谷川岳・西黒尾根(雪洞泊)

念願の雪洞泊!どうしても経験しておきたかった。満を持して企画。
完成した雪洞
完成した三つ星ホテル級の雪洞。白毛門をバックに記念撮影。

■3/2(土)
11:15にベースプラザ集合。積雪量は190cmで、400cmを超えていた一昨年に比べ、だいぶ少ないことがわかる。今回は1年前の先輩たちの記録(⇒ 2023/2/4~2/5 谷川岳・西黒尾根(雪洞泊))を参考にした。鉄塔まで登り、その後1,100m付近までに適地を見つけようと決めた。さぁ、無事に見つかるだろうか。

11:40頃、西黒尾根登山口を目指して出発。
登山口付近の林道沿いで、雪を掘っている2名を発見。彼らも雪洞泊のようだ。
そこからすぐに斜面に取り付けばよかったのだが、林道沿いのトレースをたどって進むうちに、3つほど谷地形を越えた。斜面側から落ちてきたであろう硬い雪の塊がゴロゴロ転がっていたりして、慎重に通過。小雪混じりの風が吹く。なんだか嫌(?)な気がしてきた。だいぶ長く歩いてしまったな・・・と地図(携帯のGPS)を確認したら、完全に行き過ぎてしまっていた。巌剛新道のほうにかなり近づいているではないか!

道間違いを反省し、引き返す。写真を拡大するとゴロゴロの塊が見える。
12:45頃、ようやく西黒尾根の末端へ。トレースも無いので適当に登りやすそうなところから取り付き、少しトラバース気味に登っていった。

途中何回かプローブで積雪深を測るも、50~90cmと浅すぎて、これでは雪洞泊にならない。今晩の宿は本当に見つかるのだろうかとドキドキ。
尾根に上がり、引き続き道を開拓していく。鉄塔に着いたのが13:30頃か。さすがにそろそろ適地を見つけようと仕切り直して、その先の広い尾根に出てみると、充分な吹き溜まりを発見!

プローブを差してみると220cmだ。その場所に決めた。


14:10、掘り出し開始。いくつか気付いたことを振り返る。
◯積雪の様子:昨日の新雪が30~50cm程積もっており、その下には雨で濡れたと思われる層、ガリガリの硬い面、しまり雪の層、そして2月の雨と思われるグズグズのざらめ雪の層で成り立っていた。

◯本来は斜面をL字型に切り出して入口を平らにすべきだったのだが、最初に奥に深く掘っていってしまったため、しばらくの間、中で1人しか作業できなかった。その間、鹿内さんには快適なトイレを作ってもらった(翌朝、このトイレは一般道の鉄塔から丸見えで、使えなかった)。
◯スノーソーでダイヤ状に切り込んで、綺麗に雪柱を取り出せると気持ち良い。

◯天井と地面の成形は難しい。天井を削ると足元に溜まり、エンドレス作業になりそうだった。

◯登山道の真横で傾斜の無いところに作ったため、掻き出した雪を斜面から落とすことができず、苦労した。その分、入口両脇にブロックを積んで、風よけ付きの通路を作った。

17:10 3時間もかけて、快適な雪洞が完成した。横250cm・縦200cm・高さ100cm・入口幅50cmだ。

日没後に外から見た様子。夕飯は、青栁さん特製のクラムチャウダーを美味しくいただいた。

就寝前の様子。

<テントに比べて、雪洞泊の良いところ>
・中は風の影響を受けない、静寂
・冷え込みすぎない、モノが凍らない、結露しない
・水などをこぼしても、下は雪面なのであまり気にならない
・ろうそくを灯すと、暖かく感じる

■3/3(日)

翌朝は4:30起床。2時間後の6:30発のはずが・・・
お湯づくり・トイレ(一般道横で早朝から登山者がおり、潰す前の雪洞のなかで用を足すことに(苦笑))・雪洞崩し・アイゼン装着などしているうちに7:15になってしまった。
7:45ベースプラザに帰還。その後徒歩で土合橋に向かい、基本ステップ講習(緊急避難(低体温症対策))に合流した。

