解釈の仕方はいろいろあるが、1月2日の干潟ルートだけは山行と言うに申し分ない内容だったと思う。…初めて西表を訪れた時のこと。すっかりセピア色となった25年前の映像記憶、それはずかずかと船浦湾の干潟を歩く姿そのものだった。干潟歩きこそ西表らしいとの想いで、予てよりこのアプローチだけは外さないと決めていた。…この船浦干潟よりマングローブ林を通し、遠く山肌にピナイサーラの滝が望める。通常細く白い筋であり、全景と相まってのどかな風景を醸し出しているはずが、遠目に見えるそれは増水し、まるで水道の蛇口を全開にしたかのように下方がしぶきと共に末広がり、猛烈な勢いで流下していた。
10年前の年末年始に訪れた際も雨に見舞われた。行動に適切な時期を定めるためには、八重山の気候についてもっと細かく知る必要があると改めて感じた。
なお、今回メンバーのお二人には、現地での予定変更の折、宿の予約連絡や交通機関への問合せなど、細かい気配りに助けられ、スムーズに事が運んだことに感謝しています。

■鈴木
こんどの年始は休みが長いから西表島に行かない?松本さんが声をかけてくれたとき、予てより島嶼登山に興味があった私は、一も二もなく飛びついた。
ご存知の通り西表島は亜熱帯の島だ。九州より台湾に近く、まず本州とは生きる動植物がまるで違う。ものの本によれば、──川を縁取るように伸びているブッシュがアダンの群落。アダンはトゲトゲの葉を持ち、タコの足のように長く伸びた何本もの根をつけている。群落となると、それらが絡み合い、全体が4mもの高さになる。藪の漕ぎようがなく、まず絶対に通過できないとある。またサキシマハブ、ヤマビル、マダニ、ムカデ、ハチ類、アブ、ヌカカ、カ類は季節を問わず活動しているという。けっこう!けっこう!私の探検心は大いにくすぐられた。
計画が決まり、さて実際どこをどのように歩こうか、地図にない道を探し始めてまた知った。西表島を旅するキーワードは「分水嶺」と「潮の満ち引き」なのだ。潮の引いた干潟から一つの沢に入り、沢を登り詰め、また別の水系へと下る、そうやっていくつかの沢をつないで島の中心部にある山岳地帯を縦走する、けっこう!けっこう!島嶼じゃないか!
実際は豪雨のため縦走計画は中止となったが、それでも西表島は想像以上に刺激的だった。自然ばかりではない、そこに暮らす人々の印象、港や集落の佇まい、食べ物、酒・・・、島という独特の環境から導き出された豊かで深いものが、そこにはあるように思えた。
貴重な機会を与えてくれた松本さん(夫妻)に感謝。旅の友、保岡さんにも。

■保岡
今回は暴風雨のため当初の縦走計画を大幅に変更するというハプニングに見舞われましたが、経験者の松本リーダーのお陰で主要ポイント(ヒナイサーラ、カンピレー・マリュードの滝、船浮のイダの浜でまさかのシュノーケリング)のピストンに変更していただき有意義な山行になりました。
次回は南風見田浜から鹿川港を経由し陸の孤島、奥西表の船浮港まで縦走できればと思います。

笊ヶ岳・ランカン尾根

好天に恵まれたことに加え、ラッセル前提だった雪量も2300m付近までほぼゼロ、それ以降も深くて膝程度で、快適な山行だった。雪の少なさは痛し痒しであるが。
ランカン尾根はp1828.4までの急登、大ギャップ、最後の鞍部を越えてから小笊への急登という三段構成だった。笊ヶ岳は360度パノラマで北岳から光岳まで南アルプスのすべての峰々を一望。布引山から見た初日の出と富士山の並びは縁起が良かったが、その後の猛烈な下りで心と膝が折れた。広河原について力を抜いたが、実はその先が今回の核心なのだった。

