つづら岩RCT

今回、チームmeatコンビは前回の二子山に続きマルチピッチクライミングのトレーニングのため、東京都西多摩郡檜原村千足のつづら岩にやってきた。青梅で40℃を記録した猛暑の中、淡々とクライミングを重ね、無事生還。帰りに立ち寄ったセブンイレブンのソフトクリームがおいしかった(特にコーンが香ばしい!)。

保岡さんを拾って中央道を八王子ICで降り、2時間30分で千足に到着した。ここから1時間のアプローチ。樹林帯は日差しが遮られ、時折涼しい風が吹き抜ける。しかし、気温と湿度が高く、大汗をかいた。8時30分から登り始め、天狗滝、綾滝を通過し、9時30分には岩場に到着。水を飲んだりハーネスを着けたりして10時から登り始め、15時に終了。

■右クラック Ⅳ
慰霊碑の真下からアプローチする。クラック沿いに登る。ハングしている下のポイントに無念が漂う残置カムがあり、ありがたく利用させてもらう。ハングを越したところの1P目の終了点手前が悪かった。20mくらいだがしっかりしたテラスがあり、練習のためピッチを切った。
2P目は一段登ったところの大岩を抱くように回り込み、手足が少ないところをずり上がる。10mで終了点。あまりにも短いので5m上まで無理やり登って終了とする。
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■一般ルート Ⅳ
何度も登っているがなんとなく怖いルート。取付が難しく、ここがⅣのような感じだ。一段登れると両手にガバがある。レイバック気味でよじ登ると階段状の場所に出てホッとする。
トラバースまでの道のりは左右どちらでも行けそうで迷う。右上した。トラバースの段は上段か下段か迷う。上段を使った。トラバースを越えてピッチを切る。ここからは最後の5mのクラックライン。終了点に乗り越すところが核心のⅤ。右半身になり、足とお尻でスメアリング気味に体を上げて上のガバを取る。
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■左ルート Ⅳ
一般ルート取付から5mくらい下がったところにあるクラックから取り付く。レイバック気味に上がってから体を外に出し、両手ガバにぶら下がってよいしょと体を上げる。左側の木に向かって手足がありそうなラインを登り、木の下でピッチを切る。2P目は木の下から一端右に体を出してから左上する。右上は難度が高い。15mくらいで一般ルートの左側に終了点の残置スリングあり。
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<メンバー所感>
■保岡
都心は37度の猛暑、3ルートとも集中していたせいか暑さは気にならなかった。
ルートはほとんどⅣとⅤ、僕らには丁度良く有意義な一日でした。

■田中
充実した3本のトレーニングだった。下りのとき、小天狗で滝行をしている家族がいた。娘の濡れた白装束に心が乱された。修行が必要なのは、そう、わたくしです。

川乗山~武甲山/夜間歩行・ビバーク訓練

通例のカモシカ山行(夜間歩行)では夜通し歩くが、今回は奥多摩から秩父へ抜けるルート上でフォーキャストビバーク(予定の上のビバーク)と組み合わせ、ツェルトでの山中泊とした。

【行動記録】
■6/16(土)降ったり止んだりの小雨
JR青梅線川井駅 11:40集合、12:00発。出発時は曇り空だったが間もなく降り始め、歩道上で雨具を着ける。
赤杭尾根取付(12:30)~ズマド山(13:40、山腹通過)~赤杭山(15:10)~曲ヶ谷北峰(17:30)~川乗山(17:40)~踊平(18:30)~日向沢ノ峰(19:10)~仁田山(20:30)~有間峠(21:00)~林道の間の尾根の1200m小ピーク(21:40)
メンバの疲労度と先の地形から、ここでのビバークを決定。リーダーのツェルトで休憩して体を温めてから各自にツェルト設営した。井上とゲストのツェルト張りはリーダーがバックアップ。
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■6/17(日)降ったり止んだりの小雨
簡単な朝食を摂り、5:40出発。
タタラノ頭(6:15)~橋小屋ノ頭(「有間山(橋小屋の頭)」の山名標がある、6:50)~滝入ノ頭(昭文社地図では滝ノ入頭、7:50)~鳥首峠(8:40)~ウノタワ(9:40)~大持山(10:30)~小持山(11:10)~シラジクボ(11:50)~武甲山(12:30)~一の鳥居(14:20)
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【記録者所感】
◆夜間歩行
先頭を歩かせて貰ったがルートファインディングが難しかった。地図とコンパスで方角を確認するものの道を見つけられないことが度々あった。
特に雨が強くなった後は、疲労と体が冷えたことで体力的にも辛くなり、滑って転んだり集中力が落ちていた。
夜も眠れなかったため、翌日は睡魔に襲われて、歩きながら寝ている時が何度かあった。

◆ビバーク
ツェルトを張るのは初めてであったが、全面的にバックアップしていただき、とてもよく張れたようだ。
軽量化のため、銀マットとGoreTexシュラフカバー+サバイバルヴィヴィを試した。私には寒さが厳しかった。次回はエアーマットを持参したい。

◆読図
目的地の合わせ方が適当でないことがある。スキルがまだ十分ではないと感じた。
道迷いをしそうな場所を地図上で事前にチェックし、現地で注意できるように、と教えて頂いた。心掛けたい。

◆歩き方(下り)
個人的に下りが苦手であり、早く歩けない。指の根本に重心を置くコツを教えていただいた。
加えて丹田と体幹を意識して歩くことを心掛けることで安定した歩行ができた。早くは歩けないが少しずつでも正しい歩き方で体を作り、転ばずに安定してそれなりの速さで歩けるようにと努力したい。

厳しい2日間でしたが、雨の中でのツェルト張りや夜間歩行時に先頭を歩くことの難しさを経験でき、大変勉強になりました。
天候は2日目も降ったり止んだりでスッキリ雨が上がらず秩父の山並みはほとんど見ることができなかったが、霧雨の森はとても幻想的でマイナスイオンたっぷりの非常に気持ちの落ち着く山歩きでした。

【SL追記】
・状況が許せば大持山付近まで前進してビバークする計画だったが、上記の通り、有間峠から少し登った地点で泊。夜が明けてから歩いてみると尾根が細い箇所もあり、たとえ時間があっても未経験者には夜間の前進は難しかったかもしれない。
・橋小屋ノ頭を過ぎて、昭文社地図にあるヤシンタイノ頭(1100m)は気づかずに通過。ルート上のただのコブで、意識せずに道を辿っていると見落としてしまうらしい。
・その代わりでもないが、滝入ノ頭との間に「しょうじくぼの頭」の標識があり、「三十三尋の滝を経て白岩へ」の古い指導標が立っている。地形図にも昭文社地図にも道はなく、廃道の模様。