今回は時間をかけたので、とても快適な雪洞泊となった。今後、緊急避難の際にも落ち着いて行動できるようにしていきたい。

表妙義・星穴岳

かねてより行ってみたかった星穴岳に平さん、大野さんと行きました。

■3/9(土)
8日に降った雪の影響を考慮して、星穴岳の前哨戦は丁須の頭から物語山へと計画変更したのだが、遅めの集合に高速道路の事故渋滞が加わり時間が押したため、物語山とセットにしておいた阿唱念の滝散策のみとした。
山と高原地図(昭文社)に破線で示された道は、枯葉と雪のミックスで意外と歩きづらい。
洞穴/滝へ
大野さんが「熊の足跡では?」と。真偽はいかに。
熊?
滝は水がほとんど落ちていない。
阿唱念の滝
往復1時間半ほどで下山し、幕営地の国民宿舎跡に移動。前日の雪のせいか他に人はいない。結局朝まで我々のみで、共同テントを広々と使って大野さんの持ってきた数々の豪華なおつまみで宴会を繰り広げた。星がとても綺麗で楽しい夜を満喫。
ディナー/テントの夜
しかし我々はこの時、まさか明日の山行があのように厳しいものになるとは思いもしなかったのだった。

■3/10(日)
思いの外撤収作業がはかどり、想定よりも1時間早い7時に中之嶽神社からスタート。
中之嶽神社
神社を過ぎたすぐから雪がやや積もってきている。
石門上
さらに石門の分岐を過ぎると、日陰には雪の少し深いところが現れてきた。分岐にてハーネスなど装備を整え、破線ルート開始。
破線ルートスタート
コルにてやや長い鎖場を過ぎると岩壁があり、念のためロープを使って登る。
岩壁おわり
大野さんがトップ、鹿内、平さんの順で続くが、登山靴では登りにくい。
雪の岩山西岳
西岳からが難しかった。トラバースが多いのだが、日陰は凍った岩の上に雪が積もっており、手がない場所があったりと非常に厳しい。また、先行パーティがいないためルートがわかりにくい。
雪道
先に行ってルートを探してくれる大野さん。私がビビっているポイントもサクサクと進んでいる。平さんに足の置き場などアドバイスを頂きながら、やっとのことでついて行く。雪があることでここまで難易度が上がるのかと驚きだ。岩を迂回しながら進む。
懸垂1/トラバース
最初に懸垂下降したところからルートが不明瞭になり、戻ったり進んだりを繰り返した。
これも雪がなければわかりやすかったのだろうが、降りたところから結構な雪がついていて道がわからない。怖かったので私だけお守り的にチェーンスパイクを着ける。
トラバース
どうにかテープをたどり、本来のルートに戻った。
星穴上部に着いたのが14:30。星穴岳ピークまではクライミング要素があり、ロープを使うのでそれなりに時間が必要である。早い時間にスタートしたことで安心し「全然余裕だな。帰りに道の駅に寄って下仁田ネギを買いましょう」なんて言っていた自分を叱りたい。そんな時に大野さんが「ここで荷物をデポして登りましょう」。いままでの時間経過から星穴岳ピークは断念かと思っていた私はその強さに感動した。荷物を下ろし、平さんと私はクライミングシューズに履き替える。平さんトップでピークに向かい、無事登頂。
最後の登り星穴岳
懸垂で降り、星穴の懸垂支点には15時。
星穴懸垂
ここからかの有名な華やか空中懸垂。
空中懸垂
この頃には風も止んで南面ということもあり、雪はほとんど消えていた。星穴を降りてすぐに4回目の懸垂。
ここで16時。駐車場が閉まるまであと1時間と迫り、コースタイム1時間半の道のりを急いで下山。
下山
大野さんと平さんのスピードに引っ張られ、無事17時に駐車場に着いたのだった。

<行程>
3/9 サンスポーツランド下仁田駐車場13:40~阿唱念の滝14:30~駐車場15:10~幕営地16:00
3/10 中之嶽神社駐車場7:15~轟岩7:25~西岳8:40~星穴岳ピーク14:30~星穴16:00~駐車場17:00

<主な登攀装備>
50mロープ×2、ヘルメット、ハーネス、Pas、確保器、カラビナ、スリング、プルージックロープ、クイックドロー、クライミングシューズ、バイル

<所感>
〇鹿内
終わってみればとても楽しく、たくさんの経験ができて本当に良い山行だったが、雪の岩場は難しかった。終始電波が通じていたので、何かあっても連絡はできると思えたのが不幸中の幸いである。また平さん大野さんに常に先行してルートを確認して頂いたり、自分はついて行くだけになってしまったのが申し訳ないところ。もっと経験を積んでいかなる時も焦らずやるべきことをできるようになりたいと思う。ありがとうございました。
〇大野
日陰と日向の差は想定以上でした。雪が付くとグレードが上がることを改めて実感しました。天気に恵まれ、日照時間にも助けられ、明るいうちに下山が出来てホッとしました。
〇平
トレースのない雪の中に足を踏み入れたとき、あれっと思った。意外に雪が深い。道に迷いながらも、際どい岩場を通過し、明るいうちに下山できるとは素晴らしい。ビバークが頭をよぎったこともあったけれど、ちょっとした雪稜もどきでいま思えばおもしろかった。もし次に行く機会があれば物足りないかも。