■12/29(土)
JR身延駅から早川町営バスに乗車、大島バス停で乗合タクシー(要予約)に接続し、部活帰りの女子高生と雨畑までの山間の道を行く。バスは運賃600円+手荷物料金200円、タクシーは200円と安い。今日の宿、ヴィラ雨畑は山と湖の間の隙間に建てられた元小中学校で、体育館に名残が感じられる他は建て替えられて宿泊施設になっている。カウンターにはここが登場するコミック『ゆるキャン△』が置かれていた。1泊2食付で7500円、夕食のメインデッシュは竹輪と牛蒡の鍋でとてもヘルシーだった。別棟の温泉は風情のある構えだ。

■12/30(日)晴れ
ランカン尾根へのアプローチは、戸屋地区から長い林道をなぞって大金山付近から取り付くのと、老平地区の硯の里キャンプ場から西北西~北向きの尾根を経由する2ルートが選べる。前者は緩やかに高度を稼げる反面林道歩きが長い。我々は急登の後者を選択した。
弁当にしてもらったヴィラの朝食を食べ、6時過ぎに出立。1時間弱で人気(ひとけ)のないキャンプ場に到着し、装備を整える。空身で取付き場所を探索、遊具の奥に杣道を発見し、7:10に620m地点から登り始め。気温-3℃、雪は全くないものの急傾斜で、積もった落葉に足を取られて非常に登りづらい。
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広葉樹林帯を落葉を踏みながら900mジャンクションまで登り、広い尾根の針葉樹林帯手前で休憩。静けさの中にキツツキの音、サルの声を聞く。ここから進路は北に向いていく。植林帯に入ると多数の杉が切ったままに放置され、ひどく歩きにくい。ネットで読んだ記録に「モチベーションが下がるエリア」と解説されていた通りだ。木々を跨ぎ、くぐりながら登っていくと傾斜は緩むが、次はお馴染みシャクナゲの藪漕ぎ帯になった。藪を突破し、1125地点で休憩。
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登山の目印の少ないルートで、1220mで初めて赤テープを見る。戸屋地区からのルートとの合流を示すものだろう。ここまでは伐採された杉に薄いながらも藪が被ってルートが見えにくかったが、スッキリと落葉した樹林となって歩きやすくなる。赤テープが増えたのは、ランカン尾根は戸屋地区側から登るのがメインということか。
1300m付近で恩賜林の火災注意の看板を見るとふたたび100mほど急登。大金山への尾根が合流する1400m付近で西に変針し、切れた尾根をトラバースするようにあるかないかの微かな踏み跡を行く。先ほどのエリアは伐採放置された木々が鬱陶しかったが今度は自然な倒木が道を遮る。12:30にp1828.4に到着。ネットの記録通り、三角点標石の傍らに「静大WV」の看板が横たわっていた。
この前後は緩やかな傾斜で、p1948の手前には泊まって焚火した跡もあった。事前調査でルート中最大の核心部と考えた大ギャップはp1828.4とp1948の間のはずだが、鞍部を越えてもそれらしいところはなかった。もしかして気づかぬうちに迂回ルートを取ったのか・・・と安心しかけたのも束の間、p1948を前にしてそれは唐突に現れた。足元から急斜面で落ちるギャップを隔てて岩壁が立ち上がっている。ギャップの最低部までクライムダウンし、倒木をくぐって岩壁の基部に至る。雪が着いていればこの時点でロープを出しているところだ。基部から観察すると、岩の左側面のバンドを辿ってから折り返して木を掴めば上に抜けられそうだが、冬装備の重荷に振られれば転落しかねない。バンドを慎重に上がってみると、向きを変える箇所でホールドに乏しく足を置く場所が決まらない。ここは空中に伸びている木の幹を踏んで乗り切るきわどいクライミングで、どうやら岩の上に出られた。p1948で一息入れる。
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次の小ピークに登る1950m付近でようやく谷間の日陰に雪を認めるが、尾根上で白いのはせいぜいが溶け残った霜程度。この登りもまた急で、雪山装備を担いで登るのは一体何の修行か・・・ 小ピークで再度休憩し、ようやく本日の幕営予定地p2125に到着したのは15時過ぎだった。さすがにこの高度になると、日陰の地面に薄く取り残されたような雪が見られた。テントを張った近くの窪地から枯葉だらけの雪を集める。いったん凍っているため意外と多くの水を作れて助かった。
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ここをベースに笊ヶ岳ピストンの計画だったが、全体に急登の上に大ギャップを通過してきた往路を戻るのは避け、笊ヶ岳から布引山経由で老平に戻る縦走への変更を決定(もともとエスケープルートとして計画していた)。ただ、この時点では老平から布引山への登りの方が一層の急登であることには気づいていない。