二子山中央稜/マルチピッチクライミング

今回、チームmeatはマルチピッチクライミングのトレーニングのため、前回の三ツ峠に続き埼玉県小鹿野町の二子山にやってきた。いきなり取付を見過ごして1時間くらいロスしてしまった。多少の渋滞はあったがその後は順調にピッチを重ね、無事終了点に到達した。

***

保岡さん、宇田川さんをピックアップし、東北道、圏央道、関越道を乗り継ぎ、順調に国道299号へ。民宿「登人」の裏の林道を入り、ほどなく駐車スペースに到着。6台くらいのスペースに先行者が3台いた。登山口で登山者数を数えるためのカウンターを押し入山した。10分足らずで股峠に出る。
股峠

進行方向左が東岳、右が西岳。西岳中央稜は一般道の裏側の南面なので峠を乗越して南斜面を回り込む。踏み跡を辿ると「ローソク岩」への案内板があり、北上する。ローソク岩の前に赤いドラム缶があり、それにひかれて西方向に踏み跡を辿ってしまった。これが大間違いで二子山の西の端まで行ってしまい、どの岩にも登らずに頂上を踏みそうになった。終わってしまう。取って返してローソク岩の東側を辿ると、また赤いドラム缶を発見。こちらが正解だった。
ドラム缶

1時間ほどロスして9:30過ぎに取付に到着した。2組が待機中でわれわれもロープをほぐしながら順番を待った。ひとつ前のパーティが東京雲稜会の方たちで入会3年目とのこと。このパーティは4ピッチまで背中が見えていた。

■1ピッチ目(Ⅲ~Ⅳ+)25m
10:30くらいに取付いた。1か所ハングしているところがあり、ここがⅣ+の個所だろう。
1ピッチ目

クラックをホールドし体を外に出して向かって右側の壁を蹴って乗越した。さらに右側にトラバースして終了点にビレイ。2ピッチ目のビレイポイントにペツルが二つ。右側のテラスにペツルが一つ。テラスは5~6名立てるほど広く、前の組に断ってセカンドを上げた。
2ピッチ目確保点
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■2ピッチ目(Ⅴ-)20m
ビレイ点の直上のカンテを回り込んで登る。終了点前で右上して終了点の右側に出ないと終了点直下で行き詰まる。終了点は3名がギリギリの狭さ。3ピッチ目のビレイポイントにペツルが二つ。他に待機場所にペツルが二つあった。
2ピッチ目

■3ピッチ目(Ⅴ)核心部40m
クラック沿いにレイバックでじりじり高度を上げる。上部の屈曲している個所に足がなく、レイバックからのステミングでしびれた。詰めは力ずくでガシガシ上った。
3ピッチ目の終了点は大テラスでここから懸垂で下りることができる。お弁当を食べてくつろいだ。
3ピッチ目

■4ピッチ目(Ⅳ-)25m
向かって右側に回り込み、取り付く。ハングの乗越が核心だがホールドが豊富なので難しくない。
終了点は大テラス並みの広さ。

■5ピッチ目(Ⅲ~Ⅳ-)30m
出だしが難しい。右から左へのトラバースだが上の段はハングしているので支点を取ってから一段下がって移動する。カンテ上を上昇する。終了点は3名ほどの狭さ。
5ピッチ目

■6ピッチ目(Ⅲ)40m
ほぼ歩きです。いちおうビレイした。

■7ピッチ目(Ⅱ~Ⅲ)30m
歩きです。コンテで頂上まで。15:30終了。
7ピッチ目

頂上から股峠に下山するルートは一般コースとは思えないほどの悪路だった。Ⅲくらいのクライムダウンでロープがほしくなった。ボルトがたくさん打ってあり、何かと思ったが岩場の入り口に看板があった。
「みんなが文句を言うから鎖は全部外した。by 鎖管理者」
やりすぎではないかな。

16:00に駐車スペース。途中休憩や関越の渋滞などをはさみながら20:00に亀有。
そのまま反省会に突入し、200円ビールで200円日本酒を痛飲し、意識を失った。

<メンバー所感>
■保岡
折伏なんて難しい漢字使わないように!(踵を痛めていたので亀有の帰りは息子に車で迎えにきてもらいました)
個人的には2ピッチ目の上部でルートを逆にいってしまい皆さんに迷惑をおかけした事が一番の反省点です
自分の上がる方向をトポ等でイメージして一手一手慎重に登っていかなければいけないと痛感いたしました。
余談ですが水分補給時にはカラビナ付きプラティパスは使えると確信しました。

■宇田川
全体的に支点も整備されていて登り易かったが足が決まりにくい箇所が多々あった。
石が濡れている時などは難しくなりそうだなと感じた。
下調べ不足もあり取付き点を逃してしまった。次回からアプローチの下調べはもう少し丁寧に行おうと思う。

■田中
渋滞で待機した以外はスムースに行動できた。3時起きだったので眠かった。水は500mlでは足りない。1Lは必要だった。
保岡さん、宇田川さん、反省会の後に駅前で日蓮上人を崇拝している女性に折伏されました。みなさんは大丈夫でしたか。

三ツ峠/マルチピッチクライミング

今回、チームmeat(チキン抜き)(注)は北アルプス大荒れの猪熊情報を受け、日本海にほど近い白馬から太平洋側の三ツ峠に大転進した。白馬に行った知り合いからは暴風雪の情報が入り、2日間好天だった三ツ峠への転進は大成功。岩場はさほど渋滞もなく、よいトレーニングになった。

■5/4
5:40東武伊勢崎線小菅駅前集合。保岡さんの運転で途中休憩などしながら8:00に「西湖キャンプ場」に到着。GW後半2日目なのでキャンプ場は大混雑。なぜか犬が2匹だけいる巨大なコールマンテントの裏にお犬様より小規模なテントを張らせてもらった。人間はひとり1,000円、車代は無しのキャンプ場なので三ツ峠のときはお勧めです。
9:30に三ツ峠登山口に着いた。1時間弱で三ツ峠山荘、11:00には岩場に取り付いていた。三つ峠全景
三ツ峠全景

2日間で「亀ルート」、「中央カンテ」、「一般ルート」をやる計画とした。しかし、昨日が雨だったので岩場からは水が滴っていてよろしくない。「亀ルート」はびしょびしょだったので第一バンドをトラバースして「中央カンテ」に取り付いた。亀ルート取付2
亀ルート取付 / 中央カンテ2ピッチ目