八ヶ岳・阿弥陀岳南稜

厳冬期バリエーションルートの経験を積むべく、今回は阿弥陀岳南稜に挑戦した。
結論、P3ルンゼで小規模ながら雪崩にあってしまった。怪我もなく無事だったのが何よりだが、かなり肝を冷やした。我々を追い抜いて行った先行者がルンゼ上部で誘発したもので、面発生、幅3~5m程度で、サイズ1(もしくは、それ未満)。ルンゼの中に1人残っていた自分が雪を被り、完全に「地形の罠」に居た。積雪期における様々なリスクを身をもって考える機会となった。
写真多めで振り返りたい。

■2/10(土)
初日は立場山までということで、都内8時集合。のはずが・・・私が思いっきり寝坊をしてしまい、大反省! 9時都内発、青栁カーにて舟山十字路に向かい、12:30に山行開始となった。


立場川を渡ったあと尾根に登るまでが急なので、最初からアイゼンを装着。ビーコンチェックをして出発した。さて、阿弥陀南稜方面の分岐に来てみると、ノントレースだ・・・。


薄い雪の乗った急斜面を登り尾根に出た。天気は良い。去年は中央稜~御小屋尾根に行っており(⇒ 2023/1/21 八ヶ岳・阿弥陀岳中央稜)、南稜はどんな顔を見せてくれるか楽しみだ。


段々と雪が深くなり膝下30cmくらいの新雪が重い。16:30にようやく立場山に到着した。もう少し先に進むか考えたが、ラッセルが膝上になりそうだったので、もう日没時刻でもあるし雪がチラついて来たのでここを幕営地とした。


新雪がサラサラなので、4人で肩を組みながら縦横に歩いて踏み固めてからテントを張る。夜はカボチャ鍋、山談義が進んだ。かろうじてau系列の電波が入ったので、SCWを確認したところ、朝方に降雪の気配。出発を少し遅らせることにした。

■2/11(日)

6:30に出発。昨日に引き続きノントレースだ。先頭を交代しながら進む。


青ナギ通過後、振り返る。甲斐駒ヶ岳なども綺麗に見えた。


段々と傾斜がきつくなり、ほとんど中村さんがラッセルをしてくれた。無名峰が近づいて来て、ふと左手を見ると、阿弥陀南稜全貌が!美しさに見とれる。


無名峰までの最後の急登。新雪なので、ラッセルの二番手も結構辛い。

無名峰から
8時過ぎにようやく無名峰に到着、晴天で、展望がひらけて感動! 大休止。


天狗尾根も格好良い。さてこのあたりから後発の登山者が追いついて来た。当日朝発の彼らは軽快な足取りでトレースを辿り、我々が前日からずっとラッセルだったことを知らなかった模様。


おそらくP1。


P2だと思う。後発のソロ登山者も写っている。


振り返ると、素晴らしい景色。こんな尾根を歩いて来たのだ。


気になっていたP3トラバースの前半は、夏道も見え、さして問題ではなかった。このあたりから後発の方が抜かして行った(以降「先行者」と表記)。


P3ルンゼ取付きの様子。そこまではやや下りのトラバースだが、ワイヤーも出ていたのでしっかり掴んで進行。ただし取付きは腰の深さくらいまで吹き溜まっていて、先行者が少し苦労している。松本さんがワイヤーを掘り出してくれ、我々はそこに一旦セルフビレイをとった。


膝上の深さだが、キックステップで登れるので、ロープを出さずに進行することとなった。ちょうど10:00。


振り返る。後ろは中村さんと青栁さん。段差が大きく、ピッケルを深く刺して、手もつかないと登れない。その後、先行者がルンゼ中盤で苦労しており、どうやらそこから先は雪が薄くなってピッケルもアイゼンもかかりづらい模様。松本さんより、後発の我々には待てとの指示。この間に後ろからさらに数名が追いついて来て、ルンゼに10人近く溜まった状態に。松本さん曰く、本来は右手の方に斜めに登っていくのでは、ということでルート修正。2人がクライムダウンして来た。ルートが分かった途端、後発の方々がどんどん抜いていく。


さて、草付きのトラバースになるので、ここでやはりロープを出すことになった。松本さんが先頭、私が末端を持ち、登り切った気配を感じた後にインラインエイトノットでアンザイレンした。中間を、同じく待機していた中村さんと青栁さんがアッセンダーで登っていく。