■12/31(月)晴れ
テントをたたんで6:30に出発。気温-10℃。
p2125から尾根はほぼ真西に向かって小笊から笊ヶ岳へと突き上げていく。まずはスタート直後50mの急降下からの急上昇。降下するところで地面が凍っていたため初めてアイゼンを着け、シャクナゲ混じりの低木の藪をかき分けルートを探して下降していく。この鞍部前後は地形図上で崖マークで、最低部からは右にルートをとり、キレットをトラバースぎみに上昇する。人が通れるくらい広くなったところで尾根に上がり、見晴らしがよくなる。p2261を踏んで鞍部に下りると、あとは小笊までひたすら登りだ。
ここからの登りには岩場も出てくる。雪は薄くまだらに着いている程度で立ち木も掴めるので技術的な困難はないが、なにしろ荷が重いので息が切れる。
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この登りにかかるところで、獣の影を見た。一瞬だったので判然としないが、黒く小型でずんぐりした印象。フレッシュではないが熊らしい糞や足跡、樹幹に刻まれた爪痕なども見かけたので、冬眠していない若熊がいるのかもしれない。あるいはカモシカだったか。
2300m付近から足元が一様に雪で覆われるようになり、黙々と高度を上げるのに従って次第に深くなる。正面に迫る小笊はまさに立ちはだかるかの如し。
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トレース皆無の雪に足跡を付け、やせ尾根を通過して小笊への登りにかかる。これまでで一番と思える急登の後、小笊(2620m)登頂。場所によって膝まで潜る程度のラッセルとなった。笊ヶ岳は目前だが、写真を撮り景色を眺め、しばし休憩。
雪から顔を出したハイマツを踏んで、小笊の頂から50m下降。意外と細い尾根で、アイゼンを引っ掛けたりすれば転落もありうる。トレースが付いていたのは最近笊ヶ岳から往復したものらしい。鞍部から60m上昇して、12:40 笊ヶ岳(2629.4)に登頂。昭文社地図に展望マークの付いている通りの絶景ポイントだった。北の顕著な三角は北岳、そこから間ノ岳、農鳥と続き、広い山容は塩見岳だろうか。荒川、赤石と展開し、聖は東尾根が目立つ。茶臼から奥の方に光岳まで、南アルプスオールスターが一望できる。小笊の向こうには富士山。時間に余裕があればここにテントを張りたいくらいだ。
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後ろ髪を引かれつつも山頂を後にし、再び樹林帯に入る。15時までに幕営地を決める予定で歩き、結果的に14時過ぎに布引山までのちょうど中間地点、2500m付近に適地を見出した。ここには雪もたっぷりある。夕食は年越し蕎麦、ラジオで紅白を少し聴いて就寝。