第一バンドから1ピッチ目は階段状からクラックに入る見た目より難しいルートだった。手足を突っ張りながら体をずり上げる。2ピッチ目は凹角に入らずカンテを使ってフェースを直上すると登りやすい。一度空中に体を出し、ハングを一登りすると第三バンドに出る。中央カンテ終了点
中央カンテ終了点

第三バンドの下降点から50mロープを2本つないで第一バンドまでぎりぎり下りられる。中央カンテ下降1ピッチ目
中央カンテ下降1ピッチ目

登山道までもう一度懸垂下降して、「亀ルート」下まで戻り、登山道から第一バンドの間にトップロープを張り、数本練習をして本日は終了。

西湖畔に「いずみの湯」という浴場があり、800円也。露天風呂やサウナがあり充実している。
テントの横にたまたまベンチとテーブルがあり、湖畔の風に吹かれながらお食事をした。肌寒くなってからテントに潜り込んで2回戦。心にうつりゆくよしなしごとを語り合った。

■5/5
9:00には岩場に取り付いていた。「一般ルート」で第一バンド、「ジャムトースト」で第二バンド、「No.16クラック」で第三バンド、「No.18クラック」で天狗の踊り場。
「一般ルート」は20mの垂壁でホールドとスタンスを慎重に拾った。直上のペツルボルトがゆるゆるだったため、2mくらい先の懸垂用の巨大アンカーからメインロープを伸ばして確保点を作った。
Ⅴ以上は手に余るので第一バンドを右にトラバースしてⅢの「サンドイッチ」を狙った。取付からやたら難しく、途中のクラックもハングしていて必死のステミング。どうも様子がおかしいので確認したところ、このルートはⅤの「ジャムトースト」だったようだ。
その後のルートは支障なく通過して天狗の踊場へ。富士山を囲む周りの風景が絶景だ。懸垂3ピッチで登山道に下りた。

<メンバー所感>
■保岡
全ては高度感に圧倒された!の一言につきます。それにリード時は落ちられないプレッシャーが重なり、冷静な判断ができませんでした。また、下降時のロープの取り扱い、ロープ回収時の注意点、登る以上に下降の注意点が多かった為、次回の課題にしていけたらと思いました。

■宇田川
前回三ツ峠に来たときは雨のためほとんど登れず、今回ほぼ初見であったルートは難しくもあり面白くもあり楽しませて頂いた。全体的に時間が掛かってしまっているので、次の行動を予測しロープの運びを考えるなどスピードアップを図って行きたいと思う。

■田中
ルートファインディングと支点作成に時間がかかった。登り口を見られるようにメインロープで支点を作るところが多かったので手順の練習にはなった。スピードアップが課題。登攀に関してはいまだし。
スタンスの選び方がへたで楽に登れるところを苦労しているように感じる。オブザベをもっと慎重にするべき。
保岡さん、宇田川さん、GWの後楽キャンプみたいで楽しかったです。保岡さん、運転ありがとう。

<注>
チームmeat:本科32~35期でよく山行を共にする4名から成る。チキンに始まり、各人がビーフなどお肉をソウルネーム(?)とする。

白神岳

残雪の一般登山道で白神山地世界遺産登録地域の縁を歩く。4日夜の降雪と5日朝のガスのおかげで思わぬルートファインディングや藪漕ぎが要求され、予想以上に楽しめた。

■5/3(木・祝)
JR五能線白神岳登山口駅に17:42着。無人駅の待合所で身支度し、40分ほど歩いた登山口の駐車場で泊。流しまで備えた立派な休憩所があるが、宿泊は禁止。入口前にも水道があるが、おそらく沢水で飲用には不適。IMG_2426

■5/4(金・祝)
6時に出発。今にも降りだしそうなのでスパッツだけ着ける。
二股分岐を過ぎて緩く登っていくと、標高500mの手前辺りに塩ビパイプの水場あり。やがてバラバラと降ってきて、雨具を着ける。その先、昭文社の山と高原地図に「最後の水場」とあるのは調査者による注意ではなく、現場にそのまま「最後の水場」の札が付いていた。水は先ほどのパイプの方が汲みやすい。蟶(まて)山に向かって高度を上げると、800m近くなってようやく残雪が出てきた。
ひとしきり登って道が大きく曲がる所に白神山地自然観察歩道の指導標。蟶山山頂への分岐はその手前だが、表示もなく少々分かりにくい。山頂(841.5m)には三角点がある。「蟶」はムシ偏なので何かの昆虫かと思ったら、マテガイの意味だそうである。竹簡のように細長い二枚貝が山の名前になるとは奇妙なことだ。樹木とガスで眺望は無いが、霧の中のブナ林も風情があって良し。
雨は止んだので雨具の上を脱ぎ、時折雪を踏んで登っていく。一部で雪に隠れた道を探すことがあったものの、尾根を辿るだけなので迷うことはない。風が出てきたので再び雨具を着け、急登をこなすと十二湖分岐。白神岳山頂へ向かって右(南)に折れ、夏道や、雪で道の隠れた箇所は笹の生え際を行くと立派な三角屋根のトイレがあり、その先に避難小屋が建っている。まだ11時だが、この先にテント適地もないので本日の行動はここまで。
無人の小屋に荷物を入れ、空身で山頂(1232.4m)へ。笹藪の中に開けた地面に三角点標と低いベンチ。ガスで眺望無し。小屋内に「山頂手前の鳥獣保護区標識より5分下れば水場あり」と掲示されていたが、雪に埋もれているのか標識は見当たらなかった。
頂上にいても寒いだけなので小屋に戻る。左右にがっちりした突っかえ棒をかませてあるのはそれだけ雪が重いのだろう。裏側にまわると高い窓の下にハシゴが付いており、積雪時はそちらから入れる。小さな小屋だが内部は3層になっていて、詰め込めば15人程度は寝られそうだ。3層に上がってみると、梁に「避難小屋設置準備会」として会長以下の名前を連ねた板が打ち付けてあり、顧問の一人として「長谷川恒男(東京都登山家)」と記されていた。小屋が建ったのは1986年、氏が亡くなったのは1991年だ。
お茶を飲むためにガスを炊いても、テントと違って暖まらない。寝袋に入って話などしていると、男性がドアを開けて覗きこみ、昼間から籠っている我々に驚いた様子。それまでドアの上の明り取りだけで薄暗いまま気づかなかったが、いつの間にかガスが取れたようだ。
こちらも外に出てあらためて山頂へ。青空の下、東側に山々が連なる。上州の山また山とも氷河地形のアルプスとも違う山容、ピークから四方に伸びる尾根はヒトデが腕を広げるようだ。青い山体に雪の筋を載せた岩木山・津軽富士も美しい。山頂反対側の笹の間にある踏み分けは現在通行禁止の二股コースで、こちらからは日本海に向かって下りていく山の襞が眺められた。小屋の周りを歩き、東側の尾根を目で追うと、向白神岳を経てずっと歩いて行けそうだ。しかし世界遺産登録地域で、おいそれとは立ち入れない。IMG_2481aIMG_2491p