エイトノットのたるみを直して結び直し、上の写真を撮った直後のことだ。10:41雪崩発生。
先行者(トップ)の叫び声と共にゴゴゴという地鳴りを聞いて見上げた時には、既に雪の塊が降ってきていた。先ほど松本さん達が行きかけてやめたルンゼ上部からだ。
咄嗟に左に一歩だけ避けた。あまりにも一瞬で何もできない。新雪だったので、ザーーーーッと頭から被って、5秒くらいだっただろうか。

青栁さんが一所懸命「大丈夫かーーー!!」と何度も声をかけてくれた。雪に深く刺していたはずのピッケルが見当たらない。声かけに応答していくらか冷静になってみると、ピッケルはスリングとリーシュにつながったまま後ろにぶら下がっていた。ロープも結んだ直後だったので安全だったことが分かる。
ロープの末端を急いでまとめ、恐怖を抑え込んで登っていった。姿は見えないが松本さんがロープを引いてくれているので、信じるしかない。

雪崩破断面
ルンゼを登り切ったら破断面を発見した。厚さ30cm程度だろうか。数日前の降雪が西側からの風により移動したのか、だとしたらウィンドスラブ。ルンゼ上部の岩場を数メートルだけトラバースする必要があって、先行者がそこに蹴り込んだ時に誘発したようだ。

いずれにせよ皆と再会して本当に安堵した。
さて、山頂まであと少し。しばらく足の震えが止まらなかったが、気を強く持って、再出発。


P4ルンゼのトラバース。


ちょうど12:00に登頂! 無事に登り切れたことに感動し、固く握手(ハグ)。先ほど一瞬立ち込めた灰色のガスも晴れて、無風快晴の山頂となった。先月に挑戦した大同心もよく見える。

さて、下山は中央稜の予定だったが、分岐まで行ってみたらまさかのノントレースだったため、下山ラッセルで消耗することを考え、御小屋尾根より下山した。昨年に比べて雪が良くついていたので、途中でアイゼンを外して快適に足を滑らせながら降りた。

<行程>
2/10 舟山十字路12:30~立場山(C1)16:30
2/12 C1 6:30~青ナギ7:00~無名峰8:10~P3ルンゼ基部10:00~阿弥陀岳12:00~御小屋山14:20~舟山十字路15:20

<所感>
○松本
最後に登ったのが10年以上前だったか・・・ ルート上の各所の記憶、結構飛んでいました。
積雪の状態により毎回印象が異なるのがP3ルンゼ。易しくもあり、いやらしくもあります。近年大きな事故があったことから、改めて判断ミスの無いよう努めたつもりでした。ですが、結果ヒヤリハットで済んだものの、雪崩インシデントをしっかり回避出来なかったことが今回最大の反省点となりました。
それからもう一点気づいたこと。我々パーティーは習慣から縦走用アックス1本というスタイルだったのに対し、外すべての方々はアックス2本で登られていました。登攀スタイルの変遷を感じさせられた山行でした。
○中村
私にとって初めての冬期バリエーションルートということで、緊張する場面もあったが、とても充実した山行を経験できた。
阿弥陀岳南稜は冬季アルパインの入門ルートということであるが、今後他のルートにも登ることができるよう多くの知識や技術を身に着けたいと感じた。
同行していただいた皆様ありがとうございました。
○青栁
登山口までの車の乗り入れでスタックしかけたことに始まり、新雪ノートレースのラッセル、そして雪崩の直撃と、大変勉強させられた山行でした。経験値は上がりましたが、まだまだ序ノ口なのでしょう。
これからもっともっと面白くなるのだろうと期待が膨らみます。
○秋永
先月JMSCAの積雪期山岳レスキュー講習会・クラス1を受講したばかり。雪質、天候、ルート、パーティ行動やリーダーシップ、様々な視点で積雪期における多様なリスクと考え方について学んだ。頭では理解していたものの、実は雪崩を見たことがなかった。まさか、いきなり経験することになるとは・・・ 今回学んだ多くの視点を活かして引き続き雪山に向き合っていきたい。また、積雪期に初めてロープを扱ったが、素早くさばいたりまとめたり、慣れが必要だった。いずれは、阿弥陀北稜にも挑戦する。