■1/1(火)晴れ
4時起床予定が何故か誰もアラームに気づかず20分寝坊し、6:30に出発。気温-13℃。できることなら布引山頂で日の出をと急いだが、樹林越しの初日の出となった。そこからもう少し登った山頂手前の2570m地点で眺望が開け、富士山と並ぶ朝日を拝むことができた。
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布引山(2584.1)山頂は南北に長く、もう少し歩いて山頂標に到着。南アに共通の立派な木柱には2583.7mとある。
山頂からわずかに進んで青薙山へのルートを分けるとガレの縁に始まって尾根伝いの急降下となる。ここ2~3日よりも古そうな足跡が途切れ途切れに残っていた。一気に高度を下げ、p2021(桧横手山)手前の鞍部でアイゼンを外した。その先も延々と続く急降下は、一般登山道だけに迷うことはないものの相当に厳しい。ましてやここを登るのは日本アルプス三大急登などよりキツイだろう。山の神を過ぎ広河原を目前にしてつづら折れの登山道が崩落している箇所があり、ロープを出してゴボウで下りた。広河原には12時過ぎ。布引山頂から1500mの下降である。
登山道は広河原で沢を横切るが、水量が多くテープの付いた箇所は靴を濡らさずには渡れない。少し下流で石伝いに行ける箇所を見つけて道に戻る。そこからは沢沿いに、場所によっては下の廊下のように切り立ったトラバース道が続く。全ルートを通して、実はここが核心だった。岩壁から滴る水が凍って多数の氷柱が頭上に下がり、しかも岩壁に日があたってその氷柱がキラキラと光りながら道に降り積もる様子が見える。景色としては美しいが大きな氷柱の直撃を受けたらどうなることか。それが一箇所ではなく、岩壁沿いの狭い凍った道の下は崖、足を滑らせたらリカバリの手段がない一歩を先頭で踏み出すのは、アイゼンを着け直しても非常に怖かった。その他、トラバース道が急峻な沢を横断している箇所に架かった橋の多くが落石で破壊されている。代替のハシゴが設置してあればましで、それ以外は橋の片側の枠を伝ったり、橋の下のザレた斜面を慎重に通過したり。高巻き用に橋の上の岩斜面に固定ロープを張った箇所もあったが、ロープが古くてささくれている上に岩も脆く、ホールドを探ったらかなり大きな塊が落ちた。這う這うの態とはこのことで、吊橋(これは一人ずつ普通に通行できた)を渡って廃屋を通過し、林道に出たときは本当に安堵した。
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老平まで戻ってみると、ルート入口に「落石・橋倒壊のため通行禁止」と出ている。夏の登山シーズンまでには修理するらしい。集落は静かなお正月を迎えていた。我々もヴィラ雨畑で入浴して生き返った。

<行程>
12/30 ヴィラ雨畑6:10~硯の里キャンプ場6:50-7:10~1220m(戸屋地区からのルートと合流)9:50~p1828.4 12:30~大ギャップ13:25-13:50~p2125(泊)15:10
12/31 p2125 6:00~p2261 8:10~小笊11:50-12:05~笊ヶ岳12:40-13:05~2500m(泊)14:10
1/1 2500m6:30~布引山7:50-8:00~p2021(桧横手山)9:50~広河原12:10-12:30~林道終点14:10~ヴィラ雨畑15:00

谷川岳・西黒尾根

鈴木が狙っている谷川岳東尾根の観察がてら、今シーズンの雪山初め。

■12/15(土)
土合駅泊。待合室は閉鎖され、他の場所も火気使用禁止になってしまったが、3~4組が泊まっていた。トイレがいちばん暖かくて居心地がいいのは相変わらずだ。

■12/16(日)
5:10に駅を出発、ロープウェイ駐車場に立ち寄る。林道ゲート前の休憩舎(登山指導センター)に泊まれれば楽なのだが、12/1から2/17までは閉鎖されている。先を歩いていたパーティは西黒尾根入口を通過して行った。
6:20、尾根入口(標高800m)から登り始め。積雪は数十センチというところだろうが、しっかりトレースが付いており歩きやすい。すぐ上にいた大人数のパーティはラッセル訓練とのこと。7時、1000mを越えた辺りで日の出となった。木の間越しに見える峰がモルゲンロートに染まり、振り返ると白毛門も美しい。気温は-7℃だが、無風快晴で暖かく感じる。
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特に困難もなく高度を上げ、1400mを越えて眺望が開けたところでアイゼン装着。天神平スキー場の向こうに赤城山の連なりが浮かんでいる。もう少し進んだ平坦部では落ち着いて東尾根を観察できた。下半は緩やかだが、急激に立ち上がって黒い岩肌を見せ、オキノ耳へと続いている。積雪期の登攀は3月にほぼ限られる。
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西黒尾根最大の難所であろうラクダのコブ(1516m)手前では、雪から岩が覗きクサリも出ていた。雪を踏んだ跡を参考に足の置き場を見極め、クサリを使ったりピッケルを岩に掛けたりで乗り越える。そうこうしているうちに空は薄く曇ってきた。
鈴木が不調不良で普段のスピードが出ず、後から来たパーティに追い越される。ゆっくり高度を上げる間に次第に風が出て日も陰ってきた。ザンゲ岩辺りから風が強まり地吹雪状態。さらに1900mを越える辺りでは先行のトレースが消えかけているほどだ。トマノ耳に登頂し、写真だけ撮って早々に下りる。とてもオキノ耳まで行くコンディションではない。
肩ノ小屋に入って休憩してから天神尾根を下山。高度を下げると風も収まり、晴れはしないまでも元の穏やかな天候となった。熊穴沢避難小屋は全体が出ており、覗いてはみなかったが実際に使える様子。その後、時には固定ロープも付いている難所があると思っていたがトラバースで通過。振り返ると西黒尾根の全景を望めた。
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これまで天神平に下りる際はスキー場の端を通っていたが、今年は夏道に沿ってトレースが付いたらしく、トラバースのままロープウェイ駅に到着した。
(文中敬称略)