夕方にはまた雲が増えて風が強まり、荒れてきた。早めに就寝したが、外は強風の様子。深夜にはさらに雷鳴、バラバラと叩きつけるのは雨か霰(あられ)か。どちらからともなく目を覚まして「ヤベェ」「大荒れ」と言い交すも、そのまま呑気に寝ていた。テントなら泣きが入ったことだろう。

■5/5(土・祝)
5時過ぎ、ガスで視界のない中を出発。小屋前のベンチに昨夜の霰が3cmほど積もっている。視界不良と言っても一般登山道で数メートル先は見えるので問題はない(と、その時は思った)。
十二湖分岐を過ぎて少し進んだ1200m辺り、踏み跡はないが道に従って斜面を下ったところで雪に完全に埋もれて進路を失った。ガスで周囲の地形は見えず、いくらか道らしく思える箇所に踏み込んで藪に阻まれ、コンパスを合わせて進んだ急斜面が道のはずがないと引き返し・・・ 周囲を探ってようやく足元にプラスチックの赤い杭を発見した。必ずしも道を示すものではないが、方角は正しく、枝が払ってあったりもするので間違いない。それにしても、赤テープが二つ三つ付いていそうな箇所に何もないのは、東北の山に登山者が少ないということか、あるいは世界遺産地域として無闇な人工物を抑制しているのか。
尾根伝いに下りて1122地点を過ぎ、950mの鞍部で風を避けて休憩。ガスは取れて薄日も射すようになってきたが、雲はまだ厚い。
多少のアップダウンで950mピークを通過し、大峰岳への登り。樹林と笹の間に雪の白が続く尾根の右側は雪庇というほどではないが迂闊に近寄るのも危ない。道が見えている箇所もあるが、昨日の霰が載っていて滑りやすい。ならばずっと雪を踏んで行こうと藪際を登っていくと、上部で雪が狭くなって道に戻ろうとしたところで思わぬ藪漕ぎになった。太い笹なのできれいに掻き分けないと強力に抵抗し、踏みつければツルツル滑る。IMG_2517a

8:40に大峰岳(1020m)。ここまで来れば後はもう問題ないだろうと思ったら、崩山(昭文社地図では「くえやま」、『日本山名総覧』では「くずれやま」)手前の900m鞍部でまたルーファン。手前のピークから進行方向が北寄りに変わるのだが、広いところに目印もなく進路変更が不十分だった。道に見えるところを辿って谷に引き込まれかけ修正し、鞍部から次のピークに登れる箇所を探してまたもや藪漕ぎするも前進不能・・・ 文字通り右往左往の末に上まで雪が続く一筋の道を見出し、ピークに抜け出てみると藪の出口に赤テープがあった。
そのピークから直進する尾根を外して左(西)へ向かい、少しだけ登ったベンチで休憩。そこから見える指導標が崩山(940.2m)で、今日初めて人に会った。今回の山行ではアイゼンは出さなかったが、ピッケルは必須。この時期に十二湖ルートで白神岳に登る人が少ないことは身に染みて分かったが、無雪期でもガスに巻かれれば迷いそうな箇所にこの目印の少なさ、通好みの山と言うべきか。
あとは結構な急傾斜を下り、大崩までくると眼下が開けた。森に包まれた十二湖がはっとするほど美しい。森も一色(ひといろ)ではなく、濃い緑にグラデーションのような黄緑、間にはオレンジに近い色が混じり、また、ピンクは桜だろうか。その向こうは日本海だ。白神岳山頂とともに、今回は本当にいいところで眺望に恵まれた。IMG_2540

13時に青池(十二湖の一)傍らの崩山登山口に下山。観光客の間でピッケルを下げた場違いの姿でバス停へ直行し、装備を解いて次のバスに乗った。

<行程>
5/3 白神岳登山口駐車場(泊)
5/4 駐車場6:10~蟶山8:50~十二湖分岐10:40~白神岳避難小屋11:00(泊)
5/5 避難小屋5:10~大峰岳8:40~崩山11:30~崩山登山口13:00~奥十二湖駐車場BS13:10