ラッセルを学ぶ/上越・棒立山~タカマタギ

「基本ステップ ラッセルを学ぶ」企画にて、棒立山への取付き付近でテント泊し、翌日、棒立山を経てタカマタギへの途中までワカン・アイゼン歩行により往復した。

■2/17(土)
15時30分に土樽駅に集合し、2kmほど徒歩で移動、棒立山への取付き付近でテント泊した。
今回はテントまたはツェルトを各自持参し、それぞれスコップで雪を平らに均(なら)すなどして設営した。私の場合は、80cmほど雪を掘り、雪面を平らにした上で立木を利用してツェルトを張った。また、テント/ツェルトをデポしての登山であったことから、厚めのテントマットを持参して快適に就寝することができた。
ツェルト泊
夕食は各自に用意し、私のツェルトに集まった。私はもつ鍋(野菜多め)をつまみに美味しいお酒をいただいた(鹿内さん、「上善如水」ごちそうさま)。
翌朝6時出発ということで、22時に各自のテント等に戻り就寝した。

■2/18(日)晴れ
ワカンを装着し、ビーコンチェックをした上で山行を開始した。
ルート上にはツボ足以外にもワカンやスノーシューのトレースがあり、所々地面が見えている場所や踏み抜いた跡があったが、ワカンでの歩行には問題なく、棒立山山頂に到着した。気温が高く風もない天候で汗が噴き出してきたため、途中で中間着やアウターを脱いだ。また、時間が経つにつれ、太陽に照らされた雪面が緩み、急斜面ではキックステップで登らなければ足場が崩れ滑るような状況であった。
雪中歩行
今回は「ラッセルを学ぶ」企画であったが、トレースが付いていた上に積雪も少なく、ラッセルを行うような場面はなかった。

棒立山でワカンからアイゼンに替えてタカマタギ方面に向かったが、タカマタギとのコル付近で11時になったため、下山を開始した。今回はタカマタギの登頂を目指すものではなく、帰りの電車の時間もあることから、途中であっても11時には下山を開始する旨、事前に金澤リーダーから説明されていた。
下山時は雪がかなり緩みワカンを外したこともあって、ツボ足のトレースを辿っても踏み抜くことが多く、2月中旬とは思えない残雪期のような状況であった(当日の湯沢の気温:最高16.6℃、最低0.7℃)。
当日の天気図

テント等を撤収して土樽駅に戻り、15時24分発水上行で帰路に就いた。
ルート図

<行程>
2/18 テント場(棒立山取付き付近)6:20~棒立山10:10~棒立山とタカマタギとのコル付近11:00~棒立山11:30~テント場13:10~土樽駅14:30

日和田RCT

昨年足を負傷してしまった八重樫とリハビリ的に日和田に岩トレに来ました。今日のお目当てはトップロープで松の木をチャレンジすること。8:30に男岩に着いたら貸切状態! 11時頃まで我々のみでした。
貸切

貸切で支点構築

ステミングフェースをロープに引き上げられる感ありでクリア。その後バルジをやるため隣の支点にロープを掛け替えようとしたのですが・・・
高めのポイントにスリングをつけてセルフビレイの後、自分のロープを外さずに支点移動してしまえばすぐ終わったところを、全部外して置く場所もないような岩の上にロープを置いてしまったため、悪戦苦闘して1時間半が経過!戦いの様子。
悪戦苦闘中

悪戦苦闘中

ようやくセットしてこちらもなんとか登り、リッジのほうに移動。
日も照ってきてポカポカになってきたところ体に違和感が。花粉です。さらに八重樫が久しぶりの岩だったためか手のひらから結構な流血。喉も目も腫れてきたこともあり、14:30で終了することにしました。松の木のチャレンジはできず、課題を残したままとなりました。
ロアダウン
また機会を捉えて練習に来たいと思います。

八ヶ岳・赤岳真教寺尾根

■2/11(日)
小淵沢駅からサンメドウズ清里スキー場までタクシーで7170円。リフト券売り場は大混雑で30分並ぶ。登山者はリフトに乗れないとかパノラマリフト往復券しか販売できないとか、多少のすったもんだがあったが、最終的にリフト1回券を2枚(1800円)でパノラマリフトに片道乗車可能、ということに落ち着いた。
リフト終点(1900m)からは膝下の新雪であったが、真新しいトレースがある。

途中で会った下山中の方々に状況を訊くと、昨日から猛ラッセルで撤退することにしたが、もう少し先まではトレースをつけているとのこと。ありがたい。
適地は2250m付近、2300m扇山山頂付近にもあったが、2316mピーク手前まで足を延ばして本日の幕営地とする。
夕食は贅沢に新鮮ぷりぷりの鳥鍋だ。
鳥鍋
夜間は風がごうごうと吹いていたが、それほど寒くはなかった。

■2/12(月)
4時起床。テントから出ると5cmほど降雪があったようだ。
本日の先行者と思われるトレースのおかげで、順調に高度を稼ぐ。
2450m付近から先行者トレースは県界尾根に向かってトラバースするよう方向転換している。
ここから、昨日つけられたものと思われる古いトレースに乗り換える。