<行程>
12/16 土合駅5:10~西黒尾根入口6:20~ラクダのコブ(1516)9:20~トマノ耳11:35~肩ノ小屋11:45-12:10~熊穴沢避難小屋12:50~ロープウェイ天神平駅13:40

奥秩父・南天山~赤岩峠

10月に歩いた十文字峠~滝谷山から先へ、埼玉-群馬の県境を赤岩峠まで辿った。

■11/23(金・祝) 晴れ
三峰口からのバスを終点の中津川まで乗ったのは我々のみ。40分ほどの林道歩きで南天山登山口着。
木橋で何度も沢を跨いで行くと20分ほどで法印の滝。水量はないが、白い糸が滑り下りるような美しい滝だ。
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さらに20分少しの尾根取付点で前回下ってきた沢コースから分かれ、左岸の斜面に入る。ここからジグザグに一気に高度を上げて山頂西の稜線に突き上げ、岩稜を伝って南天山(1483m)登頂。眺望絶佳、明日歩く県境の山々から両神山にかけて眺められた。
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腰を上げ、先ほど突き上げた箇所を過ぎて西へ、沢コースの突端へ向かう。前回は山頂を踏まずにそこ(1374m地点の西)から下山したので、これでルートを繋いだことになる。立入禁止のテープを潜ると尾根の突端に壊れた祠があり、その左(南)に尾根に上がらずに道が続いている。ここは素直に道に入った。
古い道標の柱が残っているものの、案内板は失われてどこへ通じる道かは分からない。やがて道は南を向き、南に伸びる尾根に乗ったところで、現在地をP1538から出ている尾根のp1480との間の鞍部と確認した。鞍部を横断した樹木にペンキマークがあって道はさらに南へ向かうように思えるが、尾根の反対側に折り返すように付いた踏み跡を発見、これを辿れば西進する主尾根に乗るのではないか。しかし、踏み跡は尾根に上がらないまま不明瞭になり、ふたたび現れた南北の尾根を登って大岩の右側からp1538に上がった。樹幹に付いている境界見出標は何故か東京営林局のものだ。前回の下山時には、ここはすんなり通過して東進した1430m付近で行き詰って尾根から下り道に入っている。おそらく、先ほどの鞍部から尾根を直接登るのがいちばん楽だったのだろう。
p1538西の1550m小ピークを踏み、次のp1562の東側が前回下山時にトラバースのヤブ漕ぎから脱した地点だ。今回はヤブに入り込まないように右(北)寄りに行くよう意識したところ、特に迷うこともなく尾根上を進めた。樹木が邪魔な箇所もあるが、そのまま次の1550m小ピーク(前回はここを回り込む形でヤブに突入した)を過ぎる。
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見覚えのある廃棄ウィンチを通過し、前回尾根通しに下ろうとして行き詰った崖は、前回通りに南側の泥斜面から迂回。県境尾根に出てからさらに一登りして滝谷山(1659m)登頂。すでに16:30なので、ここにテントを張ることにした。