権現沢左俣/南八ヶ岳・地獄谷

 今回、私たちは権現沢左俣にアルパインアイスクライミングに行って来ました。時間の都合でビバークすることになりましたが、無事下山することが出来ました。


■4/7
 JR長坂駅に集合し、マイカーで美し森観光案内所に向かいます。

01 美し森観光案内駐車場
駐車場は閑散としています。ここから林道を通って出合小屋へ向かいます。林道から権現岳を見ると、前日までの陽気の為か、山肌には雪はほとんど無く、落ちるものは落ちて谷は安定しているように見えます。 03 出合小屋
出合小屋の様子です。僅かに雪が降り始めます。ここに荷物を置いて、権現沢左俣の第一ゴルジュまで偵察に行きます。 04 権現沢左俣第1ゴルジュ
第一ゴルジュの様子です。 ■4/8  早朝、出合小屋を出発します。新雪が2~3cmほど積もっています。雪が降ったり止んだりします。 07 権現沢左俣第1ゴルジュ
第一ゴルジュの様子です。腕時計の高度計は1990mを指し示しています。 09 8m滝
8m滝の様子です。左岸を高巻きます。 10 展望台の滝
展望台の滝の様子です。腕時計の高度計は2105mを指し示しています。 12 三俣
三俣の様子です。ここで気温はマイナス9℃ほどです。 13 左方ルンゼ
三俣の左方ルンゼの様子です。左方ルンゼ大滝は氷がほとんどありません。この左方ルンゼを左に分けて、本谷に進みます。 14 権現沢左俣大滝
権現沢左俣大滝の様子です。腕時計の高度計は2290mを指し示しています。左の滑らかに見える部分を直登します。氷は空洞が多く、強度が無くて脆く、とても困難な状態です。氷の下からは水が流れる音が聞こえます。50mロープをほぼ一杯まで伸ばして立木でビレイポイントを設定します。ここからさらに雪壁を登り、50mロープをほぼ一杯まで伸ばして潅木でビレイポイントを設定します。ここで沢は二俣になり、右俣左岸の適当なルンゼ状から尾根に登ります。尾根を詰めて緩傾斜帯までいくと眼前にバットレスが現れます。 16 権現バットレス
バットレスの様子です。バットレスは左のリッジを直登することになります。緩傾斜帯から北方を見ると尾根を一つ挟んで権現岳東稜が見えます。ここから東稜に向かってトラバースしていきます。 17 バットレス手前のナイフエッジ
バットレス手前のナイフエッジの様子です。雪がありません。ここは右の側面を進みます。ナイフエッジ手前の潅木を始点に2ピッチでバットレス基部に着きます。ここでカメラの電池が切れます。 バットレスの登攀は次の通りです。※ピッチの切り方は一般的ではないと思われます。 1ピッチ目 幹周り70cmほどの立派な針葉樹を始点に、ほぼ水平方向に狭いバンドを数メートルほど左へトラバースしていきます。岩壁の雪を払い除きながら進みますが、残置支点は見当たりません。ホールドも乏しくバンドは雪で隠れているため、とても緊張します。リッジに出ると残置支点があります。ここからリッジを直上していきます。雪を払い除きながらホールドを探して登ります。50mロープをほぼ一杯まで伸ばして潅木でビレイポイントを設定します。このピッチがバットレスの核心部です。 2ピッチ目 5mほど上の広いテラスの立木まで登ります。簡単な岩場です。 3ピッチ目 50mロープをほぼ一杯まで伸ばして潅木でビレイポイントを設定します。このピッチは傾斜の緩い簡単な草付きです。 ここから一般登山道まで尾根を詰めていきます。一般登山道に出ると強い風雪となります。時間の都合で権現小屋周辺でビバークします。 ■4/9  ビバークポイントから権現岳山頂を経由して三つ頭を目指して南下していきます。三つ頭から北へ少し引き返し、川俣尾根を下降して出合小屋のすぐ近くに降り立ちます。出合小屋でデポした荷物を回収し、美し森観光案内所へ向かいます。 【時間の経過】 4/7 長坂駅(11:10)=美し森観光案内所(11:45/12:10)~出合小屋(15:15) 4/8 出合小屋(4:55)~第一ゴルジュ(5:50)~大滝(7:30)~権現岳東稜~ナイフエッジ(13:40)~バットレス~一般登山道(20:30)~権現小屋周辺(20:40)(ビバーク) 4/9 ビバークポイント(9:00)~権現岳~三つ頭(11:00)~川俣尾根~出合小屋(14:20/15:10)~美し森観光案内所(18:40) 【感想】 ■木村  今回は時間の経過が予測と大きく異なってしまい、バットレスの3ピッチ目を登る頃には、ヘッドランプが必要になってしまいました。大滝登攀後にパートナーから撤退要請を受けましたが、まだ時間が早く、残りの行程を考えても問題ないものと思い、ナイフエッジ手前に着いた時には、時間的に十分な余裕があると思ったのですが、結果的にはビバークをすることになってしまいました。バットレスに取り付く時に、撤退を考えましたが、一般登山道に出たほうが安全と判断しました。結論として、大滝を登った後に撤退していたほうが良かったと思います。パートナーには迷惑を掛けました。また、川俣尾根下降時にパートナーが踏み抜きにより左足を痛めてしまい、パートナーには苦労を掛けてしまいました。最近は反省することが多くて、今後山に行くべきかどうか迷うほどです。  今回のルートを登った感想ですが、アイスシーズン終了ぎりぎりで遡行したため、氷の登攀は残念ながら大滝のみとなりましたが、大滝登攀後の詰めの部分がアルパインアイスルートらしい充実した内容だと思います。技術的に困難な場所はあまりありませんでしたが、色々な要素があり、登山者を飽きさせない内容だと思います。幸運にも出合小屋から山頂まで日差しがほとんど無く、気温は常にマイナス9℃ほどで、雪や岩が安定していて、精神的な負担が少なくて済みました。  装備について。大滝登攀では持参したアイススクリュー5本を全て使いました。バットレスでは持参したアルパインクイックドロー6本を全て使いました。持参したロープはハーフロープ50m×2本です。スペクター1本と軟鉄ハーケン2本も持参しましたが、使いませんでした。

アイスクライミングトレーニング/南八ヶ岳 美濃戸口河原奥

 今回、私たちは美濃戸口河原奥でアイスクライミングトレーニングをしてきました。当初は2日間の日程で、2日目に南沢大滝に行く予定でしたが、1日目に疲労困憊するほど登って筋肉痛に苦しんだ為、日帰りに予定を変更しました。


 JR小淵沢駅に集合し、マイカーで八ヶ岳山荘駐車場に向かいます。美濃戸口の河原奥に移動しアイスクライミングの練習を行います。風がほとんど無く、気温はマイナス1℃前後で快適です。


01 右の氷瀑
右の氷瀑でウォーミングアップします。 02 左の氷柱
03 左の氷柱
06 左の氷柱
左の氷柱で遊びます。 氷は硬くて脆く、アックスやアイゼンが刺さりません。刺さった刃は氷から簡単に外れてしまいます。 【感想】 ■木村  今回は氷柱を登るのが楽しくて、アックスが強く握れなくなるまで何度も登りました。氷の状態が良くなかったのも良い経験になったと思います。最上部まで登れたのは最初の数本で、後は何度も落ちながら、持久力のトレーニングの様なことを行いました。トップロープでのICは思い切ったムーブが出来てとても面白いです。また機会があったら行きたいと思います。 ■二見  前日の前線が東に移動して無風快晴の絶好のトレーニング日和。八ヶ岳山荘周辺に雪は無い。11時半過ぎほぼ駐車場は満車、大勢の登山者で賑わう。10分ほどの南沢までの下り坂道で凍った路面にアイゼンを装着、橋を渡り車道からそれて左岸に渡渉する。凍った滝が残っているか心配だったが、一組先客あり。1月に来た時より氷が硬いような感じだ。リーダーが設置してくれたトップロープ、高さ15m右側出だし50度程度で、中間で70-80度。三角バランス、両足平行、腕を伸ばした状態でのキック等を意識しての反復練習。リズムを覚える・・・。アックス、アイゼンを研いだかいもあり(打ち込み角度90)氷から抜ける確率が大幅に改善された。途中から二人組のパーティーが入ってくる。  左側の氷柱のトップロープは絶壁左側からトラバース気味に氷柱真上の立ち木にリーダーがセット。数年前は殆ど登れなかったが一番優しい右側ルートを上まで行くことが出来た。トップロープがセンター左の為、右側からトラバースする時振られ、腰ロープの重心が低く横向き状態になる。(チェストハーネスにロープをかけていると避けられる。)何度も繰り返すうち、腕が段々パンプしてきて、左右のアックス切替中片方のアックスを離してしまい、リーシュにぶら下がるような状態になる。1本アックスで少し登り返し、リーシュを揺さぶることで何とか抜くことが出来た。夕方隣のパーティーも帰り、寒からずの中、貸切状態で頑張る。入場料を払っても良い位の絶好のコンデション。時々こんな日があると厳しい吹雪の時も忘れ、又来たくなる。