2600m付近から岩の露出したエリアが断続的に現れ、ここで50mロープを出す。120~150cmのスリングが大活躍した。

天気は予報よりも早く良くなり、八ヶ岳ブルーを満喫する。赤岳を見上げても麓を見下ろしても、左の天狗尾根も右の県界尾根も、すべてが絶景。これだから八ヶ岳はやめられない。

2780mから上の岩稜帯は急勾配となり、且つ支点を取りづらいと判断し、天狗尾根の方向へトラバースしてから直登して一般道に合流する。

計6ピッチ。総じて新雪が締まっておらずスカスカだったため、無駄に体力と時間を使った感がある。
3人とも赤岳山頂にはなんの未練もなかったので、文三郎に合流すると直ちに行者小屋に下る。
長い南沢を惰性で進み、いつものように疲労困憊で美濃戸に着いた。

<行程>
2/18 パノラマリフト山頂駅10:50~牛首山12:10~2316ピーク手前(C1)13:30
2/19 C1 6:10~2600m付近10:00~文三郎道合流13:30~行者小屋14:30~美濃戸山荘17:10

南八ヶ岳 三叉峰ルンゼ

今回、私たちは三叉峰ルンゼに行ってきました。穏やかな陽気の中、アルパインアイスを楽しんできました。


01 F2大滝とF3
 F2大滝とその奥にあるF3の様子です。大滝は3分の2ほど雪に埋まっています。 02 F3
 F3の様子です。 03 ナメ
 その後はナメが続きます。 04 高橋
 まもちゃんがナメを登ってきます。 05 木村
 私も写真を撮ってもらいます。 06 石尊稜上部岩壁
 三叉峰ルンゼの右俣から石尊稜上部岩壁を望みます。 07 石尊稜雪稜
 石尊稜の雪稜の様子です。 08 石尊稜上部岩壁取り付き点
 上部岩壁の取り付き点の様子です。 09 石尊峰頂上記念撮影
 石尊峰の頂上で横岳の峰々を背景に記念撮影です。 【時間経過】  赤岳山荘(4:00)~柳川北沢登山道~柳川北沢右俣出合(6:30)~柳川北沢右俣~小同心ルンゼ出合(7:00)~三叉峰ルンゼ出合(7:30)~三叉峰ルンゼ~三叉峰ルンゼ二俣(11:00)~石尊稜(12:50)~石尊峰(14:30)~地蔵尾根分岐(15:00)~地蔵尾根~行者小屋(16:00)~赤岳山荘(17:40) 【感想】 ■木村  最高の天気の中、念願の三叉峰ルンゼを遡行できました。最初に遡行を試みたシーズンから数えて7シーズンの年月がかかりました。山行に付き合ってくれたまもちゃんに感謝です。  石尊稜に出るまでに長い時間がかかりましたが、5日から6日にかけて関東甲信に降った大雪による積雪の影響は大きかったと思います。やはり氷瀑が雪で埋まる前の12月頃に遡行すべきだと思いました。 ■高橋  先日の降雪が気になっていたが、柳川北沢右俣に入るとしっかり踏まれたトレースがあった。ところが、三叉峰ルンゼはトレースなし。腰から太ももまでのラッセルとなる。後続も来やしない。氷瀑もほとんど雪に埋もれていた。ダブルアックスをハイダガーで急な雪面に押し付けながら登っていると、手袋のインナーまで凍り付き指が痛い。あまりの痛さに素手を出すと、親指以外の全ての指が第一関節まで真紫色になっている!こんな急峻なところで手袋の交換は不可。血行を促進するため、指先を膝に叩きつけながら登った。落ち着いたところでグローブを交換、予備のグローブのありがたみを知った。帰宅して「つぎはぎ」だらけのグローブを見ると今回の山行で表層に大きな穴が複数空いていた。石尊稜上部岩壁の登攀は冬用グローブ着用での初クライミングとあってか、緊張した。総じて反省点はあるものの、ひとまず登れてよかった。応用力が試されたと感じたが、広さんの知識と技術・技能のおかげで超えられました。アイスが出ているときに再訪したい。

八ヶ岳・大同心稜

今回、冬季バリエーションルートのデビュー戦として、本科生のみで大同心稜に挑戦した。
「連れていってもらう」ではなく、「身の丈にあったチャレンジをしたい」にこだわった企画。

事前に講師の大先輩方に相談をし色々助言していただき、また二人で話し合って装備や計画を何度も見直した。13日に降雪があり、本番14日は先行者もおらずノートレースとなったため、大同心基部での撤退も大いにあり得たが、今回も天気の神様に恵まれ、無事に登頂し帰ってくることができた。今年1本目の自主企画として、とても印象深い。
以下、写真と共に振り返る。