■11/24(土) 晴れ
テントを撤収し、6時に県境尾根北上開始。
樹林と落葉の道のアップダウンで1658.3m三角点(ブドー沢ノ頭)を通過し、p1609を越えると岩場がいくつか現れる。踏み跡に従って乗り越えたり巻いたりするが、次の鞍部(1560m)ではルートに迷った。立木に頼って岩の上を直進することもできそうだが一歩誤れば数メートル転落する。岩場の左右とも巻けそうなので右側斜面に下りてみると尾根に戻れない。岩の右横のバンドを少し登ってみるが、人の踏んだ形跡はなくやはり危険。結局、岩場手前に戻ると左側に容易な道があった。
岩場が一段落し、広がった尾根を登って帳付山(1619m)登頂。東西に長い山頂で西端からの眺望が良い。彼方に白く輝く山脈は北アだろうか。今度は群馬側の諏訪山(カミヤツウチグラ)から県境尾根へ登ろうか。IMG_3570

県境は、昭文社の山と高原地図で三国山からこの帳付山まで道無し、帳付山から天丸橋下降点まで実線の一般ルート、天丸橋下降点から赤岩峠まで破線の難ルートとなっている。帳付山で東に折れた県境は、一般ルートながら固定ロープの付いた急斜面あり、トラロープの岩場ありとそれなりに楽しめる。馬道のコルから地形図よりも急な印象の尾根を天丸山分岐に上がり、地図のコースタイムを確認して最終バスに間に合わせるため天丸山往復は割愛。すれ違う人がちらほらいるが、おそらく社壇乗越や天丸橋から入って帳付山を往復するのだろう。
天丸橋下降点を見送ると、昭文社地図で「岩稜帯」の破線ルートに入る。踏み跡はほぼ付いているのだが、県境が南南東に向きを変える手前(1540m、昭文社地図の「焼山」付近)で岩稜を右側に下りて踏み跡を辿ったところ行き詰った。引き返しながら探すと岩稜の切れ目から上に戻れる。反対方向から来て上から見ればルートは明瞭なのだが、下からでは目印もなく気づきにくい。
1540mから南南東に向きを変えた尾根は落ち葉の積もった急斜面で下りづらい。少ないながらテープも付いていたが、山吹峠(山の神)まで下ってみると尾根の右(南)側に道があったので、岩稜帯からもっと楽なルートがあるのかもしれない。あるいはこの道が昭文社地図にある「明瞭な踏み跡」で埼玉側の林道に通じているのか。峠から右側の樹林斜面には別の踏み跡も見えていた。
次の宗四郎山(1510m)はこの辺の峰に特徴的に急激に立ち上がり、標高差50mほどの登りはトラロープの付いた急斜面で息が切れる。山頂からは今回歩いてきた南天山から県境尾根が見渡せた。
宗四郎山から下りた後は普通の尾根道となる。次のp1490は昭文社地図に「六助ノ頭」とあるが、現地の杉の幹には「朝三山」と書かれていた。雁掛峠を経て赤岩峠に14時。
最終バスに間に合わせるため足を速め、峠から出合バス停まで地図のコースタイム2時間20分のところを1時間半で踏破。急ぎ過ぎてバス待ちが40分もあり寒かった。

<行程>
11/23 中津川バス停10:20~南天山登山口11:00~尾根取付点11:45~南天山12:40-13:00~沢コース突端13:20~p1638 14:40~滝谷山16:30
11/24 滝谷山6:00~ブドー沢ノ頭6:50~帳付山8:40-8:55~天丸橋下降点10:35~山吹峠(山の神)11:35~宗四郎山12:10~赤岩峠14:00~出合バス停15:30

アイスクライミングトレーニング/赤岳鉱泉周辺

2日間の日程で赤岳鉱泉のアイスキャンディーとジョウゴ沢のF2でアイスクライミングトレーニングをしてきました。天候に恵まれて楽しい2日間を満喫しました。
※今回は写真はありません。

参考まで、2018年12月31日時点でのアイスキャンディーの利用方法を記載します。
 ・営業時間8:00~16:00
 ・利用料金1日1000円。1シーズンパス4000円。
 ・エリア内では、ヘルメット、クランポン、サングラスを常時装着(サングラスの代わりにゴーグルやバイザーでもよい)。
 ・トップロープクライミングのみ許可。
 ・シングルロープ 9.5㎜以上 40m以上を使用。
 ・トップロープ構築用にソウンスリング2本(120cmがお勧め)とロッキングカラビナ2本。
 ・アイススクリューの打ち込み許可。
 ・テムレスグローブでのビレイ禁止。
 ・ハーネスとロープの連結用にロッキングカラビナ2本(無ければ8の字結びで連結すること)。
 ※その他にも色々ありますが、申込時に使用規定の説明があります。