北栃木・葛老山

当初は前夜発で会津磐梯山を予定していたものの天候が悪く、3日前に北栃木の葛老山(かつろうさん)に変更。当日の朝、東京方面からは東武鉄道(野岩鉄道・会津鉄道乗り入れ)の特急で向かう。東京は晴れていたが、乗車前に降車予定の川治湯元駅より5駅先の会津高原尾瀬口駅から終点までの区間については大雪のため運休との案内があった。どこから天気が変わるだろうと車窓から見ていると、下今市駅では薄曇り程度でまだ新しく降った雪も見られず、山間に入って鬼怒川温泉駅あたりでやっとうっすら地面に残り始めた程度で、川治湯元駅でも積雪は数センチ程度だった。気温はそれほど低いとも感じられない。雪は僅かにちらつく程度でほとんど降っていなかった。下り列車は川治湯元まで問題なく運行したが、メンバー1名が利用する予定の上りが会津方面の大雪で遅れ、全員集合まで駅前でのんびりと身支度をする。

9:40、駅を出発。駅のすぐ上を通る国道121号へ、ロータリーの駐車場脇から斜面を登ってショートカットする。取付きまで国道を歩く途中、左側の山の斜面が広く切り開かれ、見上げると上方に鉄塔が見えるのを確認。9:55、水準点(568.8m)付近のチェーン着脱スペースの設けられたカーブの内側にある法面の階段下で高度計を合わせ、階段を上ってツボ足のまま尾根に取付く。

登り始めは階段から続く道を辿る。少し歩くと騎馬の石仏がある。10:10頃、最初の大きな岩場が出てくる。岩に赤ペンキで何か書いてあるが読み取りにくい。ここは左側から巻いていく。尾根の様子を見ながら進むが、だんだん尾根から遠ざかっていくので、頃合いを見て尾根に上がるべく斜面を登る。岩と土の斜面に枯葉が積もり、さらにその上に雪が乗っている状態で登りにくい。途中でアイゼンをつけてやっと尾根上に戻った。IMG_2130w

標高750mあたりから一旦痩せ尾根になる。登山道が整備された場所ではないものの、草が枯れているので本格的な藪漕ぎにはならない。しかし、腰丈まである笹が葉を落としても棒状に生えたままとなっていて、まとまっているとそれを押しやって通ろうとするこちらの体を跳ね返すが、へし折るにはきりがない。また、樹木の隙間を通る際に体やザックなどに引っかかる。(この状況が地形図の980.1m小ピークまでずっと続いた) 笹に辟易しつつ、11:05に国道から見上げた鉄塔に着き、先ほどと逆に国道や駅を見下ろす。標高が上がるにつれて積雪が少しづつ増していく。

途中から鹿のトレースが尾根上に合流する。尾根が急になる手前で足跡は逸れていき、鹿はこの先には行かないのかと我々が真面目に尾根をよじ登ると再び鹿トレースが現れるということを何度か繰り返した。岩の混じった尾根を直登したり巻いたりで20分ほど登り、11:20過ぎ、標高820mで平坦な場所に出た。久しぶりの雪山でアイゼンの爪を岩に掛けて登る感覚をすっかり忘れてしまい、だいぶ時間を使ってしまった。雪はさらさらのパウダースノーというわけではなく、心持ち湿気っているように感じる。休憩を取りつつ、この先は傾斜が落ち着くので足元をアイゼンからワカンに変える。

ここからはなだらかで気持ちよく歩けた。尾根は痩せていて、たまに岩もあって足元が慎重にはなるけれど、葉の落ちた木々の隙間から周りの景色を見ることができた。地形図の848m地点のすぐ先にある850m小ピークに設置された反射板の脇を通る。さらにその先、標高900mに上がる少し手前に大岩があり、ここは左側から巻いた。取付きからたびたび出てくる岩はおおかたここまでとなった。IMG_2142


尾根は相変わらずずっと痩せたままであり、鹿のトレースはしっかり小ピークを巻きながらもずっと尾根上を辿っていたので、引き続きラッセル泥棒をすることとなる。12:30、地形図の891mの小ピークに立ち、地図を見てこの真下にトンネルが交差しているんだねぇと足踏みする。朝までに降り積もった雪はだいぶ多くなっていて、ワカンを履いていても脚のすねまである。先頭を交代しながら順調に進み、13:10過ぎに980.1mピークに立ち、二度目の休憩。風が北から少し強く吹いてくるようになった。歩きを再開して少し下ると尾根が広くなる。風に撫でられて雪の表面が締まり、踏みしめる感触が良い。ズボズボと上から穴ぼこを開けるように歩く。
IMG_2144w立派な鹿トレース/尾根を行く

14:00少し前に地形図の972m地点に着く。進路の右前方、ほぼ真北の方向を見ると、今いる場所から少し距離を置いて送電線と、その下の木の切り開かれた白い雪面のラインが、真っ直ぐ向こうの尾根まで通っているのが見える。松本さんが尾根と送電線の交差する場所を示して、2時間後にあそこを通るんだと言う。事前の地図の読み込みではルート上ばかり見ていて、972m地点の真北に送電線が伸びていることに気付かなかった。2時間後をちょっと楽しみにしながらまた歩く。順調に進むが、北寄りの風が冷たく少し雪も混じってくる。日も傾き始めていることに気付き、少し焦る。
IMG_2146下山路を見る