~・~・~・~・~・~・~

■1/13(土)

八ヶ岳山荘に車を停めた。同日に自主山行に来ている硫黄岳組(⇒ 1/13~14 八ヶ岳・硫黄岳)とも顔を合わせ、また会いましょうと挨拶。10時頃、軽アイゼンをつけて出発。13:50には赤岳鉱泉に着いた。降雪が強まってきたが、翌日のルートの確認のため大同心沢入口へ。上の写真のように沢側(右手)と、今回進むべき尾根側(左手)に分かれるところがあり、トレースを確認できた。尾根側にさらに10分くらい登ったところで、確認を終えて引き返した。帰り際に、青栁さんの真新しいピープスのビーコンを使って1回だけ簡単に捜索練習。風雪も強く寒いので急ぎテントに戻り、翌日に備えた。夜は豚汁。

■1/14(日)
3:30起床。5:30発のはずが少しもたついてしまい、5:55出発。昨晩の降雪で平均20cmくらいの新雪か。大同心沢から尾根に上がり、しばらくはトレースがあり安心していたのだが、途中でその足跡が消え、先行者が居ないことが判明。気を引き締めて高度を上げていく。


日が昇り、硫黄岳、阿弥陀岳などが綺麗に見えてきた。樹林帯上部は傾斜も強く、風で飛ばされた新雪が草木の上に深く溜まり、ステップが切りにくい。


いよいよ、大同心基部に到着した。雲稜ルートの取付きで準備をするクライマー2名を発見。小同心への長いトラバースなど周囲を観察しながら、体調、気力共に問題ないことをお互い確認した。ほぼ無風の快晴、アタックできそうだ。


今回いちばんビビっていた最初のトラバースの下り。その場に立ってみると意外と幅があり、新雪もなく大丈夫そうだったので意を決して進行。


その直後はルンゼの入口が雪深く、太腿くらいまであった。ステップを切るにも新雪か緩いので、二人で相談した結果、ロープ(今回のために青栁さんがべアールの30mを購入)を出すことにした。すぐ左上の壁が南稜ルートの取付きでハンガーボルトが見えたので、そこで始点を取りムンターで確保。岩角で支点をつくり、交互にルンゼを登っていく。


最後のピッチ。ここは安全なテラスなので写真を撮る余裕があった。ロープを出した後の合計4ピッチのうち後半2ピッチは岩の手がかりが多く、雪も薄く締まっていたのでロープをしまっても良かったのだが、安心感を優先した。


大同心直下。右に巻く。


すぐに噂のチムニーが現れた。手がかりも多くお助けロープもあった。落ち着いて乗っ越したら、もうあとは広場だ。


抜けてきたルンゼを振り返る。あんなところから出てきたのか!
実は今回、最初に計画したのは横岳への縦走だった。そこへのアプローチを一捻りしたくて大同心稜にしたのだが、調べれば調べるほど大同心稜だけでも登り切れたら大成功という考えに変わっていった。前日まで二人で相談していたことだが、改めて大同心ピークをゴールとし、感動のビクトリーロードへ。


登頂。小同心や赤岳をバックに。


山頂からの360度絶景は遠く北アルプスまで綺麗に見渡せ、本当に感動だった。

さて、ここから硫黄岳までの縦走へと気持ちを切り替えたが、爆風のため1.5時間かかってしまった。風によろけたり、まぶたが凍りかけたのか瞬きしづらくなったりと心折れそうになったが、青空の下に気を強く持って進行。


硫黄岳山頂にて。
赤岩の頭からは去年の経験通りほぼ無風で、さっきまでの暴風(たぶん平均15、ときおり20m/s?)が嘘のよう。阿弥陀北稜や赤岳、横岳から大同心の稜線を何度も振り返りながら下山した。

テントと荷物をデポした赤岳鉱泉に戻る。疲れもあったのか撤収に時間を要し、15:20発。結局八ヶ岳山荘に戻ったのは17:50に。最後の林道でヘッドランプになってしまったのが反省点だが、本科生2名で挑戦し無事に帰ることができたので、達成感が大きい。

<行程>
1/13 美濃戸口10:00~美濃戸山荘11:20~赤岳鉱泉(幕営)13:50
1/14 赤岳鉱泉5:55~大同心稜基部8:35~大同心11:15~硫黄岳13:00~赤岳鉱泉14:20-15:20~美濃戸口17:50