上記事項は変更される可能性がありますので、事前に赤岳鉱泉に問い合わせすると良いかもしれません。

【感想】
■木村
 アイスキャンディーはトップロープを安全に簡単に素早く設置できるのでトレーニングにはとても良い環境だと思います。氷の傾斜や形状も色々あって楽しく遊べると思います。

■斎藤
 アイスクライミングは基本ステップで1回お試し程度で体験しただけでしたが、その時はすぐに腕がパンプしてしまい、ほとんど登れませんでした。今回は腕はパンプしなかったのですが、蹴り込みがなかなか決まらず、腕よりも、足や腹筋に無駄な負担がかかり、体力を消耗してしまいました。しかし、かろうじて2本くらい登りきれたので少し自信がつきました。体の使い方等の基本的な技術をしっかり身につけて、効率良く登れるようになると、もっと楽しめそうだと思いした。

西上州・マムシ岳

昨年12月に途中まで登って降雪のため撤退した西上州・マムシ岳へふたたび。今回は上天気で、紅葉を愛でつつ楽しく完了した。
参照文献は打田鍈一『藪岩魂』。

田中の運転でキリンテ登山口に9時過ぎに到着、路肩に駐車。
日向沢を渡って送電線巡視路でキリンテのコルへ上がり、送電鉄塔を通過、紅葉を見ながら急傾斜を登っていく。
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間もなく現れる大岩・岩場は踏み跡やテープに従って巻いたり、あるいは正面突破。危険な箇所にはトラロープが付いており、ルート取りに迷う場面も特にない。前回に少し難しいと思った岩場もすんなりと通過してしまった。トラロープ付きの泥急斜面はできるだけ立木や根を掴んでロープに体重をかけ過ぎないよう注意して上る。岩稜、岩場、普通の斜面と交互に出てきて飽きない。
20_1100rock  1100m付近の岩場

前回は大岩の頭(キリンテの頭)基部(標高1200m)で撤退したが、今回は問題なし。ただ、基部の岩は赤ペンキの○(ペンキの付いているのはルート中この1ヵ所のみ)よりも左にしっかりしたルートがある。大岩の頭は東の三岐からボンデン山を経る尾根とのジャンクションで、昭文社「山と高原地図」(2018年版)ではそちらにも破線ルートが記載されている(2012年版ではキリンテからの破線のみ)。
緩やかになった稜線を進むとまた岩壁に突き当たる。左側に下がる古びたロープの箇所から登り、わずかでマムシ岳(1307.7m)山頂。地味な山名標が立木に取り付けてある。南側が開けており、先月に前半を辿った三国山から帖付山へのルートも眺められた。
30_mamusi  マムシ岳からの眺望

マムシ岳から西へ岩稜を辿り小岩峰を越え、小ピークへの斜面を登り、下りる。
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『藪岩魂』には「似たような岩稜が延々と続く。いい加減飽きるころ」とある部分だが、それほどの時間もかからずに「シオジ保護林」の看板の立つマムシのコルに着いた。
ここからは保護柵の付いた遊歩道に沿って下りるが、『藪岩魂』にある通り、途中で柵は消えて沢沿いの道になる。古い石垣や朽ちかけた丸木橋があるので、かつての作業道だったのだろう。日向沢に出る直前で柵が復活。ゲンナイ登山口には「原生林自然観察路」の大看板があるが、標高差300m以上の稜線まで行って戻ってくるだけの道で「自然観察」する人がいるのだろうか。キリンテ登山口までは車道を歩いて戻った。
(文中敬称略)

<行程>
キリンテ登山口9:10~大岩の頭(キリンテの頭)10:30~マムシ岳11:00-11:25~マムシのコル12:25~ゲンナイ登山口12:50~キリンテ登山口13:30