14:20過ぎ、しばらく続いてきた広い尾根から、地図には載らない程度の小さな鞍部に降りて、そこから再び傾斜が増す。距離は短いが意外と斜度があり、また雪も深くて、登ろうとしても足元が崩れて段差を大きくするばかりでなかなか上がれず苦労する。なんとか這い上がって、斜度が緩くなってきてからもう少し進むと、一気に広く開けた。14:45、北東方向にある湯西川温泉駅からの登山道と合流するあたりに着く。思いのほか人が来た跡は全くなく登山道がどこにあるのかさっぱりわからないが、木に取り付けられた小さな標識を確認し、西寄りに進路を変えて山頂へ向かう。風はいつの間にか落ち着いていた。山頂までは広くて傾斜のそれほどない尾根歩きとなるが、まだ少し距離があり、地味に体力を奪い続ける。先頭交代しながら最後のひと踏ん張りをして、15:05に東屋の先に設置された山頂標識に到着。疲れているが皆明るい。IMG_2150w

予定より遅くなっているので、10分足らずの休憩で下山を始める。15:27、歩いてきたトレースから湯西川温泉駅に向けて北東に分かれる。踏み跡はないが、なんとなく雪面がへこんで続いているところがおそらく登山道だろうと見当をつけて、ここからは細かく地図とコンパスを見ながら進む。積もっている雪は見た目ではどこから変化するのか判らないが、北側斜面に入ったとたんに、すっと粒が小さい乾燥した雪に変わった。標高1050mあたりは乗りたい尾根の左の谷筋から、登山道と思しきへこみを辿って少し迂回し、あとは尾根の上をあまり外さないように意識しながら、へこみ部分を辿ったり、つづら折りで折り返してくる次のへこみまで真っ直ぐショートカットしたりして、尾根をぐいぐい下降する。途中、恵比寿様や大黒様の木彫りが置かれていた。標高980m辺りで進路を北寄りに変える。へこみは、歩けばすぐ下が硬くなっているので歩きやすいが、たまに突然太腿まではまるので結局歩きにくい。尾根を辿りたいのもあって、標高920mまでほとんど斜面をショートカットで降り、その後は完全にへこみを無視して忠実に尾根を歩く。

16:10過ぎ、再び鉄塔が出てきた。進行方向の右手となる南側を見ると送電線が真っ直ぐ延びた先に尾根があり、2時間前にあのあたりから今いる場所を見ていたのだと確認する。そこから少し下り、標高790mの尾根分岐がはっきりしてくる辺りで、どの尾根を行くか少し迷う。樹林が杉の植林となっているため少し暗くて見通しにくいが、道の駅の建物の西側を目指したいので、このまま真っ直ぐ続く尾根ではなく、その左の尾根だと確認して進路を改める。下りていくと標高770mあたりからはっきりした登山道が出てきた。登山道を辿りながら湯西川温泉駅16:30発の電車が鉄橋を渡る音を聞く。16:40、目指した道の駅の駐車場に下山。湯気の立っている足湯を横目に急いで装備を解いて閉店前の道の駅で買い物し、次の列車で帰途に就いた。

<行程>
川治湯元駅9:40~R121水準点568.8(尾根取付き)9:55~尾根上848m地点11:40~980.1m三角点13:20~葛老山15:10~湯西川温泉駅16:40

八ヶ岳・小同心クラックから横岳

今回、我々チームmeatは小同心クラックから横岳を登頂した。曇天で強風。寒くて仕方なかった。手先も足先も痺れてアイゼンで岩に乗る、手袋で岩を掴む感覚が心もとない。ルートも岩角を左に行くか右に行くかで難易度が全く変わるなどルートファインディングが難しく、ガイド本に比べると現場ははるかに厳しかった。手も足も心もとなかったが3名が3時間で岩場を抜けられたので上出来。横岳直登で行き詰まったがチームワークで乗り切れたことも上出来。岩稜から顔を出すとすぐそこが山頂であった。三人で固い握手を交わした。

■2/24(土)
アイスキャンディーを見るとホッとする。赤岳鉱泉は帰ってきた感があり故郷のようだ。水もトイレも心配ないさ~(ハナクマタタ)と歌が出るくらいの安心感。宇田川さんは「(水つくりの)仕事がないですね(笑)」と言っていた。まさにその通りで、テントを張ってすぐに偵察に出かけた。
今回は小同心クラック。まずはアプローチの確認だ。大同心稜に乗るところまで確認したい。赤岳鉱泉が2200mくらいなので200m登って2400mくらいまでか。
硫黄岳方面に続くトレースを200mほど行くと「大同心沢」の標識がある。トレースを遡行すると300mくらいで左右に分かれていた。左が尾根への登り、右が沢ルート。ガイド本やHPの情報では沢を遡って右の尾根に取り付くとなっていたので、迷わず沢ルートへ。しかし、少し歩くと徐々に地図より南にずれて小同心方面に向かう様子。これは間違いで小同心沢ではないか。分岐までリターンして尾根方向を偵察した。いきなり急登でハードになる。こちらが当りだった。
小同心遠景小同心遠景

テントに戻って明日の手順を確認後、心おきなく宴会の夜が更けていく。

■2/25(日)
天候は曇り。まずは大同心基部までのアプローチ。昨日の偵察行でルートは大丈夫だ。大同心稜は2300mから2500mまでが急登、2500mで森林限界を超え、岩稜帯になる。南に赤岳と阿弥陀岳が見え、2650m付近が大同心基部だ。岩稜帯は両手を使わないと登れないくらいの角度。
大同心基部で装備を着けていると後続パーティが見えた。男性4名がショートロープでアンザイレンしている。ガイド山行くさい。先行されると待ち時間が長くなるので加速スイッチを入れたが、保岡さんは「お先にどうぞ」などと悠長なことを言っておる。優しすぎるだろー!と思ったが、ガイドさんと会話したところ先方は大同心沢を登って上に抜けるとのこと。急に笑顔になり、お互いの無事を祈った。
こちらは大同心基部から2650m付近をトラバースして小同心基部に取り付く。途中、西側が切れ落ちているバンドが長く、慎重に歩を進めた。
トラバース