<所感>
○青栁
お誘いいただいた時は「雪山のバリエーションはまだ早いのでは・・・」と思っていましたが、行ってみると想像したより易しいルートで、好天にも恵まれて最高の山行になりました。
○秋永
ちょうど2年前の1月に冬山を始めて、2年でここまで挑戦することになるとは想像がつかなかった。昨年のアイスの講習と阿弥陀中央稜の経験から、アイゼンの前爪を岩場にかけ、ピッケルをダガーポジションで使うことには不安がなく、ルンゼに入ってからはビビらずに進むことができた。横岳の縦走はいずれ挑戦する。

雪山行動マネジメント及び雪崩対策訓練

雪山行動マネジメント及び雪崩対策訓練を白毛門登山口周辺にて実施した。

■2/3(土)
・雪崩ビーコン操作、グループチェック
 ビーコンの基本的な使用方法の説明を受け、グループチェックを実際に行った。
・雪崩ビーコンによる操作とプロービング
 埋まっている方向によって電波の方向性が異なるため、ビーコンの捜索に特徴が出る。
サーチ
 コールは「サーチ」→「シグナル」→「ファイン」(3m以内)。周囲にわかるように伝えることが大事。
 ファインに入ったら慎重に。深い埋没の場合のビーコンのサーチの特性も体験。
深い埋没のビーコン
・雪崩ハザード評価
 地形から情報を得る。また、ピットを掘って断面を観察、ハンドテストを行い弱層を見極める。
弱層の見極め
・積雪の安全性テスト(弱層テスト)
 スノーソーで四角柱を切り出し、スコップを利用してコンプレッションテストを行う。
切り出し弱層テスト
・掘り出し
 バケツリレーのごとく並んで、スコップで雪を後方に送りながら掘り出す。
掘り出し

終了後はテント設営し懇親会。雪の宴会場で大いに盛り上がった。
宴会

■2/4(日)
・雪崩サーチ&レスキュー
 本科生2名+研究生2名を単位とした2グループにて、実際に雪崩があったことを想定してビーコン操作から掘り出しまでの一連の流れをシミュレーションする。
シミュレーション
・掘り出した後の搬送
・雪崩に埋まったと想定しての埋没体験。想像以上に雪が重く、数十センチの深さで動けない。

2日に渡って学び、実際の雪崩遭遇を模した体験を行うことで、非常に身になった講座だった。

アイゼン&ピッケル技術研修(富士山)

毎年恒例の雪上訓練。昨年は谷川岳(⇒ 2022/12/18 アイゼン&ピッケル技術研修)、今年は富士山で実施した。
前日土曜日に吉田ルートの馬返しに集合。この日、暖気の影響で東京では20度を超えるような記録的な高気温だった。標高約1,400mの馬返しも春のような湿った空気で、雪もない。駐車場横の草っぱらの上にテントを張り、翌日に備えた。

馬返しから出発
当日は朝5時に出発した。

まず、二合目までは足幅の感覚を確認。2本のレールの上を歩くように、アイゼンを着けたときのことを想定して、足を肩幅に開いたまま運ぶ練習だ。
続いて五合目まではフラットフッティングと静荷重を意識。アイゼン歩行で12本の爪全てを効かせるイメージと、岩などがミックスになっている場所でいい加減に足を置いてバランスを崩さないことを念頭に、そっと荷重を移していく。

六合目(安全指導センター)到着
佐藤小屋から六角堂の付近まで進んで、アイゼンを装着した。そこからは、雪のある場所を求めて西側へ登る。

雪斜面を求めて
少し戻ってふたたび登り、2,500m付近でようやく氷と雪のついた適当な斜面を見つけた。

登下降の練習
そこでは、アイゼンとピッケルを使った登下降、トラバース歩行、ターン、急斜面でのダガーポジション、そして強風時の耐風姿勢を練習した。
また、アイゼンを外しツボ足での歩行も試し、フラットフッティングではなく、トゥかエッジを効かせるように歩いた。

滑落停止の練習
最後に、僅かな距離ではあるが、滑落停止の練習。

訓練場所付近は、気温の高い正午で大体マイナス7℃。風速は5m/s前後、たまに強めに吹いて10m/sくらい。体感温度はマイナス10℃くらいだったかと思う。

佐藤小屋にて
佐藤小屋に戻って集合写真。

アイゼン・ピッケル歩行の技術もそうだが、通称「富士雪訓」では、何より耐寒訓練も兼ねているので、様々な装備や寒さに対する感覚など色々なことを思い出し、冬山に気持ちを向けることができた。

<行程>
馬返し5:00~六合目9:00~訓練終了、下降開始12:30~佐藤小屋13:00~馬返し15:20