小同心基部には2名パーティがいてビレイ中であった。こちらはロープをほぐして準備をする。
取付き取付き

今回は1ピッチ目終了点に3人立つ広さが無さそうなことと軽量化のため、保岡A、宇田川B、田中Cとして、シングルロープ1(A-B)、ハーフロープ1(A-C)で組んだ。1PをAがリード、Bがフォローし、2PをBがつるべ、2P到着後、Cが1Pへ、その後にA、Cが続いて2Pへ。三人が2P終了点に集まった後、A、B、Cの順で3Pへ。以下、フォローから見た記録である(リードの記録は各自の所感にて)。
1Pは小同心基部右端の階段状からフェースに取付き、凹角を左上、チムニーに入る。雪付きは全くなく、ドライな状態。岩面にアイゼンのひっかき傷が付いていて足場は明確だ。ホールドはガバガバで不自由しなかった。ステミングやドロップニ―で少しずつ高度を上げてホールドを掴んでいく。チムニー内がハングしていき、徐々に体が外に出ていくので、手足は豊富だがアイゼンのグリップがいきなり外れる恐怖があり、緊張する。
1P終了点では保岡さんが凍えており、ロープを受け取って素早く上がってもらいたかったが、2P終了点の宇田川さんがロープアップに手間取っていた。後で聞いたところ、ルートが屈曲していてロープが上がってきずらかった模様。準備できたところで保岡さんがするすると登っていき、田中が続いた。
2Pは1Pよりハードで股が避けるくらいステミングして、また、途中左右の壁に体重を移しつつ、心が折れそうになりながら登った。フォローでこれだけ怖かったのだからリードした二人はさぞかし大変だったろう。
3Pは取り立てて問題なかった。
小同心の頭からリッジ、岩屋を抜けて横岳の直下に出る。一般道へのトラバースルートも偵察したが、トレースがなくラッセルになりそうだったので直登を選択。フリーで行けそうだったが途中で行き詰ってしまい、急遽ロープを出した。
あと30mくらいの感覚で岩稜を乘越すと、すぐそこが頂上だった。頂上に直接突き上げる経験がなかったので詰めがない分得した気になる。横岳山頂では赤岳方面から来た男女ペアと写真を取り合い、硫黄岳経由でテン場に帰還した。
山頂

<メンバー所感>
■田中
強風で寒かった印象。全体的に計画通りだったが、精神的には敗北感が漂っている。自分はまだまだです。

■保岡
1ピッチ目をリードして感じたのは思った以上に難しいということ。
専門誌やネットの記述では1ピッチ目は階段状の岩場と強調されているが、ピッチ後半は壁が急になり絶対に落ちられない!というプレッシャーと疲労で心が折れかけました。取付までにどれだけ体力を蓄えられるかポイントだと思いました。今度は夏場に挑んでみたいです。

■宇田川
2ピッチ目をリードした。1ピッチ目終了点より左側カンテ状箇所に取り付き右上しながらチムニーへと入ったところ、ロープの流れが悪くなり難儀した。確認はできなかったが、最初からチムニーのルートで登るか、もしくはカンテ部分でもう少しロープの流れに注意すれば良かったように思える。
2ピッチ目終了点は岩壁を登らず右肩のピナクルで取った。岩壁下にも終了点があり、そこでもピッチが切れるようだった。
ロープを出す山行ではまだまだ反省点も多く、今回もロープの流れや声の届かない所での意思疎通に問題があった。まだまだ経験不足を感じることが多いが、精進していけたらと思う。

<行程>
2/25 赤岳鉱泉テン場5:45~大同心基部7:20-7:30~小同心基部8:00-8:30~小同心の頭11:27-11:40~横岳山頂12:30-12:50~テン場15:08

雪なか泊/上越 三国峠から大源太山(河内沢の頭)

今回の基本ステップは雪なか泊です。
三国峠周辺で雪洞を作り、翌日は大源太山(河内沢の頭)を目指します。

■3/3(土)
8:20、JR越後湯沢駅集合(小堀は自家用車)。新幹線改札から出てくるのはボーダー、外国人その他..登山客は我々くらい。駅真下に駐車場あり、2時間までは無料です。小堀車で移動。
三国峠登山口駐車場は工事中で閉鎖のため、三国トンネル群馬側に駐車。駐車スペースには山スキーヤー二人組と女性ソロがいらっしゃいました。
準備を整え三国峠へ向かいます。
トンネルの脇から谷沿いの道に入り、10分登ったところでワカン装着。地形図を見ながらルートファインディングし、夏道からは西側に進路をとり鉄塔に沿って登っていきます。
三国峠の神社を見下ろす尾根上で雪洞適地を探します。神社南側鉄塔脇に雪庇のように積もった場所を発見。ゾンデで探り3m以上ありそうなのでここでとりあえず掘ることにしました。
横穴を掘り進めるも1mほどのところで枝が出てきたため半雪洞に方針変更。
14時、半雪洞完成。幅3m、奥行1mほどでしょうか、前面にブルーシートをかけました。4人寝るには十分な広さです。脇と前に雪ブロックで風よけを作り、立派なトイレも制作しました。
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夕食は皆で具材を持ち寄り鍋・おでん?を作りました。ごはんはアルファ米です。翌朝食分のアルファ米に水を入れ準備時間の短縮をはかります。また雪から水を作って準備万端。そのあとは酒も飲まずに今後の山岳会について熱い議論を交わしました(笑)
就寝zzzzz
寒いです。とても寒いです。たびたび目が覚めます。

■3/4(日)
5時起床、朝食。前日準備したアルファ米に、温めた昨夜の残った鍋をかけていただきます。
今日は三国峠から三国山、大源太山を目指します。雲一つない快晴です。
7時出発。いきなりの急登のためアイゼン装着します。しかし天気の良さに快調に進みます。
8:20 三国山登頂。記念撮影などしてしばし休憩。大源太山、平標山などが一望できます。
ここからはワカンに履き替えます。地味にアップダウンが続き体力が消耗します。また途中クラックなどが出てきます。慎重に巻いたり渡ったりして進みます。
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11時、大源太山登頂。記念撮影などしてしばし休憩。結構バテバテです。まずい戻れるだろうか・・・
天気が良すぎて汗だくです。紫外線も強く皆真っ赤です。帰りも地味なアップダウンで体力を奪われます。
三国山からの下りでズボッと踏み抜きました。ワカンで埋まるとびくともしません。ピッケルではなかなか掘り出せず「すみませ~~ん助けてください」。スコップを携行していた小林さんに掘り出していただきました。
三国峠の雪洞まで戻った時には「こちらがメイン?」と思えるくらいハードな内容でした。
(沿面距離8.2km/累積高度890m/行動6:30)
雪洞からの下りは早く、車に戻って上毛高原駅へ移動。駐車場で解散し、小堀は車で、他3人は16:13の新幹線で帰路に着きました。

<行程>
3/3 三国トンネル群馬側9:30~三国峠10:50~雪洞造営14:00
3/4 三国峠7:00~三国山8:20~大源太山11:00~三国峠13:30~三国トンネル群馬側14:30